ブラズール世界編シーン10
再び…俺の頭上でジリジリと二人の魔神具が衝突している。
「ぐぬぬ……貴様……邪魔をするな!!?」
「そうは……いかねえなあ…俺は力無き者を守るという使命があるのでなあ。」
ピクリと反応する俺の身体。
力無き者……確かに俺は今、力を失っている。
魔神具が壊れ、そんな俺はマジェストとして無力である。
この世界に来て俺は力を得てなんとかここまで辿り着いたんだ。
こんな事は未だかつてなかった。
ぐおおおおーーーーーーーーっと咆哮をあげるクラーケン。
「ははっ……小僧……貴様の魔神は確かに強かったな…あのドラゴンは強すぎた……だが…マジェストと魔神を繋ぐ魔神具自体がもたなかったのだろうなあ…この俺様のこの魔神具のように…神同等の力を得れる物でなければ結果……そうなるのだ……わかったら………んん!?」
その時、大男はラムドの魔神具を押さえ込みながら口を開く。
「小僧……いいか!?真のマジェストなら…魔神はお前と繋がっている……ここは………。」
すると大男は更に魔神具を振り上げていく。
「なにっ!?」
「はああああああああああーーーっ!?」
ドガーーーーーーーーーーンッとラムドの魔神具を弾く大男の魔神。
大地の精霊ノーム。
ノームの腕に握られてる大ハンマー。
それは奴の魔神具を弾く。
「いいか!?ここからお前の体感するのは…敗北だ……」
「くっ!?」
すると、ラムドのクラーケンはするすると触手を伸ばし始める。
「いやあああーーーーーーーー!?」
「なにこれーーーーーーーーー!?」
サキノとテンテンは触手の気味の悪さに叫んでしまう。
『ククク…男…貴様がどれだけ強かろうが…今の俺様には切り札がある事を忘れるな…。』
「…………………………。」
するとラムドは笑いながら話す。
『なんだあ!?突然黙りこくったか?そうだろそうだろ……お前もやっと自分の立場ってもんをわかったか!?』
『………………………。』
「なんだあ!?この俺様の脅威に震える程恐ろしくなったのかあ!?」
この男はただのゲスだ。
こんな…俺の気に入らねえこんな男が俺の大切な仲間たちを傷つけようとしてる。
これでいいのか!?
俺は自分で何も出来ないって思ってここで立ち上がらなくて本当にいいのか!?
気がつけば俺は立ち上がっていた。
「クロノ!?」
「クロノさん!?」
「小僧………お前。」
するとラムドが口を開く。
『ククク……魔神具を失い……そして魔神ももういないお前に……ここで何ができるって言うんだ……?』
俺はその声に耳を貸さず奴の元を目指す。
足には以前とは違いしっかりと力が入らない。
フラつく身体をなんとか奮い立たせ……俺は奴を目指す。
「クロノ!?だめ!今は動いちゃだめーーーーーーーーーーーっ!?」
「クロノさん!?本当に……私が今なんとかするから!!???」
サキノ……そしてテンテンは俺にそう言ってくれる。
すると……。
触手に囚われていたヘキサが触手に絡まれながら……ふわふわと浮いていた。
そしてその身体になにかの力が溢れていた。
「ヘキ………サ?」
ヘキサの身体からは次第に光が溢れだしてくる。
『僕は……世界の聖獣……『ヘキサ』……世界の安定の為にその力を与える者…。…』
すると…ラムドは口を開く。
『世界の……聖獣か……そしてここには……精霊を従えしマジェスト………ここは…………………。』
その瞬間。
『くあああーーーーーーーーーーーーっ!?』
光り輝くヘキサ。
その目からも光を溢れさせている。
「ヘキサ!?」
ぱーーーーーーーーーーーーーっと光をその身から放出するヘキサ。
すると……ボトボトっと触手は枯れていき落ちていく。
そして。
俺は立ち尽くしていた。
そして俺を温かい光りが包んでくれていた。
この光は………………。
俺に感じたのは誰かが俺を抱きしめてくれていた感覚。
『お兄さん………』
『ヘキサ?』
『お疲れ様……今は……眠ろ……。』
『ヘキサ……でも………俺。』
『いいの……大丈夫だから……今は………。』
『雷武も……いねえ………』
『うん……そうだね。』
『魔神具も……ねえ。』
『うん……そうだね。』
『俺……何も………。』
『うん……でもね。』
俺はいつしか…目は閉ざされたまま…涙が零れる感覚…。
そして…ふわふわと。
きっと……俺は……宙を漂っていたんだ。
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