最終章邪馬国編シーン21
俺達は改めて四聖獣の話を聞いていた。
「そして最近……四聖獣の話が『足柄山』という地でも聞こえてきたのじゃ。」
そう告げた老天狗。
「足柄山!?なんかどこかで聞いたような名前だな。」
「クロノ……足柄山といえばあの金太郎のお話の舞台でしょ?」
「おお!!そうか……なるほど……それで聞いた事があったんだな。」
「そうそう…それでね………」
「足柄山か……確かに最近そこで野盗が獣人達を襲うという話も聞こえてきていたな。」
そう言いながら現れたのは天狗の女子である天だった。
老天狗は天の姿に目を向けうるうるしている。
だが天はトコトコとこちらにやってくると俺の膝に上に座ってくる。
そして目の前の茶菓子を食べ始める。
めちゃめちゃガッカリした老天狗。
だが…天の行動に感情を変えたのは老天狗だけではなかった。
ムッとした表情のサキノはわざわざ隣に来て座り俺に茶菓子をアーンっと食べさせてくる。
「んぐ……サキノ……ちょっ!!」
「はい♡あーんっ♡………いいから食べて!!」
「はっ!サキノ!!……んぐっ……ううっ。」
俺が会話不能となるのをみてカルマは代わりに天に問いかける。
「ふぅ…まったく…何してるんだか……ところであまたちゃん……足柄山で起きてる何か…知っているの!?」
「んぐっ……うん……知っておるぞ……」
「出来れば何が起きているのか教えて欲しいんだけど……食べたらでいいから教えて。」
カルマが優しくそう言うと、あまたはお茶をすすり飲み込むと……ゆっくりと話し始めたんだ……。
◇
足柄山とはな……一昔前までは、この邪馬国の獣人達の楽園と呼ばれておったのじゃ……。
自然豊かなその国には沢山の植物が生え揃い……それを食料にする虫達、そしてその虫を食べる小動物…その小動物を捕える大型の動物…… そして獣人と人間達。
その生態系は保たれ理想とされるであろう時が流れていた。
その僅かな山の中に人間達の中から統治する動きがあったのだ。
自然豊かな国を守りながらも人間達も穏やかな暮らしを過ごしていた……そんな時…統治していた長……まあ王とも呼べる人物に一人の男子が誕生したのだ。
男子は『金龍』と名付けられ…強く丈夫に、すくすくと育ち…いつしかこの国では敵なしとなったという……。
金龍には生まれた時から不思議な力が宿っていたと言われておってな……その力を扱えるようになってからは完全に負け無しとなったらしいのじゃ。
そんな金龍はより強者を求め……求め続けたのじゃ……人間では物足りず比較的強い種族ではある獣人達に狙いを定めたのじゃ。
はるか昔は獣人達もその力を誇示した歴史もあったらしいが今では獣人とて普通の人間とさほど変わらぬ…秀でた能力があるとはいえそれを誇示し支配しようなど思う獣人など今ではおらぬのだ。
ところが強者との戦いを望む金龍はその獣人達と腕試しがしたくてたまらない…そんな欲望の元……『魔族の獣人狩り』と称し金龍は強さに名がある獣人達を手にかけて行ったのじゃ。
◇
話を聞いていた俺は…サキノを抱き寄せる。
「クロ………ノ…………ありがとう……。」
サキノは強い目を俺に向けている。
「話……聞こうよ……クロノ。」
「ああ……わかった。」
俺達を察したのか天は言葉を止めていたが……再び語りだす。
◇
獣人狩りを行なっていった金龍。
この国の平和な暮らしをしていた獣人達は今やひっそりと暮らす生き残りの僅かとなっているのじゃ。
だがな…ワシはその金龍にもあの魔王の力……そして不思議な事に四聖獣の力も感じておるのじゃ。
「なっ!?四聖獣っていうのは魔王側の傘下に入っているのか!?」
「いやいやまて…そう早まるのではない……四聖獣とは四体存在しているのじゃ……その一人が魔王に加担したかも知れぬ……と、そういう話なのじゃ。」
「そうなのか……なら他の三人を探して仲間になってもらえば俺達の魔王攻略の力にもなってもらえるって事だな。」
「まあ……そういう事じゃな。」
そういった天は亀山を見ていた。
「そういや……」
俺は話を続けようとすると。
「いやあああーーーーーーーーーーーーーっ!?」
突然この部屋に飛び込んでくる叫び声。
「どうしたんじゃ!?何があった!?」
天の声に『黒磁』がこの部屋へと入ってくる。
「お嬢様!?不審な動きをしていたこやつを捕らえてきたのですが………」
黒磁はそういうと俺達の前に突き出され転ぶその姿。
「ん!?兎…………の獣人……なのか!?…」
天は黒磁に手を差し出し、それ以上の束縛する行為を止める。
すると安心したように兎の獣人は口を開いたんだ。
「そうだよ……僕は兎の獣人です…足柄山から逃げてきて狸の城に捕まったんだけど僕の仲間達が僕の事を逃がしてくれて今ここにいるんだけどさ。」
「そうか……お前の名はなんじゃ?」
天の声に兎の獣人は真剣な表情へと変わる。
『あの!天狗様っ!!僕は『誕兎』ですっ!!』
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