ブラズール世界編シーン45
「ゲッゲッゲッゲッゲ……………」
男はその身体を変化させていく。
するとその緑色の肌……そして醜悪な表情。
その姿は正にゴブリンだった。
ゴブリンの中でも最強の部類ゴブリンロード。
それはここまでか!?
というくらいの威圧感を見せる。
この男リベロの圧倒的な力を見せつけられる。
「そんな……この男がこんなに強いなんて……。」
その力を見せつけられたラウラさんも恐怖に支配されているようだ。
リベロが発した吹きやまぬ爆風は確かにその力を示している。
「サキノ…ちゃん。」
「テンテンちゃん……」
私達はお互いに見つめあい、圧倒的な力のリベロを見据えていた。
すると奴は口を開く。
『ケッケッケ……さあどうだ……魔神であるメデューサを支配し…そして偉大なるゴブリンの王としてここに誕生したこの僕を……敬うがいい。』
私達の目の前に魔神であるメデューサの力を得て進化した魔物……それがこの男の正体だった。
「くっ……私の魔神だったメデューサも……進化した…と言う事!?」
「そんな………」
私達の考えを全く超えていた能力。
それが魔神から力を得て自分自身のパワーアップをはかるという事。
これは魔物ならではのパワーアップ方法なのかもしれない。
そんな恐ろしい考えが浮かぶ。
すると言葉にしたのはラウラさんだった。
「そうよ……私の様な獣人にもそして精霊にも、人間にもできない……魔神の力を自分自身の物にできる能力……それが魔族が魔神を従えるという事……そして魔神の脅威の力を最大限に引き出したあの下等な魔物でも恐ろしいパワーアップを果たしてしまった…という事なの。」
「そんな………」
私達の声にラウラさんは続ける。
「こんな事がなければ……私だって獣人の端くれ……ここまでやられたりはしてないのよ。」
「…………………………ラウラさん。」
確かにラウラさんだってこのブラズールの王であるラファエルの側近だったのだ。
そんなラウラさんをここまで弱らせたのはこの男のパワーアップによるものなのだろう。
すると男は声をかけてくる。
「ふむ……流石にゴブリンロードとなったこの僕の力に恐れを感じただろう?でもこの僕も鬼ではない……ここで提案してやろう。」
「提案………だと?」
ラウラさんはリベロにそう問いかける。
「ああ……そうさ……僕はゴブリンロードとして進化した……元々繁殖能力の高い僕達の種族はメスが大好物でねえ……三人ともこの僕にその身を預けるならば生命まではとるまいよ。」
ゲスい言葉と共にニヤつくリベロ。
見てるだけでも悪寒が走る。
するとテンテンちゃんが叫ぶ。
「私達がいる限り……そんな事はさせない!!」
『スタッグビートル………。』
テンテンちゃんが方天画戟を握る。
「このままアンタを鋏み切り裂く!!はあああーーーーーーーーーーっ!?」
ずしゃーーーーーーーーっと飛んでいくスタッグビートル。
巨大な鋏をガシガシっと鳴らし飛びかかっていく。
『魔神メデューサ………ストーンエッジ。』
奴がそう告げた瞬間。
「えっ!?これは?」
急に勢いを殺され失速するテンテンちゃん。
「テンテンちゃん!?」
私の視線の先には足を抑え込むテンテンちゃん。
テンテンちゃんのその足はなんと石化してしまっていたんだ。
「それは……魔神メデューサのレア能力……『石化』……この私でも使いこなせなかった能力を………くっ。」
『ククク………だから言っただろう?魔族であるこの僕こそが魔神メデューサを魔神にするには相応しいのだと…こうして……魔神メデューサの能力を完全に使いこなせるんだからね!!』
その瞬間。
私の左足に急激な重みを感じる。
「えっ!?んんっ!?あ……足が…………」
「サキノちゃん!?ああっ!?」
私の名を叫ぶテンテンちゃん。
ところがさらにテンテンちゃんの今度は左腕が石化されてしまう。
腕を抑え地に転がるテンテンちゃん。
私達二人に襲いかかるメデューサの恐るべき能力。
ここで魔族の本当の恐ろしさを実感する私達。
「くっ……………」
その時。
私達を守るように立ち尽くしたラウラさん。
「ラウラ…………さん。」
「ラウラさん!?」
私達も彼女の名を叫ぶ。
すると奴が口を開く。
「ククク……身の程知らずとはお前の事を言うんだよ…元……魔王軍……ラファエル様の側近兵……アールロー………ラウラ。」
「ぬかせ………」
そう告げたラウラさん。
するとラウラさんの身体はみるみるうちに変化していく。
「はあああーーーーーーーーーーっ…獣人化。」
どうっと音を立て、その身体が変化していくラウラさん。
そこには獣人と化したラウラさんが立ち構えていたんだ。
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