最終章邪馬国編シーン9
突然グラりと亀山の巨大な身体が傾いていく。
背に乗っていた俺達の身体もあわせて落とされそうな状態だ。
「うわっ!?ヤバい!!」
「皆!!??海に落ちないように何とか僕に捕まって!!??」
亀山の叫び声。
すると浦牙島の声が再び聞こえる。
『はっはっは!!おもしれえなあ…この海はな…魔王ゼルドリス様の復活により既に魔界の海域と変えられている海だ…海中には魔界の魚共がうじゃうじゃいる…落ちたら最後一瞬で肉も残らないぞ……くっくっく。』
「クロノ!?」
「クロノ君!?」
皆の俺の名を呼ぶ声。
誰もがこの絶対絶命のピンチに狂乱するであろう。
落ちたら最後のこの海に……。
今俺は皆の為に何ができるんだ!?
ラブラ……………。
その時。
海に落ちゆく俺の身体に異変が起きる。
『クロノ…クロノ………。』
『ラブラか!?』
『貴方は私と一つになった…』
『確かにそうだな……でも飛ぶ事は可能となったけど身体は強そうになってはないぜ?』
『そうね…確かに身体的変化しか今はあまり感じられないかも知れない…まずは自分を信じる事…そして…皆を救いたいと!!強く願ってみて。』
『ラブラ……ああ……分かった。』
俺は再び目を閉じる。
俺の感覚が研ぎ澄まされ皆を感じる。
その下には荒々しい海が…そして海の中から俺達を餌と認識し狙う魔界の魚共の存在を感じた。
『まずは…海中にいる魔界の魚共か。』
俺の体内から燃え上がってくる炎。
次の瞬間…俺の背に燃え上がる大きな翼の存在を感じる。
『これは……。』
バサッと翼を広げると呼応したかのように溢れ盛れた炎の残骸が次々と海上に顔を出した魚共を焼き付くしていく。
轟々と燃え上がる炎。
そして背後に感じたのは雷武の影。
『ククク……クロノ……おもしれえな…お前は……さあ…俺様にもっと力を分け与えろ。』
次の瞬間。
雷武は燃え上がり爆炎を纏ったドラゴンと化す。
『さあ……焼き魚にしてやる!!『竜炎炎』』
雷武の口からゴオーーーーーーーーーーーッと吹き出す炎。
海上はまさに火の海と化す。
次々に燃え上がり消えてゆく…魔界の魚達。
「す、凄い………あんな魔神をクロノちゃんは。」
亀山も驚きの声が隠せなかった。
その時。
「きゃーーーーーーーーーーーっ!?」
「テンテンちゃん!?」
サキノとテンテンが落ちながらも真下には魔界のサメが口を広げている。
「二人とも!?」
「クロノ!?私達だって大丈夫だよ!?」
俺の声にそう返すサキノ。
俺は。
『ヒーローズブラッド。』
突然脳裏に浮かぶこのワード。
俺は願う。
この危機を脱する力を。
すると。
俺の身体は落ちるのを停止させる。
『あれっ!?これは!?』
次の瞬間。
仲間達の身体にも異変が起こる。
「えっ!?何これ?」
「サキノ!!私達も浮いてるんだけど!?」
「クロノーーーーーーーーっ!?これって!?」
カルマの声も聞こえると俺の仲間達全員の身体がふわふわと宙に浮かんでいたんだ。
『空間支配』
そう聞こえてきたのはラブラの声だった。
「空間支配……この俺が願った事で俺のスキルがこの空間を支配して重力を操作したって事なのか!?」
『ご名答!!かつて魔王との戦いはもちろん私一人だけでは勝てなかった…今のクロノにとっても魔王との戦いには仲間達の力も必ず必要になる……そんな大切な仲間達を守る力も君には必要なんだよ!それが勇者には必要なスキルなんだ。』
『そうか……なら。』
俺は構えると翼を広げる。
そして……空間に干渉していく俺の意識。
ここから俺達はあの場所へ向かうんだ。
仲間達の全ては今俺の意識下にある。
そして。
『転地…………………。』
シュンッと俺達の姿は一瞬で、存在した場所から消える。
と、共に仲間達もだ。
「あれっ!?」
「ここは……あ!島に着いてる!?」
「クロノさん!?」
「クロノーーーーーっ!?」
テンテンとサキノがまずは驚きの声を上げる。
「クロノ……本当に勇者なんだ。」
そう笑顔を向けてくれたのはカルマだった。
「ああ……そうらしいぜ?」
俺の言葉に嬉しそうに微笑むカルマ。
すると…俺達を見ていた亀山もほっとしたようだ。
「クロノちゃん……ありがとう……大地につけたよ……ここからは僕も戦うから。」
「ああ…音姫を……助けようぜ!?」
その時…この状況を作り上げた凶悪な敵『浦牙島』の叫ぶ声が聞こえる。
『ぐあああああーーーーーーーーーっ!?なんだその力は!?貴様は本当に勇者なのか!?』
そう力を込め悔しげに叫ぶ浦牙島。
俺は奴に向き直る。
『ああ……俺は勇者らしいな…そしてお前は……俺の敵だ。』
◇
◇
◇
俺達は『シーズアイランド』に辿り着いた。
果たして!?




