ブラズール世界編シーン53
このままでは彼女が危ない。
そう直感した。
先程まで動けなくなってしまっていたフェロームに僕は心から願ってみる。
僕だけの力では………。
するとフェロームの声なのだろうか、僕の脳裏に流れ込んでくる。
『エンポリオ……僕は今動けずにいるであります!!』
『えっ!?それってどういう事!?』
『この街に入ってから僕の力が制御されているであります!』
『まさか、そんな事……』
『ブラズールの首都であるこの街『ジャネイロ』には魔神の力を抑え込むなんらかの力が張り巡らされてるであります!』
『力の制御……やはり魔王の仕業か……きっと奴ら魔王軍は魔神の力を抑え込むなにかを見つけてしまったのかもしれないな。』
『そうであります!だからこの僕も動けなくなってるであります!!』
『そんな……僕は君の力があってこそ強くなれたのに……やっぱり僕だけではこんなに弱いってのにどうしたらいいんだよ!!!』
『僕に……………』
『えっ!?』
『僕に……甘えてばかりいるなーーーーー!!』
『フェローム………。』
『僕が君の魔神になったのは君を甘えさせようとする為になったわけじゃないぞ!!?』
僕は衝撃の言葉を浴びせられる。
『エンポリオ!!君が強くなろうと必死に頑張ってる姿を見て僕は君に僕と同じ熱い思いを感じた…僕と同じく真に強い男になる為に努力してるから僕は力を貸す事にしたのであります!!』
『フェローム。』
僕は頬を思い切り殴られた様な衝撃をうける。
『僕が動けなくなってるのも本当だ…でも本当のマジェストならこんな事も……吹き飛ばしてやれ!!』
僕に。
僕に力が戻る。
そうだ…そうなんだよ。
マジェストになれた事で勝手に強くなった気でいたけど………。
「マジェストの強さは思いの強さだ……僕はもう……負けないんだーーーーーーー!!!」
◇
◇
◇
ヒュンヒュンヒュンと風に僕と共に立ち尽くすのは…………………新たなフェローム。
『そうだぜエンポリオ…僕に頼るんじゃない。』
「ああ……きっとこれが僕らの理想系の姿……フェローム……君は僕の……『相棒』さ。」
『オーケーエンポリオ……いくであります!!』
◇
『ぐええええーーーーーーーーーーーっ!?』
その瞬間聞こえたのは先程の怪物が今まさに女性に襲いかかろうとしたその瞬間だった。
「うおおおおおーーーーーーーーーっ!!させるかーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
ー 僕のバトルメイスはキラリと光る。
と同時にバトルメイスから発せられた光。
その時。
機械怪物の巨大な腕がぐにゃりと曲がり機械怪物はバランスを崩す。
そして視線を移すとそこには怪物を殴るフェロームの姿。
「フェローム!?」
『オーケー…エンポリオ……ツギハオマエダ。』
「うおおおーーーーーーーーーーーーっ!?」
フェロームとの連携プレー。
僕のバトルメイスは怪物の頭上を捉える。
バキバキっと怪物の脳天にヒットしていくバトルメイス。
『ギギギ……ウイーン』っと音を立てる機械の怪物。
モーター音とカチャカチャという機械音を発しはじめる機械の怪物。
徐々にその音は大きくなっていく。
僕にはそれが何を意味するのかが分かっていた。
そうこれは僕のこの激しい攻撃を今も回避し これ以上破壊されるのを防ごうとしているのだ。
「そうはさせない……確かに君もこうして侵入者を排除しようとしているんだね…だけど。」
僕のバトルメイスがパワーを蓄えている。
「だけど……君はあの子を壊そうとしているんだ……僕だって科学者の端くれ…君のような素晴らしいロボットを作れたらきっと科学者として誇らしいんだと思う……でもね…僕は父親に憧れてロボットを作る夢を見ているけど……父は言ってくれたんだ……ロボットは人間の夢……それを欲望の為に使ってはいけない……人々が快適にそして幸せに生きれる為に科学者はロボットを作らなきゃいけないと。」
ギギギとそしてウィンウィンとパワーを貯めていく機械の怪物。
その力はおそらくこの辺り一帯を吹き飛ばしてしまうであろう程のパワーを秘めているくらいの力を感じる。
『いくよ……もう……君は眠るんだ。』
僕は改めてバトルメイスを構える。
その時。
機械怪物は僕より早い動きを見せる。
ガガガッと発せられた機械怪物の閃光。
このままではあの女性も僕もタダでは済まないだろう。
僕は彼女の前に立ち構える。
「えっ!?あの……あなたは逃げてください!!」
「フェローム。」
フェロームが超スピードで彼女の腕を解放し僕の後ろに移動させていた。
「ええっ、これは!?」
「大丈夫!!そこで見てるんだ……動かないで。」
「えっ!?後ろから!!」
僕はにこりと微笑む。
どどおおおおおーーーーーーーーっと放たれた機械怪物のエネルギー放。
『バトルメイス……金剛鬼力……』
ドゴーーーーーーーーーーーーーーーーーンッという大爆発に周囲一帯は包まれたのであった。
そして……機械の怪物はバラバラに吹き飛びその存在は消え去っていったんだ。
「いやあああああああーーーーーーーーっ。」
そして……助かる事ができた彼女の叫び声だけが鳴り響いたんだ。
◇
◇
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