ブラズール世界編シーン27
サキノ視点
ブラズール王が語った魔王軍の動き。
それは精霊達もヒューマンもこの地ブラズールをまた完全な魔界にしようとしている魔王軍の動きだった。
「良いか…魔王軍はエルフの大樹を狙いそして…この地にまで侵略の手を打ってきた…それを阻止し…反撃の手を打ってブラズール王を討ち…事を成すのだ……まずはエルフと……」
その時。
私のヘッドホンに通信が入ってくる。
「ガガガ……ピーッ………サ……サキ……ノ…ちゃん!?」
「えっ!?サキノだよ!?エンポリオ君?」
「ああ…うん…僕エンポリオだよ?今僕達はようやくエルフの大樹に辿り着いたんだ。」
そう返してくれたエンポリオ君。
「これは!?」
ドワーフ王は私達の会話を聞き驚いていた。
私は王の問いに答える。
「これはヒューマンでありますエンポリオ君が作った通信ヘッドホンっていうものです…これを使うとこうして離れている仲間達と話すことも可能なんです。」
「ほぉ……これは凄いな!改めてヒューマンの知能の凄さを知れたぞ。」
王様はこれには驚いた様子で私も誇らしかった。
するとエンポリオ君は続ける。
「王よ…我々はこのエルフの神樹へと辿り着きましたが…実は大きな問題が発生していたのです……。」
急に神妙な話に切り替えしてきたエンポリオ君。
これには私達も固まってしまっていたの。
「王様…形的には救えた神樹です…だけど問題が。」
「それはなんだ?」
王様は恐る恐るエンポリオ君に問う。
「はい……実は。」
エンポリオ君は話を始める。
◇
僕達が辿り着くと神樹は防壁を張ってました。
お陰でこの神樹も守られたのですが……その代償は大きかった。
敵の圧倒的な力から守る為の力はなんと女王 エルフィーナ様のお力だったのです。
見ていた者の話ではエルフィーナ様は魔王軍の圧倒的な力を感じ神樹に防壁を張ったらしいのです。
神樹は生命への大いなる力を秘めている太古からの御神木ですが自身への護りまではそのお力ではどうにもならない事実。
それを太古から知り得ているエルフィーナ様は神樹…そしてエルフ達精霊の為に力を放ったのです。
だけれど魔王軍の力は絶大でした。
そしてエルフィーナ様は神樹を守ると共に…お力を使い果たし…………深い眠りへとおちていってしまったのです。
◇
「なんと……エルフィーナ…………。」
悔しげに唇をかみしめるドワーフ王。
「ドワーフ王………。」
「して……エルフィーナは?」
「はい……今は神樹に守られ神樹内で眠っておられます。」
「なんと……そうであったか。」
するとそこへ話に入ってきたのはシャルロットさんだった。
「ドワーフ王様……私です。」
「おお……エルフィーナの側近の…………」
「はい……『シャルロット』です……王よ……我が主君であるエルフィーナ様は力を消耗しすぎて眠ってます……ですがこんな時だからこそ魔王軍はきっと更なる何かで攻めてくる気がしてならないのです。」
「そうか……一緒の従者の様子はどうだ?」
「はい……お陰様でイシメールさんをつけていただいた事に感謝しております。」
「それはら良かった。」
「はい…我がエルフ王国が攻め込まれかけた時のダメージこそありましたが救われております。」
「そうか…それでは今後の我々精霊族の体制を建て直しブラズール王の猛威を食い止める手を打たねばならぬな。」
するとドワーフ王は考え始める。
難しい顔をしている王。
そして王はクロノの元へ歩み寄っていく。
「えっ!?王………様。」
「いいか?皆…聞いてくれ…この地を現在統治しているのは『ブラズール王』………その魔族の名は………『ベルゼブブ』魔王の元側近でな…あの魔王が封じられた後…同時に消え去ったハズなのだ…だが何が起こったのか…聞いた話では、魔王が残したと言われる、とある魔神具から産み落とされたかの様にこの地に誕生したらしい……その時からこの地には平和というものが訪れたのだが……それから残った魔族はまるで全てが消え去ったかのように何事もなかったのだ。その間我々精霊族は平和の時間を感じ…そしてここまで平和を過ごしてきたのだ…それが…ある時。」
真剣な表情のドワーフ王。
「奴……ブラズール王はその力を誇示するかのようにこのブラズールの天を闇に包んだ……それからはこの地の精霊族ヒューマン族を従わせていきた…奴に屈しなかったのはエルフィーナ……そしてこのドワーフ王国のみなのだ。」
ドワーフ王は続ける。
「魔王が復活した今……この世界を滅ぼすであるだろう……だが大昔あの勇者様が立ち上がってくださった…魔王とあのブラズール王の力に立ち向かう力を今この世界は必要としているのだ。」
私はクロノに目を向ける。
こんな大変な事に…。
今はあどけない顔をしているクロノを私は巻き込みたくなくて。
◇
◇
◇
お読み下さりありがとうございました。