ブラズール世界編シーン55
僕は、ふと意識が戻る。
目を開けると、そこはどこかの部屋の中だった。
機械内部の様な部屋の内部……これは。
ハッと気が付き辺りを見回す。
僕はブラズール城内部に入り込み機械兵との戦いを経て、そして今ここにいるのだろう。
あれからどれくらいの時間が経ったのだろう。
そう考える。
すると僕の脳裏によぎったのは先程の女性の安否だった。
『フェローズ!?聞こえるかい!?』
『ああ…聞こえるであります!』
『さっきの女性はどうなった!?』
『ああ…彼女はお前の安否を気にしてたけど僕が無事だから大丈夫と説明して出口まで送り届けたであります。』
『そうか……良かった。』
『ところでカルマの話であります!』
『おお!!カルマさんがどこかにいるのか!?』
僕の脳裏にカルマさんの事が思い浮かぶ。
颯さんという元の世界で知り合いだった男に両親にあわせてもらうという話で彼に着いて行ったんだ。
僕は彼女が両親との再会を果たせる為に一緒に旅をしてきたけどその役目が僕じゃなかった事に少なからずショックをうけていた。
でもあの時…必死にそれを彼女は願い……それをすぐに叶えられるのは確かにあの彼の能力があればこそ…だから彼女もそれを願ったし僕もそう納得するように自分に言い聞かせたんだ。
「カルマ………さん。」
そう彼女の名を僕は口にする。
するとフェローズの声が聞こえてくる。
『エンポリオ……エンポリオ。』
『フェローズ…どうした?』
『ああ……実はな……さっきまで感じていた師匠の魔力が今点灯しているんだ。』
『どういう事なんだ?』
『ふう…人間ってのは不便なもんだな……それはつまり……師匠がこの近くにいるって事だ。』
僕はハッとする。
「カルマさんが近くにいるって事か。」
『ああ……僕は師匠の魔力を感じる事ができる……だが一緒にいるのはあのヤバい男だぞ…それにあの女はエンポリオ…お前の事を本当に待っているのか!?』
その言葉に僕はビクッと反応してしまう。
『彼女は………』
「僕は……」
僕の言葉にフェローズは言葉を止める。
「確かにカルマさんはあの男に着いていったよ……きっと僕より長い付き合いがあったんだと思う……でも……僕はカルマさんと沢山話もしてきたしカルマさんに両親と必ず僕が合わせるからって約束もした……でもあの時は僕より彼の方がそれを叶えそうな気がした……僕なんかじゃ無理かなってずっと考えてたんだ。」
するとフェロームは静かに近づいてくる。
まさかこの僕を慰めようとでも考えてるのだろうか。
「フェローム………?」
僕は彼を見続けていた。
するとゆっくりと上げられていくフェロームの右腕。
そして。
バキイイイーーーーーーーーーーーっ!?
「ぐふっ!!???」
僕の左頬に強烈な痛み、そして衝撃をうけ、僕の身体は吹き飛ばされる。
ドゴーーーーっと壁に衝突する僕の身体。
決して軽い訳ではない僕の身体をこうもあっさりと吹き飛ばしたフェロームは魔力を身にまとっていた。
「なに……するんだよ……フェローム。」
僕が頬を抑えながらそう言葉にする。
『エンポリオ……お前、甘ったれるなであります。』
『フェローム。』
すると……どこからともなく聞こえてくる叫び声。
「あれは………カルマさん!!???」
僕は駆け出す。
大切なカルマさんを守るために。
◇
◇
◇
カルマ視点
「きゃあああーーーーーーーーーーーっ!?」
私が目を覚ました瞬間。
恐るべき怪物が私をみていたの。
ギロリと大きな目を見開いて私を凝視する怪物。
そして私は動けずにいた。
すると口を開いたのは怪物だった。
「ふふっ…起きたか……とうとうこの僕の真の姿が見れたね……カルマ。」
「えっ!?それって……貴方…颯さんなの!!??」
「ああ。」
そう言った颯さん。
私の目に映る彼の姿は異形の姿。
人間離れしたその姿には恐怖しか感じなかった。
「がはっ!?ぐはああっ!!」
突然私の目の前になにかを吐き出す颯さん。
すると吐き出された何かの物体はうねうねと蠢き出す。
「えっ!?なに?」
私の声に颯さんはこたえる。
「くくく、これは僕の魔神の能力……そう…僕の韋駄天は世界中どこにでも瞬時に移動出来る…そしてこの力は最強というべき能力でもある…それはこの魔神が消滅しても『繁殖』という能力をもっている…これにより僕の魔神韋駄天は太古から繁殖で生きながらえてきた…まあ不死の能力といっても過言ではないだろう…この能力を僕はずっと使いながら生きながらえあの魔王の復活という快挙をなし得たという訳さ。」
私は衝撃の事実に声も出なかった。
「ふふっ怖いか?だがな……僕の『繁殖』能力には媒体……つまり母体が必要なのだよ。」
「えっ!?」
私はその言葉に打ち震える。
「はあはあ……僕は上司である君のパパにあい、そして初めて君を見た時…恋に落ちたんだ…あまりにも美しいカルマ……君は僕と恋に落ちそして僕の能力…そして僕の後世をこの世に産むんだ。」
「いや。」
あまりにも恐るべきこの状況に私は涙と震えが止まらなかったの。
◇
『エンポリオ……くん。』
◇
◇
◇
お読み下さりありがとうございました。




