ブラズール世界編シーン73
誰もが絶望したその時。
『勇者ラブラ登場!!!!!』
突然現れたのは勇者ラブラ。
「ラブラ……お前最近姿も見せねえし声もかけてこなかったから消えたのかと思ったぜ!?」
俺の問いにラブラは微笑み答える。
「それは……仕方ない事なの!さ!クロノちゃんはそんな事より今はカルマちゃんを助けるの!!いい?わかった!?」
「あ…ああ……わかった……だけど、魔王ゼルドリスの作ったこの結界のような何か…簡単には壊せそうもねえんだ。」
すると…ラブラは、すーーーっと片手を俺に翳してくる。
「これは…一体なんだ?」
俺の問いにラブラは意を決したかの様に口を開く。
『クロノちゃん……今まで私が自分と貴方の関係を教えなかった理由……ここでこたえるわ。』
「そんな余裕はないぜ!?ラブラ!!今はカルマを救わないと!!」
『わかってる……私がこれから貴方に力を送る事になる……すると貴方は全てを知る事になるわ。』
「ん?どういう事だ!?」
『さあ…時間はない……私の力だけではこの魔王の障壁は正直破る事ができない…そしてクロノちゃんの力だけでも無理なのよ。』
「それって!?」
『少しはピンときたかな?私とクロノちゃんの関係……それはね……『貴方は私が転生した存在』なのよ。』
「な!?なにっ!!!???」
俺は、その言葉に驚き身体も停止してしまう。
そんな事は全く考えた事は、なかった俺。
だが……そう思わせる言葉はこれまで聞いては来たのかも知れない。
「でも……それならなぜ俺とこうして話せたり俺の前に姿を現す事が出来ているんだ?俺がこうして存在してる以上無理な事だろ!?」
ラブラは考えると口を開く。
「そうね……転生前の私と転生後の貴方がこうして交える事は有り得ない話よね……でもね…それを可能としたのがこの世界の創造主である者の力なのかもね。」
『この世界は元は一つのゲームの世界……その世界を作った創造主は時をかける転生者という存在を考えた……転生を考えた彼は転生前の勇者…私の事ね……私は勇者となりかつての魔王を打ち倒した…だけれど魔王も、その邪念の塊は時を超えてしまった…それに対抗する為に勇者もまた魔王を追う……その為に歴代の勇者もまた転生を経て、そしてこうして偶然私はクロノちゃんと話せる事になったんだろうね?』
ラブラが俺の前に笑顔で立ち尽くしていた。
『魔王ゼルドリスは『邪念』で存在するの……だけれど、どこかでそれを断ち切らなければならないの……それが私やクロノちゃんの様な『勇者』の使命でもあるの。』
すると、徐々にではあるが俺の身体にすーーーっと重なりつつある勇者ラブラ。
真実を知った今。
俺はきっとラブラと一人になるよう…ここまで導かれてきたんだな。
俺と同化すれば…ラブラはもう…消えて俺の前に現れる事は無くなるだろう。
でも徐々に俺の中に懐かしさも生まれてくる。
俺は以前……勇者ラブラだったんだ。
そして、俺は今……完全体となる。
『ラブラ……そういや俺は竜人族でもあるって聞いたんだけどそれって……?』
『ああ…クロノちゃん……それはね……………。』
ラブラはそういうと。
俺の脳裏に見えてきた記憶の鱗片。
『ふぅ……少しは見えたかもしれないけど…今はそれどころじゃないわよクロノ!?』
『えっ!?』
我に返った俺は巨大な穴に引きずり込まれていくカルマの姿を視界に入れる。
『カルマーーーーーーーーーーーーーっ!?』
「クロノーーーーーっ!?」
魔王ゼルドリスの巨大な手に捕まれ動けないカルマの身体。
俺は再び刀を握り構える。
すると突然目眩を起こす。
俺の意識が遠のいていく……すると、俺の脳にラブラの意識が重なりそして一つになっていく不思議な感覚。
そして今…ラブラの意識が俺の意識と一つに。
『クロノちゃん……感じるでしょ?貴方は今私と一つになったの…一体になった私達の力は貴方が一人の時と比べらたら遥かに大きくなってるの。』
ラブラの声。
確かに今の俺の身体に爆発的な力を感じる。
『徐々に理解出来てきているようね…どう?今貴方はあのゼルドリスの防壁をこえたのよ?』
俺は気がつくと確かに今カルマの落ちている巨大な穴に存在していた。
「これなら!!!!!」
『なにーーーーーーーーーーーーーっ!?貴様勇者ラブラ!?なぜお前がーーーーーっ!?』
巨大な穴に響き渡るゼルドリスの声。
俺はカルマに追いつき彼女の手をとる。
「クロノ!!」
「カルマ!!またせたな。」
すると、ゼルドリスの声が聞こえる。
「貴様!?そんな事は許さん!?」
巨大な手が俺たちに迫る。
『ゼルドリス……させねえよ。』
そういい俺の背後に現れる魔神雷武。
「いくぜ雷武……武神流『断竜刀』」
俺の刀がキラリと輝く。
そして俺の身体は空間を飛ぶ。
目の前には魔王ゼルドリスの巨大な手。
俺は斬りかかると……ズササッっと刃はゼルドリスの巨大な手を粉々に斬り裂く。
『なにっ!?この力!?貴様本当に!?本当に勇者なのか!?くそーーーーーーーーーっ!?おのれ……覚えておれ…俺は邪馬国からお前達…そして全世界に向けて破滅の攻撃を開始してやるーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!??』
そして。
粉々になり巨大な穴にサラサラと消えていくゼルドリスの巨大な手。
「ゼルドリス……俺は…お前を追って……きっと本体も……俺が必ず。」
気がつくと…俺の腕の中にはカルマがいたんだ。
「カルマ…はは…気がついたか…良かった。」
「うん……クロノ……ありがとう……。」
「ああ。」
すーーーっと急激な眠気が俺を襲う。
俺はカルマを救えたんだ。
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