ブラズール世界編シーン8
俺達の目の前に現れたのはこの街の大富豪だというラムド伯爵。
ブラズール王は妖精のフェリーヌを捕まえていたという。
そしてこのラムド伯爵の元に奴隷として預けられたのだろうフェリーヌ。
ここに現れたという事は逃げ出してきた事に気がついたのだろう。
すると俺を盾にし声を上げるフェリーヌ。
「嫌だよ!?」
「はあ!?」
「もう戻りたくないって言ってるの!?」
「フフン……そうか……だがお前はこのワシの所有物なのだがなあ…国王によってお前はもうワシのものになったのだ…。」
「誰がそんな事決めたのよ!?」
「このワシが決めた事だ……王にも好きにしていいと言われている…だからお前はもう奴隷だ…だがお前のこれまでは奴隷としてもある程度自由にしてやったが…逃げ出そうとするなんてな……これは問題だ……罰というものが必要だな。」
そう言ったのはラムド伯爵。
すると兵士達が数名この場に辿り着く。
「なになに?なんなのこれ!?」
テンテンも辺りを見渡し声にする。
いつしか俺達を取り囲む兵士達。
そして伯爵は笑い出す。
「あーっはっはっは!!このワシを誰だと思ってる……ブラズール王にこの街の管理を任されているこのラムド様だ……そのワシに楯突く奴など許すはずもないだろう…さあ…こっちへこい…これからお前を再教育してやろう。」
下卑たセリフを吐き捨てるラムド。
そして俺にしがみつくフェリーヌ。
そんな彼女はぷるぷるとその肩を震わせている。
俺はフェリーヌの頭に手を載せる。
すると目に涙を浮かべ俺の顔を見ているフェリーヌ。
「大丈夫だ…お前は安心してていい。」
俺が髪を撫でると涙を溢れさせる彼女。
「なんだあ!?お前は誰なんだ!?」
「さあ?お前に教えてやる名前じゃねえな。」
「なんだと……?」
すると。
「ラムド様相手に……貴様ーーーーーーー!?」
剣を抜き俺達に斬りかかって来る数名の兵士達。
その時。
「はあああーーーーーーーーーーーっ!?」
方天画戟を振り回し、ドカッ!!バキッと激しい音を立て兵士達を倒したのはテンテンだった。
「テンテン!?」
「私はずっと我慢してたけど、もう無理です!こんな非道な男は私が倒します!」
すると背後から怒声が聞こえてくる。
「貴様らーーーーーーーーーーーっ!?」
そして。
「カラーウルフっ!?レッドウォー!!」
爆炎を放つカラーウルフ。
その爆炎に撒かれ焼かれ叫ぶ兵士達。
「「うぎゃーーーーーーーーーーーっ!?」」
「ふぅ……奴隷とか……そういう話は…私も好きじゃないから……」
「サキノ!?」
するとその光景に驚きの表情でぷるぷると震えながらサキノはそう話す。
「ぐっ!?貴様ら……」
悔しがりいうラムド。
「貴様らも…そうか……マジェスト……だったのか。」
すると奴は自分の背に背負っていた何かを地面に叩きつける。
どぉぉおーーーーーーんっという地響きはそのなにかの重量を物語る。
「なんだ………!?魔神具か!?」
俺の言葉にニヤリと微笑むラムド。
「これはな…この街を任された時に魔王ゼルドリス様により授けられたこの俺様のとっておきの魔神具……この魔神具と……魔神を見る事になった事……後悔させてやろう。」
ズシャリと何かを手にするラムド。
その手に抱えられたのは巨大な戦斧。
「ふぅ……我が魔神具『トライデント』この巨大な戦槍は全てのものを切り裂き破砕する……そして…魔神は………。」
ゴゴゴと地鳴りが発生し大地を揺るがす。
ドゴオオオーーーーーーーーッと大地を切り裂き出てきたのはなんと巨大なイカのモンスター『クラーケン』だった。
「これは!?」
「海の魔神……クラーケンか!!!???」
すると再び笑い出すラムド。
「ククク……我が力は『海闇』そして魔神は『クラーケン』」
城をも圧倒する程の巨大な恐るべき肉体を持つまさにモンスター。
魔界と言われるこの地にはこんな化け物が揃っているのだろう。
「これは」
「なんてパワーなの!?」
「こんなに激しい力なのか!?」
「はーっはっはっは!!貴様らもマジェストでここまでどう動いてたのかは知らんが…この地はブラズール……ワシら魔族の国なるぞ…。」
ラムドがそういうと更に溢れ出す奴の闘気と魔力。
その激しさに今まで以上の脅威を感じる俺たち。
「わっ!?」
「「きゃあああーっ!?」」
暴風にその身体を吹き飛ばされたサキノ、テンテン、ヘキサとフェリーヌを抱え止める俺。
「大丈夫か!?」
「うん!」
「お兄さん」
「お兄ちゃん!?あいつパワーが過ごすぎだよ!?」
「ククク……俺様の力はまだまだこんなものではないぞ!?さあ大人しくそこの娘を………ん!?」
すると俺達の目の前に立ち尽くしていた一人の男がいたんだ。
「なんだあ!?お前は誰だ!?」
「ふぅぅ……やかましいなあ……俺の眠りの邪魔をするんじゃねえよ。」
「ぐっ!?貴様!?このワシを誰だと思ってやがる!!??」
「知らねえな。」
「ならば……貴様から教えてくれる…」
寝ていたという大男は起き上がると。
俺達の目の前に悠然と立ち尽くしたんだ。
次の瞬間。
空間に発生したなにかの力。
「あれは!?」
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