最終章邪馬国編シーン13
俺達の前に落ちてきたのは、何処かで見た事のあろうあの……『天狗』だった。
「いててぇ…………」
その天狗は可愛らしい顔だけど衣装など見た目が女子そのもの。
腰を抑えて痛がっているその姿。
俺達は一斉にその声をあげる。
「「って!?誰えええーーーーーーー!?」」
◇
◇
◇
俺達は叫んでいた。
このライブ会場に降ってきたこの妖怪?……天狗は腰をおさえながら口を開く。
「ふぅ……やれやれ……私の妖力を弾いたさっきの曲はなんじゃ?」
「って…あなたは…まさか……」
亀山は驚きの声をあげる。
「あの天空の里に棲むって言われる『天狗』様ですか?」
「そうじゃが……なんじゃ貴様らよく見たら地上の民共ではないか?」
「そ…そうですが……天空の里と呼ばれる所に棲み地上で起こる様々な事に時折降りてきては干渉してくると言われ…善なる者なのか悪なる者なのか、その存在も苛まれる存在…そんなあなた様がどうしてここへ?」
亀山は天狗に向かい、そう問いかける。
「茶じゃ……。」
「えっ?」
「茶と茶菓子……が欲しいのぉ。」
◇
天狗は茶をすすり……茶菓子を一口。
「うーーーーーーーん!うんまいのぉぉぉ。」
先程とは打って変わって、にっこりと笑顔で茶菓子を頬張る天狗。
すると天狗は差し出されたお茶を一口飲むと喜びの声をあげる。
「うーーーーーーーん……うまいうまい……やはり地上には美味いものが沢山あるのお。」
満面の笑みの天狗。
すると、そんな彼女に音姫が声をかける。
「あはは……ありがとうございます…それで先程の話なのですが…私の曲の影響で落ちてきたと仰られていましたけど、実は私の歌には妖力を跳ね返す力が備わっているらしく……これまでも時折ライブと称して破邪の祭りごとを開催してきたのです……そして今回は救ってくださった皆様の為にライブを催したのですが…まさか天狗様の妖力を遮ってしまってたなんて……大変失礼いたしました ……それで…気まぐれとも言われる天狗様は今回、地上へは、どの様な御用でお越しいただいたのでしょうか?」
「うーーーーーーーん…美味い美味い……ちょっと待っておれ……あと少し食ったら話してやるわい……!!……んぐんぐ……うっ……!!!???」
突然真っ赤な顔になる天狗。
「天狗様っ!?」
「大丈夫ですか天狗様!?」
音姫の友人のタイとヒーラが天狗様を救おうと焦る。
「ふぅ…おいおい…がっつき過ぎだろ?」
焦り顔の天狗。
俺はポンっと彼女の背中を叩く。
すると…天狗は苦しそうに……喉に詰まらせた物を一気に飲み込む。
「んぐんがっ!!………はあっはあっ………ふぅ………バカもん!!急に人の背中を叩くでない!!……危うく天に召されかけたぞ…。」
俺は改めて天狗に問いかける。
「天狗様はそんな軟弱じゃねえだろ?……で!?どんな理由でその天狗様は地上へきたんだ?」
「おお!!そうじゃったそうじゃった……危うくこの話が完結するとこじゃったわい。」
「おいおい……で!?」
俺の声に天狗はじっと見つめてくる。
「河童………じゃ。」
「は!?」
「河童……とは………ワシら天狗は天空に棲む存在…そして河童とは…その存在は太古からこの地の水源に根ずいた存在じゃ。」
すると天狗は語り始める。
◇
◇
◇
ワシらと河童達はそんな関係から常にお互いの存在は大切なものだった。
ワシらは精霊の様なものでな…その力は自然に語りかけるもの……ワシら天狗は里へ爽やかな風を……河童達は清らかな水を里に届けるもの。
そんな穏やかな暮らしをしながら人間達と共存していた。
そんな時。
あの……魔王がどこからともなくやって来たのじゃ……そしてこの地…邪馬国をも魔族の物へと変えていった…魔族程の力のない我々は…かつてからこの地の守護神と称されていた竜族を頼る事にした……だが…魔王は絶大な力を携えていた。
そんな魔王は激しい戦いの末…竜族をも滅ぼしてしまったのだ。
残った竜族の防壁にて……ワシらは生命からがら逃げる事ができ……そして今までこうして、ひっそりと暮らしてきたのだ。
そんな時。
何処かに現れた勇者によって魔王は打ち倒されたと聞いた。
ワシらも河童達も安堵した。
そして数百年…平和な時が流れた。
ところが、突然…里に、とある異変が起こった…それまで清らかだった水が黒い水へと変えられてしまったのだ。
そんな黒い水によっていち早く察した河童達は避難の声をあげようとした時には、すでに時遅し……河童達は病に倒れ…死に絶える者……狂乱し怪物へと姿を変えた者達。
いつしか河童達の中にはまともな奴が居なくなってしまったのだ。
後で知ったのじゃが…魔王は恐ろしい力を得て復活し…その影響で自然が侵されてしまった。
河童達はワシらの同胞なる存在。
◇
そう話した天狗は涙を流し俺達を見ていた。
天狗はその幼い容姿だが…そんな心の内を話した彼女を俺は……やはり、ほおってはおけないらしい。
「ワシらも……また……水は…生活の一部……ワシらの里の者達も水に徐々に侵されてきておる……今ではワシと数名くらいしか健康な者は残されていない……河童の中にはな……ワシの友もいたのじゃ……その子は完全な魔物と化し……近隣の人間の村々をも襲い…狂って最後には涙を流し…死んでしまった……ワシらは河童達を救ってやりたいんじゃ……どうか……どうかワシらに力を貸してほしいのじゃ。」
「天狗…………。」
俺は彼女の前に立つ。
グスッグスッと泣きじゃくる天狗。
俺は彼女の涙を拭う。
「はひっ?」
「お前の名前なんてんだ?」
「グスッ……グスッ……ワシの名前は………………」
『『天』じゃ…………。』
「そうか……なら『天』……俺がお前のその涙を止めてやるよ。」
「グスッ……うえええええーーーーーーーーん」
俺は彼女を優しく抱きしめたんだ。
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