最終章邪馬国編シーン20
今…私達はようやく邪馬国へと辿り着いたの。
「鉄星様……もうすぐ着きそうですね…。」
「ああ…リオ……我々のいたチェンウォンからも船でもこんなにかかるとはな。」
「はい……でも仕方ありませんよ?今の海は魔王によって安全なものではなくなってしまって…特に私達の目的地の『邪馬国』は…………。」
私がそう言うと目の前には小さな島国である『邪馬国』の先端が見えてきた。
そういった理由で私達はようやくここ『邪馬国』に辿り着いたの。
◇
◇
◇
「ここが邪馬国……なんですね?」
「ああ……そして、あの復活した魔王が何処かに存在していると噂される…きっとこの世界で一番恐ろしい場所へと変わっているはずだ。」
「そうなんですね。」
私はここに着いてからドキドキが止まらなかった。
きっと何かを心の内で感じ取っているのかも知れない。
そう思っていた…すると。
ポンっと肩に手を添えてくれる鉄星様。
「リオ……ワシが必ずお前を守っていてやる。」
「はいっ!!」
微笑みあう私達。
そして私達はその足で先を目指す事にしたの。
◇
◇
◇
私達が港町を出ようとしたその時。
一人の少年を見かけたの。
「鉄星様……あれは。」
「ああ……」
私は駆け寄り声をかけてみる。
「どうしたの!?」
少年は私の声に気が付きこちらを見る。
年齢は、まだ十歳にも満たないくらいの少年。
そしてその頭には特徴的な何かがあった。
鉄星様は口を開く。
「鬼……の子………なのか?」
「えっ!?鬼?」
するとハッと手にしていた帽子を咄嗟に被る少年。
少年の前に屈むとにこりと笑顔を見せた鉄星様は口を開く。
「少年……俺達は君に危害を加えるつもりはない……良かったら何があったのかを話してはくれないか?」
鉄星様のその言葉に少年は語り始めたの。
◇
僕が暮らしていた鬼ヶ島。
僕はそこで両親……そして沢山の仲間達と仲良く暮らしていたんだ。
人間とは異形な僕達は交わるのもトラブルになりかねないとひっそりとその島で暮らしていた。
そんな平和なある日…突然アイツらがやってきたんだ。
◇
アイツらとは四人の凶悪な奴らだった。
リーダーの名は『桃太郎』。
奴らはこの島に着くやいなや、突然暴れ始めた。
僕達鬼だって平和に暮らしていたものの…人間とは違う戦闘向きの力を持ってして防戦したんだ。
ところが奴らの力はあの魔王の力をも手にしていた。
それにより僕達の強力な仲間達も次々と倒されていったんだ。
そして僕達の平和な暮らしは奪われてしまった。
男達はほとんどが殺されて…女性達は奴らの下僕に…そして残された僅かな子供達の中……偶然気絶していたところ……奇跡的に高波が僕を攫い気がつくと僕は海に落ちていたんだ……もうダメだと諦めて、また波に流されて…いるうちにこの街の海岸に流れ着いていたんだ。
だけど……僕がこの頭の角がある以上……街を歩く度……騒がれ……毛嫌いされ……僕は空腹になりふらふら歩いていた。
そんな時……僕を一人のおじいさんが助けてくれたんだ。
おじいさんはこんな角を生やした鬼を匿ってくれたんだ。
だけど……桃太郎は鬼の根絶やしに手を広げていた。
色々な街で『鬼狩り』をするようになった。
比較的僕達と交流をしてくれていた獣人達の街で暮らしていた鬼達にも目をつけた桃太郎達は吊し上げ殺めるという蛮行に及ぶようになって。
そして、桃太郎達は、この街でも『鬼狩り』を始めた。
僕の噂も迷うこと無くこの街に流れ……そしてある時…僕らの家にも『鬼狩り』はやってきた。
僕は突然入ってきた男達に驚き固まっていた。
「この子はワシの大事な孫じゃ!!アンタらとっとと帰ってくれ!!」
おじいさんは僕を庇い男達の前に立っていた。
「ククク……我らが桃太郎様は『鬼』を根絶やしにせよと言うておる…その後ろに庇うガキは『鬼』なのだろう?」
「そんな訳はないだろう!!ワシの大事な孫じゃ!!」
叫ぶおじいさん。
「とっとと………しね……」
一人の男は刃を上げていく。
そして。
ズバあああーーーーーーーーーっと僕を庇い切り裂かれたおじいさん。
「おじいさーーーーーーーーーーーんっ!?」
僕は…泣き叫んだんだ。
◇
それから。
僕はあまり覚えてない。
気がつくと僕は逃げ惑い……こうして一人になっていたんだ。
街の人の話す声を偶然耳にしたのは。
おじいさん……そして取り押さえにきていた『鬼狩り』のメンバーも血の海に倒れていた事件が起こったとの話だった。
◇
「おじさん……お姉さん……僕を、僕を怖がらないのなら………僕を一緒に連れていってください!!!」
泣きじゃくり……そう大声を上げた彼。
「ああ……わかった…いいよな?リオ。」
「はい!もちろん!!」
私達は鬼の子を一緒に連れていく事にしたの。
「あなた……名前は?」
私が問いかける。
すると少年は照れたように言葉にする。
「お、お母さん……僕に名前をつけて欲しいな。」
「えっ!?お母さん!?」
「あはは!リオ!そんな風に見られたのか!?」
「もう!笑い事じゃないんですってば!!……でも名前かあ……そうね……じゃあ『鉄鬼丸』なんてどう?」
「リオ!それはワシの名も入っているではないか!?」
私は仕返しの意味も込めてそう浮かんだ名を言っていたの。
すると。
「うん!うん!カッコイイ!お父さんの名前からもらった名前かあ!!」
「お……俺がお父さん……だと!?」
照れる鉄星様。
私も顔が熱くなる。
すると…私達の手をとってくる『鉄鬼丸』君。
その笑顔は輝いていた。
私の左手…そして鉄星様の右手に繋がれた鉄鬼丸君の小さな手。
満面の笑みで歩き出そうとしている鉄鬼丸君。
こんな笑顔を見ていたら私は。
「一緒にいこうね!鉄鬼丸君。」
「うんっ!!」
◇
こうして私達は三人で歩き出したんだ。




