ブラズール世界編シーン29
ここはブラズール城。
その居城は古く魔王ゼルドリスが存在していた城だった。
今その玉座に座るのは…現ブラズールを支配しているブラズール王『ラファエル』である。
ブラズール王が手を差しだすとそこにグラスが添えられそこへなにかの飲料が注がれる。
そして王はグラスの中の液体を見つめると口に添え一気に飲み干していく。
「んぐっんぐっ……ぷはああーーーっ。」
「ラファエル様……こちらは先日捉えた若きヒューマン女子の生き血……お口に合いましたでしょうか?」
「ああ…これで我が身もまた若返るというものだな。」
『ラファエル』はニヤリと笑みを浮かべる。
この男はブラズール王。
今ゆったりと食事を楽しんでる最中だった。
するとそこへ一人の兵士がよろよろと現れる。
「王……よ………。」
「ん!?どうしたのだ?」
ブラズール王は兵士を見やる。
その狂気の表情に傷つきながらも辿り着いた兵士は彼の狂気じみた表情に震え出す。
ブラズール王は兵士の首を掴む。
「うぐっ!!??」
「この俺様の飯の邪魔をしてくるとはなあ」
「『ラファエル』様…………し……失礼しました。」
兵士は顔から脂汗をたらしながらすかさず謝罪する。
「それで?何事だあ?もうエルフ共と…ドワーフ達を滅ぼしてきたという報告かあ?でもそれであれば『テッドビー』と『スペシメンゲルド』が直接報告に来るのが早いと思うのだがなあ。」
ブラズール王の言葉に恐怖しか感じない兵士。
すると思いついたかのように『ラファエル』は告げる。
「そういえば…エルフィーナはどうした?あのエルフの美貌は我が妻として相応しいのでな……それと…あの忌々しいドワーフ王の首だ…どこなんだ??」
ブラズール王の前にいるのは只の生き残りの一介の兵士だ。
そんな彼はブラズール王の脅威に怯え震える。
ここまでくると声を上げようにも恐怖に声も出ないのだ。
「こちらへ。」
ブラズール王は兵士に手招きする。
恐る恐る近づいていく兵士。
そして王の目の前に立ち尽くす兵士。
にこーーーーーっと気味の悪い笑顔を見せるブラズール王。
次の瞬間。
兵士の頭を巨大な何かが抑え込む。
怯える兵士。
そして。
「ぐふふふふ…………」
「あ……ああ………………。」
ブラズール王はとある魔神具を取り出す。
禍々しい力を帯びたその武具は巨大な大砲がギギギと見える。
巨大にぼやけて見えるのはまるで近代兵器である戦車………。
「そん……な…………。」
涙を流す兵士。
そして。
「うぎゃーーーーーーーーーーーーーー!?」
兵士の断末魔の声だけが……響いたのだった。
ブラズール王は口を拭う。
「ふぅ……飯が不味くなるじゃねえか。」
すると。
ザザザっと現れたのは二人の影。
「きたか??」
「はっ…………ラファエル様。」
「私達……アールローの二人におまかせを。」
「ふぅ……テッドビーもスペシメンゲルドもエルフとドワーフ王国の壊滅を頼んだのだが……二人とも精霊どもに油断したのだろうな……失敗したようでな。」
「そういう事でしたか……ならば私達にお任せくださいませ。」
そう言ったのは魔族なのだろうが獣人の女性だった。
そしてもう一人はこちらもまた魔族……そして恐ろしい程の肉体を持つ巨大な男だった。
「アイツら……我が王ブラズール王の期待を裏切るとは…恥を晒しおって。」
するとブラズール王が口を開く。
「まあよい……消えた約立たずなどもはやどうでもいい……だが、少し奴ら精霊達になにかの大きな力が働いたのであればこれは我々も構えて策を練らねばならんだろう。」
「ラファエル様。」
「ならば奴らのその大きな力という正体を調べなければならぬな。」
するとブラズール王は告げる。
「ラウラ」
「はい」
「ペドロ」
「はっ、ラファエル様。」
「いいか?ドワーフ王はこのブラズール王に長い事反発してきた……そしてエルフの女王は俺様になびくことなく未だに平然と暮らしてきた……我が魔王ゼルドリス様よりこの地を任されてきたこの我に屈せず生きてきた事…今こそ絶望を見せてくれる…これはその為の奇襲だ…我々魔王軍の恐ろしさを身をもって知るべきだ。」
我は立ち上がると玉座の間から見える窓へと歩いていく。
この窓の眼下には我が兵達はこの奇襲の策の為に集められた魔王軍なのだ。
我が足は大きな窓の元に辿り着いた。
兵士がギギギと大窓を開いていく。
空には暗雲が遠くまでかかっている。
そして遥か向こうにはあのエルフの神樹が空に向かい伸びている。
目指すはあの大樹なのだ。
「全軍に継ぐ!!!」
「これより兵を招集し……今度こそエルフ……そしてドワーフ共の制圧に向かうのだ。」
「「はっ!!お任せを!!」」
大きな歓声に包まれたかつての魔王城。
ここから、敵の圧倒的な戦力は……。
◇
◇
◇
恐るべき戦いの狼煙が立ち上がったのだ。
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