ブラズール世界編シーン11
俺は気が付き目を開けていく。
ここは見た事のない場所。
ハッと我に返る。
「クロノ……!?」
「クロノさんっ!?」
俺の様子を見ていたサキノとご飯を運んで来てくれたのであろうテンテンがいた。
「あ……二人………とも。」
俺は二人の顔を以前のようには見れず…うつむき加減に言葉にする。
どうしても力を失ってしまった事に負い目を感じてしまう俺。
するとそこへ入ってきたのはイシメールだった。
「クロノ君?気がついたかな?具合はどうだい?」
「お……おお……イシメールが俺を診てくれたのか…ありがとうな…。」
「いやいや…僕はこのチームのドクターだからね!当然だよ、そしてそこにいるテンテンが作る食事をとってくれたら疲れた身体も癒されるし安心しててよ!」
「本当本当!!私の料理はチェンウォン一ですよクロノさん?ささ!起きたらお腹空いたでしょ?沢山食べてね?」
何気なくこう自然に話しかけてくれてるのだろけど二人の気づかいも有難いものだった。
するとそこへ入ってきたのはエンポリオ。
「クロノ君!?」
「エンポリオ……。」
「おお!!無事で良かった!!まずはゆっくりしないとね?あ!この匂いはテンテンちゃんの料理!!テンテンちゃんの料理って僕も大ファンになっちゃってこのままだとまた太りそうだよーーー!?」
「料理褒められるのは嬉しいですけど……なにそれーーーー!?エンポリオさんは食べ過ぎですって!?」
皆の言葉に有難くも俺の心はどこか…虚無感が拭えはしなかった。
「皆……ありがとうな…」
俺はそう一言呟くと……塞ぎ込んでしまう。
あの時…俺を抱きしめてくれたのはヘキサだった。
俺は魔神具を失い魔神を失い…力を失った。
元々俺は現代に暮らすどこにでもいる普通の男だった。
取り立てて何の取り柄の一つもない俺がこの世界に呼ばれあの溢れ出す力を得て…仲間たち…そして大切に思う人達の為にその力を奮ってきたんだ。
その力を失ってしまった俺にはもう何も残ってはいない。
するとそこへ入ってきたのはどこかの兵士達だった。
「君たち……あ!ジオウ国ジオウ様の代理としてテンテン様…そしてお仲間もなのですが国王がお呼びなのですが……来てくれないか!?」
皆に声がかけられ仲間の皆は国王の元へと向かう。
「あの……俺は……?」
俺の問いに兵士は告げる。
「君は大分衰弱していたし、今はマジェストの力を失っていると聞きまして……国王はその身体に配慮したのだろう…ここで休養して欲しいとの事だった。」
その瞬間。
俺の中で……言葉では言い表し難い…バットで頭を殴られたような激しいショックを受けてしまったんだ。
「お……俺も……いく…………。」
俺は無理やり身体を起こそうとすると。
ズキンっと激しい痛みが全身に広がっていたんだ。
「うぐっ!?ああっ!?」
「クロノ!?」
そうして俺を抱きしめたのはサキノだった。
「サキ……ノ……?」
「皆…ある人に話を聞いたの……あのね……マジェストが力を失ってしまうとね…その身体にものすごい負担がかかるんだって…下手したら植物状態…無理すれば……死んじゃう事もあるんだって!?」
「ん?俺は……」
気がつくと皆は足を止め俺を見ていた。
「私は!!私は!!!」
サキノの目からは涙が流れていた。
すると飛びついてくるテンテン。
「私だって嫌だよ!!もう大事な人がいなくなるのは……」
そう自分の思いをぶつけてくるテンテン。
すると…仲間たちも立っていたんだ。
「クロノ君…君がいたから僕だってヨーロディアも救われたんだ…だから今は。」
「そう…僕らの村を…アフリエイトを救い皆を救ってくれた君を今度は…助ける番なんだよ!?」
エンポリオもイシメールも…俺がこんな時に。
俺の身体も皆の優しさに心震えた。
こんな大切な仲間たちに俺は今何が出来るだろう。
そして。
サキノは。
「クロノ……お兄ちゃんが具合悪い時は私達がどんな事があっても……お兄ちゃんを守るんだから……そして私だって…クロノがもう…とーーーーーーーっても大切な人なの…だから今は…ね?」
微笑み俺を抱きしめるサキノ。
俺は……いつしかサキノの腕の中で。
◇
◇
◇
ここはブラズールの地下帝国……この城ドワーフ王国『ドワーフィ・ステイン城』
玉座の間にて。
「ふぅ……今戻った所だが…………なにか報告はあるか!?」
「はっ………王の連れしもの達の一番の負傷者の意識が戻ったとの報告がありました。」
「そうか…ならば……仲間の者達…そして連れてきたあの女の子もだが……ここへ呼んでくれ。」
「「はっ!!」」
兵士達は足早に向かう。
「ああ………」
「どうしました!?」
「寝ている男はまだ寝かせておいてやれ。」
「はっ!!ではすぐに。」
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