ブラズール世界編シーン34
イシメール視点
僕達の前に現れた魔王軍アールロー、ペドロ。
それは武闘派なのだろう。
ゴツゴツとしたその肉体は恐るべきものだった。
「くっ!?こいつは………………イシメール君……」
「うん……何かもの凄い圧を感じるよ。」
エンポリオ君の言葉に僕も奴の力をビリビリと実感する。
するとペドロが服を脱ぎ捨て僕達の前に立ち尽くしていたんだ。
男はここにいる誰よりも大きく身長はゆうに三メートルはあるだろうか。
そこに存在するだけで圧倒的な威圧感を放つ大男。
僕も大きい方ではあるけど今の僕よりも大きな姿。
こいつは只者ではないただならぬ魔力を感じる。
ヅカヅカと入ってくるその男。
すると。
しゅるしゅると神樹の根が履いながらペドロを拘束しようと伸びていく。
ガシッとペドロの身体に巻きついていく神樹の根。
「ん!?なんだこれは?」
「おおっ!?凄いな!?あれが神樹の力……これまでエルフ達を防衛してきた鉄壁の守りなんだね。」
するとペドロはニヤリと微笑む。
「うおおおおおーーーーーーーーーーっ!?」
突然ペドロは気を放つ。
凄まじいその気は辺りに放たれる!!
やがて……やつを捕らえていた木枝がボロボロに風化して崩れていく。
その時。
エンポリオ君の気配が突然消えていたんだ。
「ん?エンポリオ君!?」
ニヤリと笑みを浮かべるペドロ。
「クククッ…でかいヤツは我が主がとある場所に送ってやった…貴様は自分の心配だけしてろ。」
「なにっ!?」
突然消えたエンポリオ君。
そして。
「くっ!?ブラズール王……不気味過ぎる力だわ…でも、この神樹内には…貴方は相応しくない……そうそうに立ち去るがよい……んっ!?」
その時……エルフィーナ様……そして神樹の動きが停止する。
「エルフィーナ様!?どうなさいました!?」
フェリシモちゃんが問いかける。
すると。
ペドロが口を開く。
「ああ……そうだ……これなんだと思う?」
ペドロはそう言うと……何かをつまみながら見せてくる。
それは。
小さな……人型の何か。
「「フェリーヌちゃん!?」」
あの時から、しばらく姿を見せてはいなかった妖精の彼女は、どうやら奴に囚われていたようだ。
すると…苦しげにフェリーヌは口を開く。
「あ…ちゃあ…また……捕まっちゃってたの……あの時は……助けてもらったのに……あんた達、ごめんね。」
「くっ!?きたないぞ!?お前も男なら僕が相手になってやる!!さあ!!その子を離すんだ!?」
僕はペドロにそう言い放つ。
「獅子搏兎……聞いた事があるか?」
「何が言いたい?」
「獅子は兎相手だろうがその手を抜く事はない…つまり……どんな手を使おうが…貴様らを全滅させる為ならば…俺が一切手を抜かん……そう言う事だ。」
ペドロは確かに強いのだろう…でも、こんなやり方。
僕は手に思わず力が入る。
すると僕の手を握って笑顔を見せるフェリシモちゃん。
「ここは私が。」
すると彼女もまた自身の槍を手に構える。
「ペドロって言ったわね……貴方のような卑怯なてしか使えない敵になんて私は負けないわ。」
「なんだと……?」
「私はね……こう見えてもエルフィーナ様の近衛兵の一人……皆のようにマジェストの力はなかった…でも強くなる為に努力はしてきたわ…」
そう言葉にしたフェリシモちゃんは槍をペドロに向ける。
「私の槍を受けてみなさい!!」
フェリシモちゃんの叫び声に呼応する素早い攻撃。
ガキインっと音を立て彼女の槍がペドロと衝突する。
ギギギとフェリシモちゃんの体重を乗せた槍技が奴に炸裂する。
すると……それは……残念ながら止まってしまう。
「えっ!?そんな……。」
「ククク……お前自分の力でこの俺にかなうとでも…思ってるのか?」
急激にペドロの身体が筋肉の塊のように変化する。
そしてペドロの右腕に筋肉が集中し恐るべき力が漲る。
バチバチというエネルギー。
それを見ていた誰しもが震える程。
それはフェリシモちゃんの身体に目掛け拳を振り上げる。
「フェリシモちゃん!?」
「えっ!?」
「いやあああーーーーーーーーーーーっ!?」
僕の右腕がやっとの距離で届く。
だが奴はそれを。
「あまいわーーーーーーーー!!!」
「ぐっ!?フェリシモちゃん!?」
「イシメールさんっ!?」
その時。
ぱーーーーーーっっっっと飛び回る何者か!?
超高速のその動きに動きを止めたぺドロ。
「なんだ!?くっ!?邪魔をするな!!???」
すると聞こえた何者かの声。
『ねえ……君……フェリシモちゃんかあ。』
「えっ!?誰?」
「君は私を本気で助けようとしてくれた……ドジで折角助けてもらったのに捕まっちゃってまた迷惑かけたのにこうして……私は。」
「そんな事ないよ……私もマジェストになれなくて強くなくて…皆の足でまといに……」
僕はその声に。
「そんな事ないよ!!フェリシモちゃんは頑張ってた!!僕は見てた!!」
「イシメールさん……ありがとう。」
フェリシモちゃんの目からは涙が。
その時。
「私と同じとこあるんだねえ…ねえ……私貴女と一緒に……戦うよ。」
フェリーヌの声。
そして。
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