ブラズール世界編シーン72
突然、空間に空いた巨大な穴。
しかも…その穴は、まるでカルマを飲み込むかのように彼女の足元…そして背後に広がっていく。
そして……カルマは落ちていく。
「きゃあああああああああーーーーーっ!?」
「カルマさんっ!?フェロー厶」
隣りにいたエンポリオが魔神を発動させフェロームそしてフェリスが手を繋ぎカルマの落下を食い止める。
「なんだ、これは!?一体どういう事だ!?」
俺は、そう叫ぶと巨大な穴…から何者かの声が聞こえてくる。
『この世の全ての生物よ……我の名は魔王ゼルドリス……皆…………ひれ伏せよ。』
ゴゴゴと巨大な穴は口を開きながら地中深くから声が聞こえてくる。
威圧感を感じるその声は魔王と納得させる程だった。
すると…見ていたエルフィーナが震えながら言葉にする。
「魔王……ゼルドリス。」
「ほお……お前は以前この俺に刃向かってきた者の中の一人……精霊族の一人……エルフィーナか。」
「だからどうしたというの!?人間も私達精霊族も貴方達魔族に虐げられていました…そこで私達は力を合わせて貴方を討伐する事ができたのです。」
エルフィーナの言葉。
姿が見えない相手にそう告げるエルフィーナ様。
するとゼルドリスは続ける。
『ククク……まあいい……貴様もいずれドワーフ達……同胞のエルフ共もそして人間共もこの俺に刃向かう全ての生命を消し去り……そして勇者の消えた今こそこの世界を我が力で一掃し新たな魔族だけの世界へと変えることにするとしよう……まずは………。』
ゼルドリスはそういうと巨大な穴の中から穴に伴う巨大な手が這い出てきたんだ。
「なんだあれは!?」
「なにあれ!?カルマお姉ちゃん!?」
イシメールの声にサキノもカルマを案じる。
するとゼルドリスの声が聞こえる。
『ククク……この女は俺が貰い受ける。』
「なにっ!?」
「カルマさんっ!?」
エンポリオは魔神具を構え直す。
次の瞬間。
ギュウウウーーーーーーーーーーーンと穴の中からまるでエネルギーを凝縮集めているような音が聞こえる。
「皆さん!!???何かがその穴の中から聞こえてきます!!気をつけてください!ゼルドリスは甘い敵ではありません!!」
「エルフィーナ様!?」
すると、エルフィーナもまた魔神を発現させる。
「魔神シルフィード……『ウッドブレス』」
魔神は、その手からエネルギーを放っていく……すると…グググっと辺りの木々が伸びてくる。
それは徐々に防壁を作り出していく。
「よし!!簡易ですが防壁は出来ました!!さあ!!その子を!!」
すると、カルマの手を握るエンポリオが叫ぶ。
『カルマさんっ!?この手は絶対離さないぞ!?』
「エンポリオ君!?」
すると、ゼルドリスは言葉を言い放つ。
『貴様……その娘の手を離してもらおうか?』
「いやだ!!???カルマさんを僕は絶対離さないぞ!?」
『そうか……ならばまずが貴様を殺してこの俺の恐ろしさをそこの者共に教えてやらねばな。』
魔王の巨大な手はグググと握る。
そして。
ドゴオオオンっと激しい轟音を立てエンポリオの身体を殴る魔王。
ぎゅーーーーーーーーーーーーーんと飛んでいく決して軽くはないであろうエンポリオの巨体は飛んでいく。
誰にも止められない程の一瞬で。
ドガガガーーーーーーーーーーーーンと壁に激突……その音はしばらく続く。
エンポリオの衝突は衝撃により厚く強固な神樹の壁を破壊していく。
激しい音を立てバキバキバキっという音はどこまでくい込んだのだろう。
エンポリオの身体は神樹の木の内部にくい込んでしまったんだ。
「エンポリオ!?」
「「エンポリオさんっ!?」」
「エンポリオくんっ!?」
俺同様…皆がエンポリオの名を呼ぶ。
すると空間内に落ちていく残されたカルマの姿。
そして続の瞬間。
ガバッとカルマの身体は魔王の巨大な手に捕まってしまったんだ。
「いやあああああーーーーーーーーーーーーっ!?」
カルマの悲痛な叫ぶ声。
『ククク……さあ、捕まえたぞ……このまま我が新しい拠点とした地『邪馬国』へとゆくぞ。』
「いや!!エンポリオくーーーーーーーーーん!?」
カルマの激しい泣きじゃくる声だけがこの神樹内に木霊する。
俺は刀を構える。
『ククク……貴様が何かしようというのか!?』
「なにっ!?」
『既に俺とカルマの身体は俺の見えない壁の内部にある……どんな奴でもこの中には立ち入れる事はない。』
魔王の腕が消えていこうとする。
「なにっ!?カルマ!?」
「俺はこれからカルマと共にこの世界を変えてやろう……貴様らは……滅べ。」
ゴゴゴっと音を立て巨大な穴に消えていくゼルドリスの手。
もうダメか!?と誰もが思った瞬間。
『勇者登場ーーーーーーーーーーっ!?』
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