ブラズール世界編シーン25
サキノ視点
テンテンちゃんの魔神スタッグビートルはパワーアップしたみたいだ。
「サキノちゃん……少し待ってて。」
テンテンちゃんはそういうと身構える。
ダンっと床を蹴り飛びかかるテンテンちゃん。
スペシメンゲルドは魔神具を構えると方天画戟の攻撃を退ける。
と……テンテンちゃんの猛攻に焦ったスペシメンゲルド。
ふと何かを落としてしまう。
「はっ!?んん??」
「私の筆!!???」
次の瞬間タンっとテンテンちゃんの足音が聞こえる。
そして。
「サキノちゃん!!???」
テンテンちゃんの声が聞こえると私の頭上から何かが光り落ちてくる。
「テンテンちゃん!?」
私はパシッと魔神具を受け取る。
「なにいいいーーーーーーーーーーっ!?」
スペシメンゲルドの驚きの声。
そして。
私はスペシメンゲルドの前に立ち構える。
「クククッ…魔神具まで取り戻すとはなあ…まあいい……お前達は我が力を見たであろう……貴様らはもう…………」
私の背後から飛び出したのはカラーウルフは スタっと四足で立ち構える。
そして隣りにはテンテンちゃんのヘラクレススタッグビートル。
「サキノちゃん。」
「テンテンちゃん……」
私達はスペシメンゲルドを見据える。
「もういい……さあ…我が魔神『ダークスペシメン』この女共を我が作品にしてしまうぞ。」
スペシメンゲルドの魔神は足元の沼からその姿の全てを晒し出してくる。
「サキノちゃん……いくよ!?」
「うん!テンテンちゃん。」
私達の魔神も背後に構える。
『スワンプキャプチャー』
ズズズと周囲一帯の足元が泥沼へと変化していく。
「サキノちゃん!?地面がやばいよ!?気をつけて!!」
「うん!テンテンちゃんも。」
「クククッ…どうだ……この沼に囚われたらなあ…」
奴はそういうと沼に何かを放り投げる。
それは一匹の何かだった。
次の瞬間沼にハマる何か。
ドプっともがきながらハマり這い上がれなくなったそれは。
そのまま…上がってくる事はなかった。
すると奴はニヤリと笑うと。
突然目の前に出てきたのは奴の魔神の標本から解放されたのか……一人のフェアリーだった。
「「妖精!?」」
「クククッ…そうだ……どうだ!?こいつもそこへ投げこめば…もう這い出てくる事は無いだろうなあ。」
「くっ!?」
「なんて酷い事を。」
私達の声に苦しげに顔を見せる妖精はぷるぷると震えている。
見たところ羽根もボロボロになっている。
「クククッ…どうだ…こいつも飛ぶ為の羽根をむしり取ってやった…このまま放り投げれば…沈む…だろうなああ。」
そうニヤつき言ったスペシメンゲルド。
私はずっとこの男が許せない気持ちでいっぱいだった。
今までも沢山の嫌な奴と会ってきた。
そして私はその怒りをもって成敗してきたんだ。
でも…どうにもならない相手にはクロノお兄ちゃんに助けてもらってきたの。
クロノがいてくれたらこんな奴倒してくれただろう…でも今は。
「クロノ………………」
「サキノちゃん?」
「テンテンちゃん……今は私達の大好きなクロノはいない……けど……」
「サキノちゃん……うん……そうだね…よぉし。」
私はカラーウルフに念じる。
『カラーウルフ……私……コイツが本当に許せないの……だから。』
私はカラーウルフに告げる。
そしてテンテンちゃんも……何かを魔神に伝えたのだろう。
私達は魔神具を放り投げる。
カランカランっと私達の魔神具が音を立てて転がる。
すると笑い出すスペシメンゲルド。
「あーーーーーっハッハッハ!!いいぞいいぞ!?よぉーーーーーーーく……分かってるじゃないかあ??」
そう、ニタニタと笑うスペシメンゲルド。
そしてあいつが近づいてくる。
私達は並び奴のくるのを待つ。
「クククッ……さあ俺のものに…………なれ。」
その時。
グサッ!!!
「な!?なんだ……………………これはーーーーーーーーーーーっ!?」
奴の背後から突き刺さった方天画戟。
震えるスペシメンゲルドは叫びおののく。
「私達はあなたを許さない……力のない人をここまで大切に考えないあなたは……絶対に許さない。」
「そう……そして私達は大切な人の為なら……強くなれるの……私達は。」
私達は空に叫ぶ。
「ヘラクレススタッグビートルブルー!!」
「カラーウルフ……レッド!!」
シューーーーーーーーっと、スタッグビートルから吐き出される烈風の冷気は奴の身体を凍らせていく。
そして奴の身体はピキピキッと音を立てて凍りついていく。
「ぐっ!?なんだこの冷気はーーーー??だがこれだけでは我を倒す事は……ん!?」
「これだけな訳ないじゃない!!私達は大切なクロノを守るの!!」
ゴウっと激しい火炎に包まれる私。
そして放つ。
「カラーウルフ!!レッドファイアーウルフ!!!」
爆炎の狼と化したカラーウルフがあいつの魔神……そして魔神具…を炎で焼き尽くしていく……すると残ったのはスペシメンゲルドの断末魔の叫びだったの。
「うぎゃーーーーーーーーーーーーーっ!?」
燃え消えゆく奴を背後に私達は笑顔で手をにぎりあったんだ。
◇
◇
◇
こうして私達はスペシメンゲルドを倒しお城の一角を守れたの。
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