ブラズール世界編シーン32
サキノ視点
クロノは私達の目の前で苦しみ始める。
「クロノ!?」
「クロノさんっ!?」
私達は苦しむクロノを支える。
するとそれを見ていたドワーフ王が口を開く。
「これは……早急な対処が必要なようだ…。」
「えっ!?王様!?それって?」
「どういう事ですか?」
私とテンテンちゃんはドワーフ王に問いかける。
するとドワーフ王は重々しく口を開く。
「ああ……この男は、マジェストだった……そして今その魔神具を失い…魔神が離れたのだ…これがどういう事か分かるか?」
私達はドワーフ王のその言葉に声も出なくなっていた。
するとドワーフ王は続ける。
「そう……本来なら魔神が消えればその代償は……マジェスト自身の『死』だ。」
「えっ!?」
「死?って!?そんな……いや!!いやです!!」
私の声に被せたのはテンテンちゃんだった。
「まてまて……小僧の様子を見ていると、今すぐって訳では無い……だがここまで来たら直ぐにでも対処せねばならない。」
苦しむクロノを目にしながらも私も何も出来ない。
クロノをどれだけ抱きしめてもさすっても彼は苦しみから癒されない。
「クロノさんっ!?私…会ったばかりだけどこんなに…こんなに苦しいの嫌だよ。」
涙を流しクロノにしがみつくテンテンちゃん。
私だって……力無くクロノを抱きしめる事しか出来なかった。
「ううっ!?がはっ!?」
突然苦しみが強まるクロノ。
すると。
突然クロノの背後から光が溢れてくる。
そこから神々しい何かが登場する。
それが見覚えのある動物の姿。
そしてそれは私達が知るあの子だったの。
『サキノちゃん……テンテンちゃん………。』
それは……クロノの魔神具が消滅した、あの時から姿を消していたヘキサちゃんの姿だった。
「ヘキサ……ちゃん?」
光り輝くヘキサちゃん。
そして彼女がゆっくり口を開く。
「さっき……ドワーフ王が話した通りなんだけど……今のお兄さんの状態を私が話すね?」
私達は頷き話を聞く事にした。
◇
お兄さんは強くなりすぎた……そう……お兄さん自身の爆発的な力は僕達と出会った時に開花したの…そしてチェンウォンのあの戦いで魔神である雷武ちゃんの力が覚醒した……そう…二人は世界でも恐ろしい程の力を手にしてしましたの。
マジェストの力はマジェスト自身の力…そして魔神の力……残るは肝心な魔神具の力……その三種の力が揃って初めて最強の力を手にする事ができるんのだよ。
それがお兄さんの魔神具が力の均衡がとれなくなり壊れてしまった理由。
そしてその反動でお兄さんは………。
僕はそれに気づいてからお兄さんの身体の状態をなんとか悪化させないようにずっとお兄さんの中で力を調和するように動いてたんだけど…。
◇
「この魔族の力の蔓延るここブラズールは、彼の身体…そして魔神雷武の力もおかしくなるんだろうな?」
そう言ったのはドワーフ王だった。
すると、ヘキサちゃんは言葉を続ける。
「そうなの……今のクロノにとってはこの魔族の力が色濃く存在する場所は生命とりって事……そして僕の力もどんどん跳ね返されてしまっているの……このままじゃ。」
見た目にも以前とくらべやつれ、辛そうなヘキサちゃん。
その時。
ドワーフ王が口を開く。
「ふぅ……この男……これほどここの女性達に思われてるとは……余程魅力のある男なのだろうな。」
その言葉に返したのはテンテンちゃんだった。
それに返したのはヘキサちゃん。
「もちろんです!私の未来の旦那様ですもの。」
「えっ!?また言ってる!僕のお兄さんだってば!!」
するとドワーフ王は笑い出す。
「はっはっは!!こんなに思われてるとは…ん?君もそうなんだろ?」
私にそう聞いてくるドワーフ王。
私の目から涙が溢れてくる。
「はい………クロノが大切なんです………。」
ニコリと笑みを見せるドワーフ王。
そして。
ガガガとヘッドホンから聞こえてきたのは。
『ねえ!クロノ君!君はここで終わりじゃないわ!私達が直ぐにそこにいくから待ってるのよ!?』
そう…それはアメリスアードのシェリルさんの声!!
「クロノ!?俺も気合い入れにいくぞ!あっ!?レイド!?てめえ!まだ話してる…」
「僕の番だよジェイク!僕も直ぐに飛んでいくから!待ってて!クロノ君!!」
そう、アメリスアードの皆も、クロノのピンチに。
「テンテン!みずくさいぞ!?僕達チェンウォン協会もクロノ君の為なら。」
「お兄ちゃん!?」
「そうだよ!僕もリーファもいくぞ!?」
そして。
「マリアさん!?早くいかないと!?」
「ええ!クロノ君には借りが……」
「もう……そんな事言って……あ!麒麟ちゃん!?」
「あにい!!元気だせええ!!」
そう、ヨーロディアの皆も。
すると。
「さあ、アキニー様……」
「ええ……ケニージアマジェスト協会……もとい…現マジェスト協会のリーダーとして……皆に……これより……魔神雷武……そしてマジェストである勇者クロノを保護し……そして彼らを救う事を全マジェストに命じます。」
「「おおおおおおーーーーーーーーーっ。」」
そしてマジェストだけじゃなかった。
「もちろん俺たちクロノリスナーもいるぜ!?」
「そうそう!こんなに熱いライブ配信してくれる配信者クロノ!!」
「私達も応援してるからね!クロノ!?」
◇
ねえクロノ…聞こえてる?…皆……皆……クロノが大好きなんだよ。
クロノの表情は落ち着き…その目からは涙が零れた。
私は………涙が止まらなかったの。
◇
そしてドワーフ王が立ち上がったんだ。
◇
◇
◇
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