ブラズール世界編シーン35
フェリシモ視点
「これは!?」
気がつくと私の鞭が光を放っていた。
すると私の脳内にフェリーヌちゃんの声が聞こえてくる。
『フェリ…シモ……ちゃん。』
「その声はフェリーヌちゃん!?」
『そうだよ……私を必死に助けようとしてくれてありがとう。』
「ううん…私マジェストでもないから結局役に立たなくて……ごめんね。」
『そんな事ないよ…フェリシモちゃんはとても強い子だよ…私をその身を呈して守ろうとしてくれて…勇気あるフェリシモちゃんに私心惹かれちゃった。』
「フェリーヌちゃん……私…。」
『わかってる……私魔神化したら今までのように自由に動いたり話せたりできるかも分かってないの……』
「フェリーヌちゃん……それならそんなのやだよ……私そこまでして強くなれなくてもいい……私フェリーヌちゃんには自由に生きてほしいもん。」
『フェリシモちゃん……でも…あの敵は……強いよ?』
「うん……そうね……私で勝てるか分からないけど…でも私…イシメールさんの役にもたちたいんだ。」
『えっ!?それって?』
その時。
「くらえーーーーーーーーーーーっ!?」
ガキイイイイインッ!!と武器の衝突音で我に返った私。
私の目の前には盾になり守ってくれていたイシメールさんの姿があったの。
「イシメールさんっ!!???」
「ぐうっ!?」
そこに居たのは血を流しながらも私の盾になってくれていたイシメールさんがいたの。
ガキっ!?バキッ!?とイシメールさんを攻撃する敵の攻撃。
「ククク……貴様……さすが獣人だけあって身体だけは丈夫なようだな。」
「僕は……必ずフェリシモちゃんを守るんだ……彼女を苦しめる奴なんかに負けるもんか!!」
「口だけは達者なようだなあ……ならば……守ったまま死ねーーーーーーーーーーっ!!??」
「イシメールさあーーーーーーーーーん!?」
私は……叫んでいた。
次の瞬間。
私の鞭が光りだす。
◇
この鞭は私がエルフィーナ様の近衛として選ばれた時にお祝いとして姉さんにいただいたものだった。
あれは数百年前の事。
◇
「フェリシモ……本当におめでとう」
そういったのはフェリシモの実の姉…『セルクル』だった。
代々エルフィーナ様初め先代の王はこのフェリシモの家系からも近衛兵として声をかけてきたのである。
セルクルもまたエルフィーナ様の近衛兵としてその力をふるってきた近衛兵だった。
「姉さん…ありがとう。」
セルクルもその美貌はあのエルフィーナ様にも負けず劣らずという美しさ…そして強かった。
そんな姉に憧れたフェリシモは人一倍努力をしようやく近衛兵として選ばれたのだ。
エルフの寿命といえば通常平均二千五百歳位とこの世界では言われている。
だがエルフにも病というものも存在したのだ。
エルフにとっても珍しい数万人に一人がかかると言われる不治の病…セルクルは活躍も程なくその病によって病床に伏せたのである。
「フェリシモ……貴女は私と違って身体は元気なんだから…きっと貴女なら大丈夫。」
「姉さん…でも私……姉さんのようにマジェストにはなれてないの…私……。」
「フェリシモならきっと私を越えるマジェストに……立派な騎士に…なれるわ。」
「姉さん。」
セルクル姉さんは既に力も弱々しくなっていたはずなのにそれでも私には力強く感じたの。
力強く…でも優しく抱きしめてくれた姉さん。
私は姉さんの肩身のこの『ローズウィップ』をずっと愛用してる。
◇
フェリシモの身体に力が漲る。
「私!!強くなるから!!姉さん……そしてイシメールさんっ!!」
私の涙は溢れ出していた。
すると聞こえてきたのはフェリーヌちゃんの声。
『フフフ……ようやくその気になってくれたね!大丈夫!私と強くなろうよ!大切な人を守る為に。』
私の身体から発せられた力は鞭へと伝わっていく。
そして鞭から……何かが飛び出したんだ。
◇
キラリン!!っと光る何者か!?
それは真っ白のウサギだったんだ。
「えっ!?これが………私の…………」
「魔神!?」
すると脳内に声が届く。
『ひゃふぅぅぅーーーーーーーーっ!?』
「えっ!?」
そいつは鞭を構え持ったウサギ。
だがそれだけではなかったの。
貴族の服に身を包みシルクハットを被り片眼鏡をかけたウサギ。
この子が私の魔神なの!?
すると魔神は口を開く。
『ふぅぅーーーーーーーーーっ!?きたきたーーーーーーーーーーっ!?』
そう言い放った声は私が聞き覚えのある声だった。
「あっ!?貴女は!?」
『ふふんっ!姿形は変わったけど安心してフェリシモちゃん!!』
「やっぱり!!フェリーヌちゃん!?」
するとフェリーヌちゃん…もとい兎さんはシルクハットを脱ぎ捨てる。
そして叫ぶ。
『魔神!!フェリーヌ爆誕!!!!!』
◇
◇
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