ブラズール世界編シーン13
サキノ視点。
兵士さん達に連れてこられたクロノはさっきまでとはまるで別人。
私達の事…そして自分自身の事も分からなくなっていたの。
「僕は…誰?君たちは?」
「「ええーーーーーーーーーーっ!?」」
◇
◇
◇
「「記憶喪失!!???」」
そう言ったのはイシメール君だった。
「あの…僕はどうしてこんな所にいるの?」
クロノは震えながらそう言ったの。
私達はそのあまりの光景に立ち尽くしていた。
「これは…………」
「王よ……先程…我々が迎えに行った所…青年はぼーっと立ち尽くしていたのです…そしてこのへくるよう伝え…一緒に着いてきたのですが…今……この様な状況になっていたのです。」
兵士はそう告げる。
「そうか……この原因はおそらく…これまで彼の中にあった力があの時…あの魔神具の喪失により…かなりの衝撃だったのだろう…その衝撃でこう………。」
王はそう告げたの。
「そんな……クロノさん!!私です!!テンテンです!私の事忘れましたか!?」
テンテンちゃんもクロノにそう勢い任せに言葉を発したの。
クロノに抱きつきそう話すテンテンちゃん。
私だって。
私だって………そうしたいよ。
でも…クロノが……あのクロノが…………。
すると、クロノはテンテンちゃんを見つめる。
「君は……僕の事知ってるの?」
「えっ!?」
テンテンちゃんはその衝撃に固まってしまう。
震えるテンテンちゃん。
私もクロノにそんな事言われたらショックを受けてしまうと思う。
皆こんな時どうしたらいいか分からないと思う。
イシメール君に頼るしかないのかな…私がそう思っていると……。
「はい!これ食べて私を思い出してくださいね?」
テンテンちゃんはそう優しい笑顔でクロノに自分の手料理を渡すと。
手に取り笑顔で答えるクロノ。
「ありがとう」
「はいっ!よーし!私はやっぱりこれでクロノさんの記憶を取り戻して見せるわ!」
そういい台所へ向かうテンテンちゃん。
こういった部分は本当にプラス思考で私も憧れてしまう。
すると、エンポリオ君が何かのアイテムを取り出す。
「クロノ君?これが君の持っていた魔神具っていうものだよ?何か思い出せるかな?」
そう言ってクロノの目の前に取り出したのはクロノの魔神具を型どったアイテムだった。
「これは?」
「これは君が使ってた武器に偽て作ったものなんだけど何か思い出せる!?」
クロノはじーっとエンポリオ君のアイテムを見る。
すると。
突然身体を震わせるクロノ。
そして取り乱し始める。
「う……うわああああああーーーーーーっ!?」
「えっ!?クロノ君!?」
焦るエンポリオ君。
そしてクロノは取り乱しながら部屋から飛び出して行ってしまったの。
「クロノ君!?」
「クロノっ!!???」
するとイシメール君が口を開く。
「これは少し……時間が必要になるかもしれませんね…様子をみましょう。」
◇
◇
◇
私は飛び出していったクロノの後をドキドキしながら辿っていたの。
すると、そこはお城の頂上だったの。
私が目を凝らすとクロノは遠くを見て立ち尽くしていたの。
私はクロノの背後から声をかけながら歩み寄っていく。
「ここにいたの?」
私の言葉にクロノは震えながらこちらを見る。
「うん…僕ね…色々思い出せなくなったんだ。」
「うん……わかってるよ。」
「僕が今まで何をしてきたのか…そして僕は何をしないといけないのか…それに…大切なハズの皆の記憶も!!!!!」
そこまで言うとクロノは大粒の涙を零し……流していたの。
「クロノ……私は……サキノだよ?」
「サキノ………?」
「うん…そしてね…クロノは自分の事……俺って呼ぶんだよ?」
「えっ?俺?」
「そう……クロノは自分の事…俺って呼ぶの…そしていつも自信満々なの…初めの頃は雷武ちゃんとも仲良くなくて戦う事も大変だったけど…それでも今はすっごく強くなったんだあ……私ね、クロノとここまでずっーーと一緒にきたんだ……クロノに助けてもらって一緒にいるようになって…いい時も悪い時も……ずーーーっとクロノに助けてもらってきたの。」
「僕が……君を!?」
「そう…そしてクロノ…クロノは沢山の人達の涙を止める為にいっぱい…いっぱい!!」
私の目から涙が零れる。
「頑張ってきたんだよ。」
私はクロノを抱きしめていたの。
「だからクロノはもう戦わなくて……いいの。」
「サキ………………ノ?」
「クロノは私が守るから……だから…だから……このままでもいいの。」
「サキノ。」
「クロノ……私……クロノが好き……いつもニコニコしてて…苦しい時も笑顔を見せてくれて…私の悲しい事も、ぜーーーーーーーんぶ吹き飛ばしてくれる……クロノを私………サキノは誰よりも大切なの。」
私は………クロノにいつの間にか本心を告げていたの。
すると。
ドーーーーーーーーーーーーーンッと突然城が激しい衝撃音が聞こえたの。
その時。
恐ろしい何かの力が、このドワーフの城に近づく気配を感じたの。
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お読み下さりありがとうございました。