ブラズール世界編シーン33
イシメール視点。
僕達は今エルフの大樹の中にいた。
シャルロットさん…そしてフェリシモちゃんは僕達の前をいく。
エルフの大樹とは凄いもので僕達はその光景に驚きを隠せなかった。
その老木があちらこちらに、はい尽くしているそれは正に木の迷宮。
今は正に大木の城といった神樹の内部だったのだ。
だが。
「これは………神樹の防衛本能でここまで内部迷宮が凄い事になってるなんて。」
シャルロットさんが内部の枝々をかき分けながら前に進む。
すると後に続くフェリシモちゃんも。
「シャルロット様…神樹がここまでの迷宮を作り上げるなんて…確かに私はあの時フェリーヌ様から逃がしてもらいましたけどあの時はまだここまで酷くはなっていませんでした。」
「フェリシモちゃん!そうだったの?」
「はい…この私達エルフが暮らす神樹は太古から存在するのです……そして精霊と大地の力で遙か昔から共存共栄してきた神樹は私達にとってとても大切なものなのです…ですから私達を守るようにも動いてくれて…こうして外的からの力からも守っていてくださるのです。」
「そうなんだね…それで魔族の攻撃を食い止める為にここまで凄い防壁のようになってしまったんだね?」
「そうですね……過去にはあの世界の勇者様VS魔王の戦いの時が一番凄くて……でもその時もこの神樹様がなかったら私達も…精霊の全てもいなくなったかも知れませんでした…世界ではそれほど激しい戦いが起こったのです。」
フェリシモちゃんが続ける。
「ですが魔王が討伐された以降神樹様は落ち着き……そして今まではここまでの迷宮にはなってなかったのです……ですが……きっと私達が襲われた時……神樹はここまでの迷宮になってしまったのでしょう。」
するとシャルロットさんが聞き返す。
「そういう事だったのね…でも逆に言うとエルフィーナ様は無事なのかもしれないわね?」
「はい……私もそれだけを願ってます。」
そして僕達は会話をしつつも神樹内部へと足を進める。
その時。
「えっ!?」
フェリシモちゃんは足を止める。
「聞こえた………エルフィーナ様!?」
フェリシモちゃんの声。
そしてその瞬間……シャルロットさんがかけ出す。
僕達も彼女の背中を追う。
そして。
一つの部屋へと辿り着いたんだ。
◇
しゅーっと枝がルートをあけていき飛び込んだ部屋。
「エルフィーナ様!?」
そこには。
神樹に絡みつかれ力なく、ぐったりとしているエルフィーナ様がいたんだ。
「エルフィーナ様!?」
シャルロットさんはエルフィーナ様に駆け寄っていく。
するとエルフィーナ様は僕達に気が付きゆっくりと口を開いていく。
「シャル……ロット………フェリ……シモ……来てくれたのね……あり……がとう。」
「エルフィーナ様……」
「私達ようやく戻って来れました!!もう安心してください。」
二人もエルフィーナ様にそう声をかける。
エルフィーナ様は二人の声にニコりと微笑む。
「そう……ね……でも……ちょっと……今回は力を使いすぎたわね……この私達の神樹様は…そう……あなた達マジェストで言えば……魔神具のようなもの……この防壁には私の魔神の力を重ねてるのです。」
「そんな………。」
「エルフィーナ様。」
「そんな顔しないで……これは……この私達エルフにとって大切な神樹……私のこの身をかけて守ります…そしてもちろん…私の大切な皆もね。」
エルフィーナ様はそういうとガクッと力なく身体をぶら下げてしまう。
「エルフィーナ様!?」
「待って……今僕が!?」
僕が近づこうとしたその時。
僕達の目の前に突然姿を現した何者か。
禍々しい力を持つその影は。
『ククク…………ふぅ…………やっとだ……やっとここまで入ってこれたなあ。』
「何者!?」
「お前は誰だ!?」
怪しい魔力を携えそしてこれまでの敵より何かを感じるこの男。
僕もこの力に先程まで戦ってきた敵と同様……それ以上の何かを感じる。
すると男は口を開く。
『俺は魔王軍…アールロー…武拳軍…ペドロ。』
マントを脱ぎ捨てその肉体を晒し出したのは魔王軍の僕達が倒した奴らの仲間なのだろう。
「くっ!?こいつ!?」
魔王軍アールロー……そう、僕達の前に現れ倒した、あの魔王軍のデットビー……アイツと同等の力をもつ敵である事には違いないんだ。
すると。
『ククク……さあ……エルフの隠れ家にやっと入ってこれたからなあ…やっと暴れられるってもんだなあ。』
そういうと。
拳を握るペドロ。
僕は槍を手に携える。
「ここは神聖な森の特別な場所……君達が勝手に土足で入り込んでいい場所じゃないんだ……僕が相手だ!!!」
◇
◇
◇
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