ブラズール世界編シーン60
その頃……リオと鉄星は。
「鉄星様!?」
私は急に立ち止まった鉄星様に声をかけた。
私達は魔王の力の欠片を探す旅をしているの。
「鉄星様……」
私が鉄星様の表情を見ると彼は神妙な顔つきに変わっていたの。
すると鉄星様は口を開く。
「リオ……実はな…これまでお前との旅でみた魔王の欠片を探す為の手段として用いていたアイテムはこの魔象烈鋸なのだ……」
「えっ!?鉄星様……それって?」
「ああ……エレファモスがこのワシに魔王の欠片の行方を知らせていたのだ。」
「そう……だったんですね?」
「ああ……エレファモスの能力としてどうやら特に鼻が利くようでな…魔王の力を嗅覚の様な感覚でとらえているらしい……そして魔象烈鋸によって導き出された答えがあの街にあるらしい。」
そうして鉄星様の指さす方向に街…それもどうやら港町らしきものが見えてきたの。
「行きましょう鉄星様。」
「ああ。」
こうして私達は港町に辿り着いたの。
ここチェンウォンで活気があり栄えている港町『フォンコン』ここは大きな街で夜景が有名らしく港からは旅船等も出ているらしい。
◇
「鉄星様ーーーーっ!?こっちですっ!!」
「ん!?リオ……お前早すぎるぞ?」
「そうですか?だって美味しそうなものが沢山並んでいますよ?」
「ふふ……わかったわかった!ならいこう。」
鉄星様は初めは驚いた表情を浮かべていたけど久しぶりにこんなに楽しい気持ちになれた私の顔を見て笑顔でそう言ってくれたの。
私達は久しぶりに美味しいものを堪能し、この平和だけど活気があるこの街に楽しい時間を過ごしていた。
そして私達はいつしか街外れの海が見える港に辿り着いていた。
夕陽が沈みかけ目に映る光景はキラキラしてとても美しかった。
海を眺める鉄星様。
私も彼の隣に立ち一緒に海を眺める。
夕陽を眺める私達。
こんなロマンチックな雰囲気。
私の心も不思議とドキドキしてくる。
「鉄星様?」
私はいつの間にか鉄星様の名前を呼んでいた。
「どうした?」
「私……今日の事ずっと忘れませんよ?」
「ん!?どういう事だ!?」
彼は私の言葉に驚きの表情を浮かべていた。
鈍感な鉄星様。
私達の年齢の差なら私にだって分かっていた事。
でも…私はいつの間にか彼の厳しさと時折私だけに見せてくれる優しさは私の心を捉えて離さなかった。
私はきっと鉄星様の事を。
「いえ…私今も幸せなんです。」
「ん?」
鉄星様の困り顔。
そんな表情を見るのも今は嬉しい事だった。
「なんでもありません。」
「そうか……リオ……これからの話をしてもいいか?」
鉄星様の言葉。
「はい。」
「ありがとう…では……魔象烈鋸が見せたのはこれからの我々の行く先……なのだが……」
「続きをお願いします。」
「ここから海を渡ろうと思う。」
「えっ!?海を!?」
「ああ……魔王ゼルドリスはブラズールというクロノ達が向かった所にいるのでは!?という予想をワシも立てていたのだ。」
「そうなんですね。」
「ああ…所が奴の気配はブラズールには感じられなかったのだ。」
「…………………」
「だが一箇所……この世界の伝説に残る場所があるのだが……そこは島国でな……文明の強い国ではなくこの世界でも神話に残る程の場所なのだ。」
「そこに何か感じたのですね!?」
「ああ……ワシの魔象烈鋸が奴を辿る思念をそこから感じるのだ。」
「なるほど……もしかしてこの海から感じているのですか?」
「ああ……そこはクロノ達の向かったブラズールからは遠い場所なのだがここチェンウォンからならさほど遠い場所ではないのだ。」
私は彼の話にドキドキが止まらなかった。
「これからの目的はその地に向かうという事なのですね?」
「ああ……だが…やはり危険すぎる行動となるだろう…リオ……お前はこの地に残れ。」
「嫌です!!!」
私は辺りにいた誰もが振り返るほど叫んでいた。
「リオ……………」
「鉄星様……もう嫌なんです!!私は大切な人達が私の前から消えていくのは嫌なんです!!!」
私は震えていた。
夕日に映る鉄星様。
「私は……父のように感じていた鉄星様…私は早くに父を亡くした事は以前に話したと思いますが…そんな父親と重ね合わせた部分もあって鉄星様の事を考えていた部分も初めは少しはあったと思います……でも……でも今は。」
私はグッと手を握っていた。
「私!!鉄星様が男性として大好きです!!!」
私はいつしか鉄星様に告白していたのです。
「リオ…………こんな年齢のワシだぞ?それでも思ってくれるのか。」
私は彼の目をじっと見つめる。
すると鉄星様は……私を抱き寄せてくれる。
「はい…私は鉄星様と生きていきたいです。」
「リオ……ワシの道に……ずっとついてまいれ…この…魔象烈鋸…そしてエレファモスとワシはお前を守っていく事としよう。」
「はい。ずっと。」
◇
◇
◇
こうして私は鉄星様と未来へと歩き始めたの。
この夕日と共に。
お読み下さりありがとうございました。




