ブラズール世界編シーン61
クロノはドワーフ王に連れられとある場所へと向かっていた。
そして遂にクロノとドワーフ王ドワフロスはドエルグランツへと辿りついたのだ。
◇
「さあ……ここだ………。」
ドワフロスの声に僕は洞窟内に建てられた眼前の建物に目を向ける。
大きめの小屋、そして家から伸びる煙突の様なものは洞窟の天井と繋がり煙はきっとどこかに繋がり煙を排出させる仕様になっているのだろう。
「ここが…………」
「ああ……この工房こそが我が家でありドワーフの職人としての技を体現できる……ワシはこの工房を『ドエルグランツ』そう呼んでいるのだ…さあ…中に入るが良い。」
そう言ったドワーフ王の後に続き僕は建物内へと入っていく。
すると。
内部には巨大な高炉があり、この出入口までその熱が伝わってくるほどだった。
僕達の目の前には巨大な高炉。
そしてドワーフ王は僕に向き直す。
「ここはな……遙か昔…ワシと実の兄『ドエラルス』が使用していた工房なのだ……現在は使用してはいないがな。」
「そうだったんだ。」
「ああ……ワシの兄はドワーフ族の前王であり一流の鍛冶師だったのだ。」
そう話すと、ドワーフ王は続ける。
「少し…ワシの昔話しをしよう……かつてワシの実兄はこの国を繁栄…守り続けていたのだ……兄は凄い男だった……優秀で国王としても鍛冶師としても誰もが一目置く存在だったのだ。」
「だが…そんな兄に栄光の日々は長くは続かなかった……世界にはいつしか魔王という恐るべき存在が現れたのだ……魔王は某弱の限りを尽くしこの世界を闇の世界へと変えようとし始める…魔王の力は強大すぎた…そんな時、魔王に対しある勢力が立ち上がる…それはヒューマン達……そして我々精霊族だ…魔族から迫害を受け続けた我々は力を合わせこの世界に『勇者』を誕生させたのだ……二種族の力を備えた勇者は特殊な力を持っていた……そしてドワーフ王であった兄は勇者といつしか対峙したのだ……勇者は努力し魔王の力に匹敵するまでに成長していたのだ……だが勇者の力に対し魔王は絶大だった…そんな勇者は特殊な能力を高める…その特殊能力とは「魔族」を封じる能力…勇者はその特殊能力で次々と魔族を封じていったのだ…それは魔族…魔神達を武器等のアイテムに封じたのだ…そしていつしかそのアイテムを魔神具と呼び…使用者をマジェストと今では呼んでいるのだがな。」
僕はドワーフ王の話を聞き続ける。
「我々としても勇者の能力の助力となるべく武具の量産を手伝ったのだ……だが勇者の魔族を封じる為のアイテムは魔族が強力であればあるほど……強固な物でなければならなかった……初めは我々ドワーフ族で量産できる武具でも封じる事は可能だったのだ…それはやがて魔族でも魔神クラスの敵が出現する……するとそれまでの様な武具では魔神を封じる事が出来なかったのだ…そこで我々ドワーフ族も…より強力な魔神具の作成をする事になった……。」
そう言ったドワーフ王の表情が蔭ってくる。
「魔神具の作成はあまりにも強力なものなのだ……恐るべき魔神の力事、存在をもその武具に封じるのだ、当然と言えば当然なのだがな。」
「そして我々も勇者の成長に並び、より強固で強力な魔神具を次々と作成したのだ……そして遂に勇者は魔王と対峙する……だがその時……勇者の凄まじい成長と我がドワーフ族の力を結集した剣は魔王と勇者の激しい力の衝突により折れてしまったのだ…素材は世界最高峰の魔石オリハルコンまで使用した剣……その状況に危機を感じる勇者…だがその時…我が兄はその生命と引き換えに自らが魔石となったのだ…ワシに勇者の為の最強の剣を打てと言い残し……兄は魔石となった…そしてワシは兄が生命を宿らせた魔石を使用し…一本の剣を誕生させたのだ……名は『勇者の剣』兄の生命とワシの手から創り出したその剣は生命が宿ったかの様にワシの元を離れると……勇者の手に握られたのだ……そして勇者は世界の為に戦い……見事魔王ゼルドリスを討ち取ったのだ……。」
そこまで語ったドワーフ王は僕の目を真剣に見ていた。
「よいか…クロノよ……兄の生命の剣は過去の勇者と共に消え去った……だがお前が魔王ゼルドリスを倒す為にはお前の能力を百パーセント以上引き出し…それに耐え……そして魔王を打ち倒す強力な魔神具が必要となる。」
そしてドワーフ王は続ける。
「先の話は聞いたであろう?確かにオリハルコンという魔石は名実ともにこの世界最強の魔石なのだ…だがそれで武具を打ったとしても前回同様…魔王ゼルドリスを倒す事等無理であろう…」
「えっ!?でも俺の為に強力な魔神具を創り出すにはって事は……まさか」
するとドワーフ王は笑みを浮かべる。
「ああ……次はこのワシの生命で最強の魔石を生み出し…そしてクロノ…お前の為の魔神具を創ってやろうぞ。」
「ドワーフ王!?そんな!?アンタが生命まで張る事じゃないだろ!?」
あまりにも衝撃的な話。
いつしか俺は記憶の欠片をとり戻していた。
「ふふ……いいかクロノ…ワシの生命で世界を救うのだ…魔神『職人』」
そう言ったドワーフ王。
彼の背後に現れたのは巨大なハンマーを持つ彼の魔神『クラフトマン』
『ワシの魔神はワシを魔石に変え……魔石となったワシを利用しクロノ……お主の為の魔神具を創る……我ながら勇者の為の武具を創る為にこの生命を使えるなんてな…職人として最高の誇りだわい…。』
「ドワーフ王っ!?」
『さあ…ワシの生命と引き換えだ……責任もってこの世界を救え……勇者『クロノ』』
そう聞こえた次の瞬間。
眩い光に包まれる。
にこりとドワーフ王の笑みが見えた気がした。
同時に…魔神クラフトマンと…そのマジェストであるドワーフ王ドワフロスは消え去った。
そして……俺の手には煌めく刀が握られていた。
すると聞き覚えのある声が聞こえる。
『よお?お前も復活したのか?』
その声の主は…俺の新しい魔神具に再び宿った俺の相棒『魔神雷武』
そして俺は返答する。
「ああ……俺も復活だ。」
◇
◇
◇
クロノが新たな力を得て完全復活。
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