ブラズール世界編シーン69
『はあああーーーーーーーーーーーっ!!』
俺の声が神樹内部に響き渡る。
ドラゴンである魔神雷武は俺の刀の刀身にスーッと吸い込まれていく。
そう…これは以前の魔神具とは違う仕様になっているのだが…新しいこの魔神具は刀身に魔神が重なっていく仕様になっているのである。
だが、これこそが以前のクロノの魔神具の弱点ともいえるものだった。
他の魔神が魔神具全てに同化していくものだったのに対して魔神雷武にとっての以前の魔神具はあまりにも激しい力を秘める魔神雷武の力を完全にまで耐え切る事が出来ずにいたのだ。
いつしか刀身は砕けた…その為…クロノが手にした時には前魔神具からは刀身が消えていたのだ。
そう言った理由から柄のみの魔神具となっていた。
だが新しい魔神具は究極の魔石を使用し…創られた武器、今正に完全なる魔神具に…クロノの魔神具は完全版となったと言える。
すると雷武は語りかけてくる。
『クククッ……この新しいお前の魔神具はどうやらこの俺を更なる高みへと導こうとしているな。』
「それはどういう事なんだ!?」
俺は雷武にそう問いかける。
『フン……なぜこの俺様がそこまでお前に話してやらねばならん。』
「ちっ…ったくお前は…まあいいや……なら試してやる…新しい俺達の力を。」
俺達の脳内会話。
するとエルフィーナの声が聞こえてくる。
「いやっ!?これは!?ああっ!?」
その声は辺り一帯にこだまする。
『ぐふふふふ………さあ絶望しろ絶望しろ……この俺様はブラズール王……魔王に匹敵する力を見くびるのではない!!!!!』
すると。
奴の魔神ベルゼブブがその形状を変えていく。
そして魔神はエルフィーナの身体を包んでいく。
「これは……一体なに!?ううっ!?」
エルフィーナの身体を飲み込もうとする魔神ベルゼブブ。
「なんだ一体!?」
俺がそう言い放つとラファエルは答える。
「クククッ……俺様はこのままお前になどやられる訳にはいかんのだ……貴様…そのまま動くんじゃねえ……女王エルフィーナを無事にしておいて欲しければそこのドラゴンの魔神を引っ込めてその魔神具を捨てな。」
「なっ!?くっ……てめえ。」
俺は拳を強く握る。
すると雷武はその動きを止める。
「クククッ…それでいい……その魔神具をこちらへ渡せ。」
ラファエルはそう言うと、エルフィーナが口を開く。
「くっ……クロノ君……私に構わず……このラファエルにトドメを指すのです。」
「くっ……そうはいくかよ。」
「ダメです……これはこの地を守る為の私の覚悟です……私の生命でこの地が守られるのであれば本望です……ドワーフ王ドワフロスがそうした様に…私もこの地を守る為ならばこの生命など惜しくはありません!!」
強くそう言い放つエルフィーナ。
するとラファエルが口を開く。
「クククッ…そんな事はさせん……まずはそこの小僧の身体を木っ端微塵に吹き飛ばしたら男どもは皆殺し…そしてエルフ、ヒューマンの女共も奴隷として…我が繁栄の為の子の妻としてやるのだ。」
下卑たセリフを吐き散らかすラファエル。
「ラファエル……あなたもこのブラズールの王なのだとしたらこの地を守る者としての責務もあるでしょう!!国民の為の平和な国にしようとは思わないのですか!?」
怒りそう返すエルフィーナ。
するとニヤリと笑ったラファエルは言葉を返す。
「何の話だ!?今だから教えてやろう……俺様は過去に勇者に簡単に敗北し封じられ、この地を捨てた魔王ゼルドリスなどいつかこの手で引導を渡してやるつもりで生きてきたのだ……魔王不在をチャンスと考えた俺様はこれまでこの地を我がものとし自在に動かしてきた……だが俺様にも優しさもあってな……ドワーフやお前達エルフ達…そしてヒューマン達も生かしてきたのだ……魔王ゼルドリスが全てを破壊しようとしたがこの俺様は違うのだ…俺様は全てを絶望の世界に変えてやる…さあ小僧…エルフィーナを救いたければその新しい魔神具というものをこちらへ投げ捨てよ。」
そう言い放つラファエル。
そして、エルフィーナを今にも飲み込んでしまうであろう奴の魔神ベルゼブブ。
すると。
シュンッと勢いよく飛んできたのは魔神ベルゼブブが口から発した巨大な針。
『バーンズニードル』
ベルゼブブが一言呟くと俺の魔神具へと巨大な針が突き刺さる。
「なにっっ!?これは!?」
「クロノ君!?ダメです!!そのままではまた魔神具を破壊されてしまいます!!」
俺の言葉に叫び返すエルフィーナ。
『クククッ…これで新しいお前の魔神具も消滅……この地で俺様に抵抗する者は消え失せるのだ!!???』
徐々に俺の魔神具を破壊しようとしてくる奴の魔神ベルゼブブ。
まるで俺の力全てを奪おうとする奴の能力。
俺は脱力感を感じながらも必死に堪える。
「くっ!!お前なんかに……俺は負けねーーーーーーー!!!」
「クロノ君!!???」
その時。
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