ブラズール世界編シーン51
エンポリオ視点
今……僕はどこか知らない場所に立っていたんだ。
さっきまでエルフの神樹にいた僕達。
だけど現れたペドロとの戦いが始まったハズだったけど僕は今こんな所にいたんだ。
僕の目の前に広がるのは黒い荒野……そして奥には機械によって造られた要塞の様な建物が見えてくる。
「なんだ……あれは。」
すると僕の頭上から聞きなれた声が聞こえる。
『よおエンポリオ。』
「んんっ!?フェ……フェローム!?」
『ああ…そうであります!だけどどうしてそんなに驚くのでありますか?』
フェロームがおどけながら声をかけてくる。
その容姿はフェレット。
見るとその光景はフェレットが二本足で仁王立ちをし身体の大きな人間……つまり僕に話しかけているという奇っ怪な光景だったんだ。
すると呆気にとられた僕に話しかけてくるフェローム。
『エンポリオ……お前……………………』
『フェローム……僕の気持ちが読めるのか?さすが僕の魔神だ……凄いよ!!』
『ああ!当たり前であります!!』
『その話し方……』
僕はそういった口を噤む。
『ん?どうしたでありますか?』
『いや……なんでもない…ところでここはどこなんだろう……』
『知りたいでありますか!?』
『うん………』
僕がそう言うとフェロームは押し黙る。
そしてフェロームは口を開く。
『エンポリオ…僕のこの姿に何か感じないか?…』
『えっ!?それって!?』
『僕のこのフェイスレンズ………これは僕の全てが映るのであります!!』
フェロームのその言葉に僕の脳裏にある考えが生まれる。
僕は自分の頭に手をかける。
『そう……それだ………それは『スコープ』頭脳に秀でたお前ならきっと分かるであります!!』
フェロームのその言葉に僕はフェイスレンズをシュッと下げる。
すると。
ブオンっと目の前にはとある画面が映り出す。
それは明らかに僕の視点ではなく………随分と低い。
ん!?これは。
僕の脳に浮かんだこれはそう……フェロームの視点だったんだ。
するとフェロームは更に続ける。
『僕の能力の一つに『トップスピード』ってのがあるのであります!』
「トップスピード………」
『そうであります!この能力を使えばあそこに見える建物内に潜入できるであります!!』
そう言いきるフェローム。
僕にはこれは衝撃だった。
「なるほど……そうか。」
僕の身体に力がこもる。
手にはバトルメイス。
そしてバトルメイスを構えるとフェロームに声をかける。
「フェローム……力を貸してくれ。」
『ああ……行くであります!!』
「フェローム……スコープ《偵察》」
バトルメイスからフェロームに力が流れこんでいく。
そして。
『フェローム……トップスピード。』
フェロームは超スピードで消える。
次の瞬間。
僕のスコープに映るのはフェロームの視界。
ぐんぐん走っていくフェローム。
フェロームはあの機械要塞内へとあっという間に辿り着く。
そして遂に侵入を果たす。
内部の入り口は真っ暗、するとフェロームはそこでひとまず停止している。
『エンポリオ……内部の様子が見えるでありますか?』
『ああ……見えてるよフェローム……でもこのまま侵入していったら危険ではないのか?』
『ああ……それに関しては………………』
フェロームはそういうと動きが停止する。
『フェローム!?どうした!?』
僕のその問いかけにフェロームは停止したままだ。
すると。
聞こえてきたのはカツンカツンっと何者かが近づいてくる足音。
そして足音はフェロームの近くに立ち止まったのだろう。
次の瞬間聞こえてきたのは誰かの言葉。
『ぐふふふふ…………こんな所に怪しい奴が入り込んできたなあ。』
するとフェロームの視点を通して何者かが映り込んでくる。
口が大きく裂け……涎を垂らし……そしてフェロームを覗き込むように見ていたそれは。
『巨人兵!?』
そう……映り込んだのはなんと巨大な鎧の兵士。
するとそいつが声をあげる。
『貴様……なにゆえここにいるんだあ!?今わしはお楽しみ中だったのだがなあ……昨日繁殖の為のヒュームを大量に仕入れたのだ……その行為をこうして邪魔しにくるとはいい度胸だな。』
すると……奴の背後に何者かの存在を確認する。
「あれは…………」
僕の視点に見えたのは奥の壁に磔となった女性達。
僕は。
走り出す。
あの人達を助けなきゃ!!!!!
僕はそのまま機械要塞へと走りだしたんだ。
フェロームが動かないまま僕はあの要塞へと入っていったんだ。
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