ブラズール世界編シーン56
私はショックと恐ろしすぎる恐怖に身体が震え動けなくなっていた。
信じて着いてきた颯さんの突然の変貌……しかもここは敵の居城なのである。
これが恐怖といわず…なんというのだろう。
「は……はや…て……さん。」
私は震えを何とか抑えながら…振り絞った声をあげる。
するとモンスターとなった颯さんが近づいてくる。
そして…彼の腕が今。
「うらああああーーーーーーーーーーっ!?」
ドゴンっという激しい爆音……そして壁が破壊され何者かがこの部屋に侵入してくる。
それは。
「エ……エンポリオ君!!???」
「カルマさん!?」
私を見つけた彼はこちらまで走りよってくる。
相変わらずボロボロになりながらも私の為に来てくれた彼。
今怪物となった颯さんの攻撃を受け止めてくれるエンポリオ君。
そして彼は微笑む。
「あはは…カルマさん……無事で良かった。」
「エンポリオ君。」
私は彼の変わらない笑顔に涙が溢れてきていた。
そして彼は私への攻撃を受け止めたまま、身体に力を溜めていく。
すると私達の前には二人の魔神がいる。
『ししょー!お待たせしたであります!』
『ああ…これでやっと自由に動けるようになった。』
私は、そう話したフェリスに問いかける。
「えっ!?フェリス?それってどういう事?私がいくら呼んでも答えてくれなかった理由って事?」
私はここまで颯さんときたけれども、実はその間フェリスの力を感じる事ができていなかったの。
私はそう問いかけるとフェリスは口を開く。
『ああそうさ……僕はあの颯って奴の何らかの力で不思議な光でカルマ…お前との間に壁を張られて交信できなくなっていたんだ…そこへエンポリオがフェロームを連れてきてくれたからな…おかげで力を得てやっとその壁を壊してこれたんだ。』
「フェリス……そうだったんだね…本当にごめんなさい。」
フェリスにそんな事があったなんて、私はその事に涙が零れそうになってしまう。
するとすーっと私の頭にポンポンっと肉球で撫でてくれるフェリス。
『カルマ……僕はお前だけのナイトだぞ……』
そう微笑み魔神具に消えていくフェリス。
「フェリス…………うん。」
そしてエンポリオ君が私に手を差し出してくる。
「エンポリオ君?」
「カルマさん…立てそう!?」
「うんっ!?」
私に力が戻ってきた。
絶望の縁から救われたような感覚。
すると……ゴゴゴと地鳴りが聞こえてくる。
「これは。」
『くくく……お前、どこから着いてきたんだ?』
颯さんのその恐ろしい声が辺りから聞こえてくる。
「お前は……カルマさんを誘惑して連れていった奴だな!?」
すると忽然と僕達の傍から消えていたあの男の声が辺り一帯に響いていた。
『ふう……やっとこの城まで連れてきたカルマを僕は誰にも渡さない……カルマは小さい頃から僕だけの所有物で僕だけのものなんだぜえ??』
「うるさい!???カルマさんはお前の所有物なんかじゃない!!???」
『くくく…そうかなあ!?カルマが小さい頃からずっと知ってる僕は彼女の全てを知ってるんだぜえ……そして僕とよく遊んで一緒に過ごす事もあったしなあ……そうそう……彼女が小さい頃なんかお風呂にも入れてあげたり、おじさん好きってキスなんてしてくれたりしていたんだぞ?どうだい?これで彼女と僕の関係が深いものだと分かっただろう?』
私の過去の話をエンポリオ君にしてくる颯さん。
確かに小さい頃はよく遊んでくれた颯さんに私は好意をみせたのかも知れない。
聞いているエンポリオ君はぷるぷると震えている。
すると……颯さんは続ける。
「くくく…いいか?木偶の坊……僕とカルマは昔から全てを知り尽くしている存在なんだ……そしてこれからカルマはこの僕の為に生きて僕の子を産み僕の力ごと世界に存在させる為に生きてもらうんだ……貴様等に僕達の永遠とも呼べるこれからの未来を邪魔等はさせない。」
どこからともなく聞こえてくる颯さんの声。
そしてエンポリオ君はその言葉をじっと聞いていた。
その時。
どーーーーーーーーーーーっという激しい揺れと床を突き破ってはい出てくるそれは巨大な腕!!!
これは怪物となった颯さんの腕だった。
「きゃあああーーーーーーっ!?」
私に再び襲いかかってくる巨大な腕が二本。
『カルマ!!いくぞ。』
「フェリス!?うんっ!!」
『フェリス!in The レイピア!!』
私はレイピアを構える。
「カルマさん……僕はあいつを許さない……君は僕は全てをかけて守る!!」
「エンポリオ君……うん…お願い、力を貸して。」
「当然!!!」
私とエンポリオ君は寄り添い戦う。
颯さんはきっと恐ろしい程強いと思う…でもきっとエンポリオ君となら彼を倒せると思う。
私はもう道を間違えない。
エンポリオ君と一緒に父さんと母さんに会うから。
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