ブラズール世界編シーン40
私達はとある村にきていた。
そこは鉄星様が手助けをしていた孤児院だった。
そして鉄星様と語り合い…夜が明けた。
朝の日差しが建物内に差し込む。
私が目覚めると鉄星様はいなかった。
「鉄星様!?」
部屋の中を見渡すと鉄星様の魔神具がなかったの。
私は慌て起き出し外へ駆け出す。
「鉄星様!?鉄星様ーーーーーーっ!?」
私達の寝泊まりした小屋を出て村の中央へ。
そこでも見回すが誰の姿も見当たらない。
「どこに行ったんだろ?」
私がそう呟くとスクエルが頭上に現れる。
「スクエル?」
『キキッ。』
一言鳴いたスクエルは地面に着地すると私を見て走り出す。
私はスクエルの後を追う。
いつしか村から飛び出し近くの森へと走っていくスクエル。
「スクエル!?」
私が着いてきてるのを確認したスクエルは誘導するように森に入っていく。
私はそれを追いかける。
「はあはあはあ……えっ!?」
鬱蒼とした木々を振り払い奥へと進んでいくとそこは道が広がりを見せる。
すると。
「えっ!?」
私の目の前には草原が広がりそこには数名の子供達の姿があった。
そして子供達の中央には、にこやかな笑顔を見せる鉄星様の姿があったの。
いつしか立ち止まり笑顔の鉄星様に見入っていた私。
木刀を構え次々と襲いかかる子供達をリズミカルに否していく鉄星様。
どうやら鉄星様はここで子供達に剣術を教えていたようだ。
「鉄星様……………………」
私の声と飛びついていくスクエルに気づいた鉄星様。
「リオ……まだ寝ておれば良かったのに。」
「鉄星様……いえ……おはようございます!」
私達の声ににっこりと優しい笑みを浮かべる鉄星様。
その笑顔は朝日に煌めき……私の心がドキドキしていたの。
すると。
「鉄星様!?次はオイラの番!!いくよーーー!!」
「あはは…分かっておる!いつでもこい。」
こうして鉄星様は子供達にひとしきり剣術を教えていたのだった。
私はその光景を嬉しい気持ちで眺める。
すると後ろから声をかけられる。
「リオさん……でしたね。」
「えっ!?あ、はい。」
「鉄星様は……人間とした本当に素敵で素晴らしい方です……。」
私は子供達にお母さんと呼ばれるこの方の話を聞いていた。
「実は…この村は小さな村ではありますが以前はのんびりとした平和な村だったのです…ですが…この村に突然魔族が現れ…村の大人達は次々と殺められてしまったのです……その時辛くも生き残ったのは……私でした……村は壊滅状態……動けない私の目に映ったのは…恐ろしい魔族の姿でした……そして壊滅させたこの村と動けない私を残し魔族は去っていきました…もうだめかと諦めた…その時……私に声をかけてくれたのがあの子供達だったんです。」
私は子供達に目を向ける。
すると彼女は言葉を続けたの。
「私は子供達に救われた気がしました……この子達だけではこの状況ではきっと生きていけない……なんとか私が生きなければ…って。その時偶然この村を訪れたのが…鉄星様だったのです。」
「そんな事が起こったのですね。」
「ええ……私も九死に一生を得た気持ちでいっぱいになりました……そして……鉄星様達の力も借りながらなんとかここまで暮らしてこれたのです。」
「そうだったんですね。」
私はそう返す。
すると。
「貴女は鉄星様と旅をしているのは何か理由がおありで?」
私はその声に改めて考えてしまっていた。
私は鉄星様の片腕代わりに、初めはそう思っていたのが強かった。
でも彼と一緒に過ごしてきて色々な感情も芽生え始めていたの。
「私は…………」
すると後ろから鉄星様の声が聞こえる。
「リオ……すまん……さっきの稽古が楽しくてつい転んでしまったのだが…裁縫というのは得意だったかの?」
私は振り返ると……はにかみそう言った鉄星様の破れた衣服を見る。
「あーーーーーーもお!!鉄星様!調子に乗って暴れるからこうなっちゃうんですよ!?」
「あはは!本当にすまんな……」
鉄星様の照れた笑顔。
「もお……貸してください。」
私は鉄星様の衣服を受け取りお裁縫をする。
「おお……リオ意外に裁縫も上手かったんだな?」
「意外って失礼ですよ!?そんな事いうならもうご自分で縫ってください!?」
「すまんすまん!」
「もう知りません!!」
私に必死に謝る鉄星様。
なんかこの感じ……クロノ様と話してるみたい。
そっかあ……父親の様な包容力……そしてクロノ様の様な無邪気さ。
なるほど。
私の心をどこか納得させてくれる彼。
「鉄星様!?」
「どうした!?リオ?」
「いえ……ずっと……ついてきます。」
私はこの時気持ちを新たにしたの。
すると。
『グオオオオオーーーーーーーーーーーン。』
この時。
大地の底から何かが迫っていた事は私達はまだ気づいていなかったの
◇
◇
◇
お読み下さりありがとうございました。