ブラズール世界編シーン38
「ほかーーーく!!」
そう聞こえた声は知った声だった。
僕はゆっくりと視線を声の主へ向ける。
するとそこには僕の魔神であるゴルンガがいたんだ。
『ゴル……ンガ………。』
『オイオイオイ……てめえ……なあにボロボロに死にそうになってやがる!?』
『ゴルンガ……そうは言っても……あいつ……今までの敵を力も能力も、はるかに能力が高い…んだ。』
『ああ……確かにそうだな。』
『僕はマジェストになったばかりでさ…他の皆と比べたら…』
すると。
バキッと僕の頬に強烈な痛みを感じる。
『いっ……ゴルンガ…………』
『てめえ……何勘違いしてやがる!!』
『えっ!?』
『やっぱりお前はあまいなあ…野生のリアルでは、その優しさが生命とりだってのによお。』
そう言ったゴルンガ。
でもゴルンガは続ける。
『野生動物リアルじゃ…外に出れば誰も助けちゃくれねえ……弱き者は戦いに敗れれば強き者の餌…血肉になるんだ……それが通りってもんだ…人間の様に助け合って支え合ってなんて…時折存在する親の愛ぐらいなもんだ……野生に生まれたお前にだってそれくらいは分かるだろう。』
『ゴルンガ?』
『なんだあ?その目は…助けて欲しいのか?今言っただろう……野生に慈愛なんて存在しない……とな。』
僕は我に返り立ち上がろうと試みる。
『うぐっ!?』
頭はボーゼンとフラフラし視界もボヤけ視点もぶれる。
身体には激痛が走り気を失いそうになる。
「イシメールさんっ!?」
「イシ………メール………さん。」
いつしか二人がスライムの身体に侵食され衣服は所々……破れ落ち身体には無数の傷跡が見える。
(シャルロットさん……そしてフェリシモちゃん…そんなにボロボロになって……待ってて…僕が今。)
「クククッ……そんな身体で起き上がったところでそんなにボロボロじゃねえか……しかも人質代わりのエルフは俺の手の中だ。」
「くっ…………許さ…ない…許さないぞ。」
そう言ったのはペドロだった。
「フン……生意気な……まあいい……ボロボロの身体……ボロボロの精神でどうこの俺と戦うというのだ……さあこい……きてみやがれ!!!」
ペドロは拳を構えると。
ダンっと蹴り出し僕に殴りかかってくる。
その時。
僕の身体はザッと宙を舞い……そして着地していた。
「なっ!?」
驚きの表情をし空をきった拳を見つめるペドロ。
僕の身体は獣人と化していた。
「な……なんだ……その……金色の毛色は。」
「えっ!?」
ぺドロの声に僕は腕に目を向けると確かにこれまでの漆黒の毛色から金色の毛色へと変わっていたんだ。
すると、脳裏に聞こえるゴルンガの声。
『ほう……金色のゴリラ………やはりお前は…その力を与えられ育ってきたのか……』
意味深な話をしてくるゴルンガ。
『ゴルンガ……なんだよ、それ?』
『フン……いつか分かる……さ……さあ戦え……お前は野生の力を少しは覚醒したハズだ。』
そう言い残し脳裏から消えていったゴルンガ。
そして僕は我に返る。
槍をとり構える僕。
「なにっ!?動けるのか!?」
「ああ…動ける……みたいだな……」
僕の身体からあれほど酷かった痛みが嘘の様に消えている。
「これは?」
『自然治癒力……イシメール……お前は医師でもある…いわば仲間の身体を癒し治癒できるのはお前の力だ…だがお前自信が倒れたら仲間は全滅だ…そう意識の中にあったお前の思いがどうやらこの能力を開花させたらしいな。』
ゴルンガの言葉に我に返る僕。
そしてそれは僕の新たな力を生み出した。
「いくぞ!!ぺドロ!!??」
槍を構え飛び出した僕。
「はああああああーーーーーーーーーーーっ!?」
「くっ!?このガキ…獣人の力も覚醒したか!?」
僕の猛攻撃を躱していくぺドロ。
そして僕はいつの間にかシャルロットさんそしてフェリシモちゃん元に立ち尽くしていた。
「二人とも。」
ズシャーーーッっと僕の槍はアシットスライムを切り刻む。
「イシメールさん!?」
「ありがとうイシメールさん!?」
僕に抱きつくフェリシモちゃん。
「もう大丈夫……そして。」
僕の金色の身体から発する光。
「シャイン・ア・ライト」
僕の光に包まれていく二人。
すると。
「えっ!?ええっ!?」
「これは……イシメールさん。」
二人の傷が見る見るうちに回復していく。
そして二人は元気を取り戻す。
「さあ!!イシメールさんに救われた。」
「うん!!イシメールさんの代わりは私達なんだから!!」
僕はそっと二人の前に立つ。
「ここは僕が。」
金色のゴリラの僕はぺドロの前に立つ。
「いくぞ!!ラストだ!!ぺドロ!!!」
「獣人力……解放。」
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