ブラズール世界編シーン21
サキノ視点
イシメール君とエンポリオ君はエルフ王国へと旅立ったの。
そしてここ……ドワーフ王国にクロノと一緒に残ったのは私とテンテンちゃん、そして今は姿を消しているヘキサちゃん。
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コンコンッ…………っと私の借りてる部屋の扉のノック音。
「サキノちゃん……いる?」
「はあい……どうぞ〜」
ガチャりと開いた扉から出てきたのはテンテンちゃんだった。
「クロノさん……大丈夫?」
「うん………寝ちゃったみたい…。」
私達の視線の先にはクロノが寝ている。
すやすやと寝息を立てて気持ち良さそうに寝ているクロノ。
そんなクロノを私達は見つめていた。
するとテンテンちゃんは口を開く。
「私ね……両親がなくなってから…兄はずっといてくれたしお城の皆も自分に良くしてくれたの…だから寂しさはほとんど感じずに来れたんだけどさ…やっぱりどこか寂しさを感じる事もあったの。」
テンテンちゃんが過去を話し始めたの。
私は彼女の顔を見ながら話に耳を傾ける。
「元々好奇心旺盛だった私は寂しさを紛らわす意味もあって…お兄ちゃんに頼み込んで武術を習う事にして…そして魔神具に出会ってマジェストになれたの…その後…稽古をつけてもらって武術大会にも参加して…普通は女の子に生まれたんだから恋とか恋愛に興味を持つんだろうけど…興味が全然わかなかったんだよねえ。」
笑いながらそういうテンテンちゃん。
そして彼女は言葉を続ける。
「私ね…あの大会にサキノちゃん達と参加してマジェストの本当の強さを知ったんだあ。」
「そうなの!?」
「うん……確かに私も武術大会に出たり強さを求めたりしたわ…でもね…やっぱり…私は女の子なんだなって……前の大会で朝明さんとの決勝戦で思い知らされたの……その時……それまで負けた事がなかった私にとって初めての敗北だったの…本気で悔しいって思ったの……その時朝明さんに言われた言葉が……」
◇
『マジェストならば女子であろうが最強になれるのだぞ?己を磨け…自分自身の心を強くするのだ。』と。
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「それからの私は自分の心を強くする事に力を注いできたの……でもね…あの大会で見たのが……クロノさんだったの。」
私はテンテンちゃんの顔を見つめる。
「テンテンちゃん。」
「あはは……サキノちゃんがクロノさんが大好きだって事は見ていれば分かるよ…でもね…私…クロノさんを見て…初めて人に恋してしまったの。」
「テンテンちゃん……そうなんだね?」
「うん……確かにサキノちゃんはクロノさんとずっと一緒に旅してきたんだろうけどさ…私だって…私だってクロノさんを好きだって事は誰にも負けたくないの。」
そう言ったテンテンちゃんの表情は強いものだった。
「じゃあ…私達はライバルだね!?」
「そうだね……サキノちゃん!私も負けないよ。」
私達は笑いあった。
ここで寝ているクロノのに恋する私達はライバルでもあり素敵な友人なんだ。
「私達…いいお友達になれそうだね!」
「うん!これからもよろしくねサキノちゃん!あ……そうだ……これあげる。」
そう言ったテンテンちゃんは何かを取り出し て見せる。
それは一つのブローチだった。
「これは?」
「私達の親友でありライバルの証だよ!実はね……ほら!!」
そう言ったテンテンちゃんの胸についていたのは私にくれたお揃いのブローチだったの。
「あーーーっ!?本当だあ!お揃いのブローチ……かあ。」
「そうだよサキノちゃん!私同じくらいの年齢のお友達ってサキノちゃんが初めての子だからさあ」
そう寂しげに言ったテンテンちゃん。
その姿を見て…そしてそう言ってくれたテンテンちゃんの気持ちが私も凄く嬉しくて。
私はブローチを手に取り受け取る。
そして胸につけたそのブローチは可愛いハート型のピンクのブローチ。
「ありがとうテンテンちゃん!!」
「うんっ!!」
私達はにこりと笑顔をかわす。
その時。
いきなり城内が騒がしくなる。
「敵襲ーーーーーーー敵襲ーーーーーー!!」
私達は顔を見合わせる。
まだクロノは眠ったままだ。
「サキノちゃん!?いくよ!?」
「うん!!行こう!テンテンちゃん!?」
私達はクロノを見てふぅーーーっと息を吐く。
だっと部屋を飛び出しまずは王の間へといくが誰もいなかった。
そして気配を探ると禍々しい魔力を城門方向に感じる。
「向こうみたいだね!?」
「うん!!??お城の城門だね!?」
私達は踵を返し城門へと向かう。
だが城門はガンっと強固に閉まっていて中から開けるのは厳しかったの。
「上から行こう!?」
「うん!!」
私達はお城の階段を駆け上がったんだ。
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