ブラズール世界編シーン58
「カルマ…………さん。」
「エンポリオ……君。」
僕の身体はボロボロだった。
そしてカルマさんは僕を見て涙を流す。
僕は。
意識を失いかけた僕。
すると奴が口を開く。
『ククク……そろそろ…この男にトドメといこうか!?』
「くっ!?」
「颯さん!!やめて……」
『カルマ……何言ってるんだ!?この男はお前のなんだって言うんだ?』
「彼は関係ないじゃない!?彼はいつも私をこれまでずっと守ってくれたの!!自分の事を犠牲にしてまで私の事を守ってくれる素敵な人なの!!???だから……だから私はどうなってもいいから……彼だけは助けて……」
「くくく…カルマ…ようやく分かってきたのか?この僕はこの世界でもトップクラスの存在だ……つまりこの世界の生物の中でも強力な力を持っているんだ…感じるだろう?雄としての俺を。」
カルマさんにそう話す颯。
「私は……そんな強さなんて魅力を感じない…エンポリオ君は確かに貴方程の力は今はないのかも知れないけど…それでも…それでも私は!!いつも一生懸命に頑張ってるエンポリオ君が好きなのーーーーーーーーーーーーーー!!!」
カルマさんの叫ぶ声が聞こえる。
僕の心に響く彼女の声。
僕は………。
僕だって……彼女が好きだ。
彼女の為なら僕は。
僕の目に力が戻ってくる。
カッと目を見開く僕。
身体中に力が戻ってくる。
「うおおおおおーーーーーーーーーーっ!?」
僕の身体に魔力が溢れてくる。
そしてその力で颯の身体を吹き飛ばす。
体勢を立て直しながら楓が呟く。
「ぐううっ!?くっ……突然……なんなんだ……この力は。」
僕はカルマさんを抱えていた。
「なにっ!?いつの間にカルマを!!???」
そう………。
僕が光を放った瞬間……瞬時に彼女の元に飛んでいったのはフェロームとフェリス。
そして魔神達は囚われのカルマさんの手足の拘束を解き……僕の元へ彼女を舞いおろしてくれたんだ。
天から舞い降りてくる真っ白な彼女の長い髪。
僕の目に映ったまるで天使のようなカルマさん。
そして彼女は僕の腕の中にパサリと落ちたんだ。
「カルマさん。」
「エンポリオ君……私………。」
カルマさんの目が潤んでいる。
「うん……もう大丈夫だから……」
「エンポリオ君…でもまた私の為にそんなにボロボロに……」
彼女の潤んだ瞳。
「僕ね……やっぱりカルマさんが好きだよ!」
「えっ!?」
「だからさ……僕の為にさ……」
「ん?なに?」
「笑ってよ。」
僕は、にこりと笑って彼女に告げる。
カルマさんは目から涙を溢れさせる。
「ううっ……うわあああん。」
カルマさんは僕にしがみつき…泣き出した。
僕は彼女の髪を撫でる。
「大丈夫……僕がカルマさん……君をずっと笑顔にしてみせる……」
僕は魔神具……バトルメイスを握りしめる。
すると奴は震えながら口を開く。
『カルマ……なぜだ…なぜだなぜだなぜだなぜだなぜだーーーーーーーーーーーーーーっ!?』
そう叫ぶ奴は狂気の声をあげた。
「颯さん。」
『お前はずっと僕の…僕だけのものなんだ…ずっとずっと僕だけのものでいればいいんだ……あんな唐変木がお前の好きな人だとおおおーーーーーー!?』
ドガーーーーーーーーーーーーンッと爆発させる颯。
そして背後には奴の魔神…韋駄天が姿を現す。
グイングインと凄まじい光を身に纏う韋駄天。
『僕の韋駄天は魔王にも匹敵する……お前には勝てない。』
すると僕の隣りにもスピードでは奴にも負けない魔神フェロームがいる。
「僕のフェロームだって……スピードなら負けないんだ。」
『フン……超スピードの魔神同士……どちらがカルマに相応しいのか……決着をつけよう。』
「エンポリオ君!?」
カルマさんの僕を呼ぶ声。
「カルマさん!!任せて。」
颯の魔神韋駄天が構える。
対して僕の魔神フェロームも集中し構える。
『しねーーーーーーーーーーーーっ!?』
どうっと奴は魔神具『光速の小刀』を取り出すと僕に向かい飛んでくる。
次の瞬間僕の目の前に映った奴の姿。
ドゴッと僕の身体に突き刺さる颯の魔神具。
「あがっ!?」
さらに身体に痛みを感じる。
「ぐうっ!!がはっ!?」
超高速で僕の身体は奴の魔神具により次々と痛みと傷をつけていく。
「くっ!?うあっ!?」
「くくく……どうだ…いたいか!?傷もまだまだこれからだぞ!?」
ビュッ!!ズシャッ!!と音を立て…次第に僕の足元は、いつしか血溜まりができていた。
「さあっ!!さあっ!!死ね死ね死ねーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」
「エンポリオ君!?」
カルマさんの僕を呼ぶ声。
僕の心は不思議と落ち着いていた。
この男は本当に強い…だけど僕は勝ちたい。
そう思っていた僕の背後に何かを感じる。
颯の動きが一瞬止まる。
『なにっ!?それは…………鬼……だと!?』
ゴゴゴと僕の背後からは巨大な影が現れる。
僕の背後には巨大な鬼の角を頭に生やしたフェロームの姿。
「僕のフェロームは鬼となり音速となる。」
『金剛鬼力…………………』
「なんだとおおおおおおおおおおおーーーーーっ!?」
鬼と化したフェロームは颯と魔神韋駄天を捉える。
そしてフェロームの金棒が颯と魔神を叩き潰していく!!
『金剛鬼力……鬼音』
「うぎゃあああーーーーーーーーーーーーっ!?」
そして颯と魔神、韋駄天は身体をサラサラとした粒子へと変わり消えていったんだ。
カルマさんは消えゆく颯に目を向けていた。
「さようなら……颯………………さん。」
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