ブラズール世界編シーン64
僕の身体に衝撃を受ける。
じわじわと侵食してくるラムドの攻撃が僕の身体に激痛をもたらす。
「うがっ!?くっ!?」
力が抜け膝から崩れおちる僕の身体。
「イシメールさんっ!?」
フェリシモちゃんがこちらに駆け寄ってくる。
「フェリシモ………ちゃん………。」
すると…ラムドが口を開く。
「邪魔を………するな!!!」
どーーーーーーーーーーーーんっとクラーケンの周囲から爆風が巻き起こる。
皆の視界が遮られ目も開けることもままならない状況。
「くっ!?」
「イシメールさん……」
フェリシモちゃんがざっと足を一歩出した瞬間。
「えっ!?」
「フェリシモ!?」
フェリシモちゃん目掛けてオーク達が襲いかかる。
巨大な大量のオーク達。
「なんなの?あの大量のオークは!?しかもあれは……」
そう言ったシャルロットさんの前には猪を巨大化させた恐るべき敵が四つ足で立ち構えている。
その光景はまるで戦車と対峙している人間といった感じだ。
シャルロットさんは焦り構える。
「簡単にはやられはしない!!覚悟。」
魔神具を構え猪に向かい走り出すシャルロットさん。
まともには立ち向かえる事は出来ないであろう事を誰もが想像できた。
「はああああーーーーーーーーーーーっ!?」
そして僕達の戦いがドガガガーーーーーーーーン!!っと激しい衝突で開戦したんだ。
すると一方のフェリシモちゃん。
「魔神……フェリーヌ……お願い。ローズウィップ。」
走るフェリシモちゃんは腰に巻かれていたローズウィップを握り解放していく。
するすると解放されたローズウィップがまるで生き物の様に蠢き出す。
そして。
「はああああーーーーーーーーーーーっ!?」
バチーーーーーーーーーーーーンッ!!と彼女のローズウィップが強固な何かに妨害され弾かれる。
「えっ!?」
「グフ……ぐふふふ…………………………。」
目の前のオークキングは不敵に笑うとローズウィップを止めた巨大な盾をズラし涎を垂らす。
「エルフ………すき。」
そう言ったオークキングは両手を上げていく。
そして。
「ぐへへ……抱擁」
「えっ!?きゃっ!!???」
シュンっとその巨体からは想像もつかないスピードでフェリシモちゃんの目の前に姿を現すオークキング。
次の瞬間。
ガバッとフェリシモちゃんを抱きしめるオークキング。
すると我も我もと呼応するように次々とオークの群れは女子の匂いを嗅ぎフェリシモちゃん、そしてシャルロットさんの前にも現れる。
ガシッとシャルロットさんまでもがオーク達に囚われてしまう。
「どんな能力なのよ!?本当に気持ち悪いっ!!いやっ!!」
「フェリシモ??くっ!!離してよ!!」
シャルロットさんの声がそう聞こえた瞬間。
オークの数体は神樹への攻撃を始めていた。
オークの持つ大斧が、ズガーーーーーーーーーンっと神樹への攻撃を加える事で足元の床が激しく揺れる。
その時。
「えっ!?」
「これは………!?」
僕達は何かを感じた。
すると。
空間に衝撃のエネルギーの塊が生じていたんだ。
バチバチというエネルギー音。
すると…聞こえてきたのは神樹を守っていたエルフィーナ様の声だった。
「!?皆!!何かが近づいてきています!一旦ここから離れるのです!!」
「えっ!?」
「エルフィーナ様!?」
「早くここを!エルフ種族の皆もここから立ち退かせないと!?いけないわ!?えっ!?」
その時エルフィーナ様は自分に迫っていた他のオークの存在に気づくのが遅れる。
そして瞬く間にフェリシモちゃん達同様オーク達によって囚われてしまったんだ。
「いやああっ!!」
「「エルフィーナ様っ!?」」
「くっ!?こんな化け物まで用意するなんて!?ラムド!!貴方卑怯よ!?」
エルフィーナ様の声にラムドはニヤりと微笑む。
「何が卑怯だってえ!?この僕は一度お前達の討伐に失敗しててねえ……ここで活躍しなければ……魔王ゼルドリス様に申し訳が立たないのでねえ…」
やがてゴゴゴと神樹自体も激しく揺れ出してくる。
この状況はこの神樹までも巻き込み潰そうという恐るべき事態を想像させる。
「このままでは神樹までも潰されてしまうわ……くっ!?どうすれば……いいえ……まずは人々を救う方が優先……でも間に合わないかも!?」
その時……何かの気配を感じた僕達。
「これは!?この気配は!?」
すると現れたのは、なんとドワーフ王国にいたはずのサキノちゃんとテンテンちゃんの姿があった。
「貴女達は!?」
「エルフィーナ様!!!私達も神樹解放を手伝います!!」
「クロノがここに向かって来るはず!!彼が来るまでここを乗り切りましょう!?」
この最悪な状況に来てくれた二人。
二人は次々と魔族の兵士たちをなぎ倒していく。
「はああああーーーーーーーーーーっ!?」
「たああああーーーーーーーーーーっ!?」
エルフィーナ様は彼女達の姿に僅かな希望が見えたのだろう。
これでなんとかここも凌げる事ができるかもしれない。
だがその時。
突然エルフィーナ様の様子がおかしくなる。
「これは!?まさか。」
ハッと気がつくとエルフィーナ様の身体は闇に包まれ始める。
「ククク……どうやら気がつくのが遅かったなあ。」
ニヤリと怪しく笑みを浮かべるラムド。
そして。
『魔神……『クラーケン』閉鎖』
次の瞬間エルフィーナ様の全身を捉えるクラーケンの蠢く触手。
そして…エルフィーナ様の全身は黒い闇に飲み込まれたんだ。
「エルフィーナ様…………」
「「エルフィーナ様ーーーーーーーーーーーっ!?」」
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