ブラズール世界編シーン23
サキノ視点
私は急に現れた敵に自由を奪われ吊るされてしまったの。
そして襲い来る巨人。
その時。
スペシメンゲルドの声に魔神具を放るテンテンちゃん。
「サキノちゃんは……私が守る。」
「テンテンちゃん!?」
すると…テンテンちゃんは方天画戟を前に放り投げる。
カランカランっと転がる彼女の魔神具。
「これでいい?」
「ククク…よく分かってるじゃねえか。」
スペシメンゲルドのゲスい言葉。
そして奴はテンテンちゃんに近づいていく。
テンテンちゃんの目の前に立ち止まるスペシメンゲルド。
「ほほう……これは美しい…この女の整った容姿……。」
そう言ったスペシメンゲルド。
「我は今やアンデットの姿になってしまった…この姿になって…はや…数百年…我はある時気がついてしまった……。」
すると奴は話を続ける。
「永遠の生命……そう…我はその昔……標本師だったのだ。」
「……………」
「我は美しいものが好きだった…そして我は世の全ての美しいものへと執着する。」
◇
◇
◇
我が家は大昔から資産家でな……我は何不自由なく暮らしてきた…そして我は家でとある美術品を
見た……それはとても美しい………ヒューマンの女性の標本。
初めて見たそれは美しい女性がガラスに張り付けられ見事なまでの標本だった。
それは我の視線と心を掴み…そして離さなかった。
「これは………」
俺様は子供ながらにその目を奪われた事に打ち震える。
そう…俺はその美しい女性の標本に目が釘付けになったのだ。
◇
◇
◇
「ククク……我はそれからヒューマンの標本を作るようになった…より可憐で…より美しい…そんな標本を求めてきた…そして我は今……。」
スペシメンゲルドはニヤリと怪しい笑みを浮かべる。
「これまでで最高の素材……を手に入れようとしている……そして………。」
「えっ!?」
スペシメンゲルドは魔神具「ボーンソード」を手に構えている。
「我が魔神は美しい作品…標本を作る為の力を持つ魔神だ……そしてお前は我が作品に相応しい素材と認識したのだ……出てよ。」
ヴーーーーーーーーーーンっと何かの光りがスペシメンゲルドの魔神具から溢れ出ていく。
そしてそれはテンテンちゃんの背後に黒いモヤを発生させる。
すると。
ドウっと発したモヤがテンテンちゃんの背後をとる。
その時。
ドシューーーーーーーーーっと放たれる何か。
するとテンテンちゃんの魔神が魔神具から飛び出す!!
『スタッグビートル!?』
「クククッ……出たな…………」
するとテンテンちゃんの意識とは関係なくスペシメンゲルドに向かい急降下してくる。
その強力なハサミをガシャガシャと鳴らしながら襲いかかるスタッグビートル。
それは主人であるテンテンちゃんを救おうとする魔神自身の攻撃なのだろう。
だけどその行動をまるで予測していたかのように笑い出すスペシメンゲルド。
すると奴はその魔神具を顕にする。
「クククッ…飛んで火に入る夏の虫とはお前の魔神の事だった様だなあ…ダークスペシメン。」
「えっ!?」
奴は魔神具を構えている…徐々に魔神具から流れ出てくる黒い霧。
私の中で嫌な予感が高まる。
「テンテンちゃん!?ダメ……」
「サキノ…ちゃん??」
私の声に気づいたテンテンちゃんがその場を離れようと動き出したその時。
「ううっ!?」
その場で動けなくなった様なテンテンちゃん。
「これ……………は?動け………ない。」
まるで固まったかのように動けないテンテンちゃん。
そして背後では。
「スタッグビートル!?」
いつの間にか黒霧から出てし奴の魔神であろう『ダークスペシメン』に張り付けにされ動けなくなっていたテンテンちゃんの魔神スタッグビートル。
するとスペシメンゲルドは不気味な笑みを浮かべ笑い出す。
「クククッ!あーーーーっはっは!!いいねえ……実にいい……我が力によって動きを止められた気分はどうだ!?」
「くっ!?なにを……今に私の力で。」
「ほお?威勢だけはいいが…今お前はまさに籠の鳥……このまま我が魔神の力で我が作品の最高の素材となるのだ。」
そう言い放つスペシメンゲルド。
その時。
「いや……いやよ……………。」
テンテンちゃんはそう呟くとその目から大粒の涙が零れる。
「クククッ…いいねえその涙も実に美しいではないか…そうやって恐怖と絶望の表情に俺様は興奮が治まらない…そうだ…お前のその小さくも美しい全てを我に差し出すのだ…それが……我が最高傑作を産むのだーーーーーーーーーー!!」
その時。
私の中で何かのスイッチがカチリと入った瞬間だったの。
すると…テンテンちゃんにもらった『ブローチ』が光る。
(これは……………………?)
身体が熱く燃えたぎる。
私は。
わたしは。
『ウオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!』
◇
◇
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お読み下さりありがとうございました。