ブラズール世界編シーン5
エルフィーナから聞いたクロノのこの世界への転移魔法の話。
◇
「転移……魔法?」
「そうです…勇者…つまり、貴方をこの世界に呼ぶ為の転移魔法を施したのは…貴方も知っての通り今は亡きヤシュア…実は…この私もその一人…だったのです。」
「なんだって。」
俺は、その言葉に驚いてしまう。
「彼……ヤシュア…そして一人の女子…その女子もまたこの世界に転移してきたと言っていました…そして……二人には見えない様に私の前に姿を現したのはあの魔王を封じた…前勇者でした。」
「勇者…勇者って…まさか勇者…ラブラ…の事か?」
すると微妙に寂しげな表情を見せるエルフィーナ。
「ええ…その時…ヤシュアとその女子は…どうにか転移の魔法陣の元に辿り着きました……そして彼らの声は私にも届いたのですが………」
「なにか問題でもあったのか!?」
「ええ……ですが転移に関しては膨大な魔力が必要だったのです……そして彼らも貴方を呼び出す為に準備を整え…転移魔法を発動させたのですが…やはり転移魔法に必要な魔力が明らかに足りなかったのです…ですがこれで失敗したらまた魔力を貯めるのには大変な時間と力が必要……あと少しで転移魔法が使えるはずだったのに…彼らが諦めかけたその時。
勇者ラブラは私に声をかけてきたのです……。」
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『エルフィーナ様……私が倒したハズの魔王ゼルドリスが目覚めてしまったの……でもね…それって私が施した魔神具転換の魔法を破り魔神具を自分の力にして以前の強さを超えてこの世界に復活してしまったって事なんだよ……。』
『そんな……そんな事になったら…たとえ新たな勇者をこの地に誕生させたとしても…』
すると…ラブラはニコリと微笑み口を開く。
『でもね…そんな風にネガティブに考えても何もはじまらないわ!まずは…勇者復活を私達で手助けするわよ!?』
『えええぇぇーーーーーっ!?そんな簡単に!!しかも勇者様が復活したとしても……』
『だって彼らは今まさに転移魔法を使用しようとしてるの!!後は私がなんとか手助けするわ!!だからエルフィーナ様!!貴女も力を貸すのよーーーーーーーー!!!!!』
『えええぇぇーーーーーーーーーーーっ!?』
私達の力は二人の転移魔法へ更に力を与え…そして。
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◇
「な……なるほど……俺はそうやってこの世界に呼び出されたって事だったのか。」
「そうなんですよ…クロノ君?」
そう言ってニコリと微笑むエルフィーナ様。
「そして貴方達がついにこの地に辿り着いたという事は……貴方達はあの魔王に近づいているというのは本当よ。」
そう…俺達はついにここまで来たんだ。
「あのさ…それで俺をヤシュアと一緒に呼び出したって女の子もこの地に向かったんだけどさ。」
俺はカルマの事を話してみる。
今目の前にいるこのエルフの女王ならば…もしかしたらカルマの今を分かるのかも知れない。
すると…彼女は微笑み語る。
「ええ…もちろん…分かっていますわ…だけど彼女を追うという事は……あの魔王ゼルドリスに近づくという事を…貴方達に伝えておきます。」
「魔王……」
「ゼルドリス……だって……!?…。」
ここへ来て衝撃の事実を知ってしまった俺達。
するとエルフィーナは続ける。
「そうです…過去にこの地に存在する魔界を支配し…凶悪な魔神達を従えこの世界の全てを滅ぼし支配しようとし魔王ゼルドリス……時と運命は彼を再びこの地に復活させてしまった…そしてその魔王復活を助力したのが……なんと……今彼女と一緒に行動している男なのですから。」
「なん……っ!?」
「「だってーーーーーーーーーーーー!?」」
俺達は衝撃の事実を知ってしまう。
「でもさ!?カルマはあの時……あの男の事を知っていたみたいだぜ!?」
「そうね……でも彼女はあの男が魔王と繋がりがある事は分かってはいませんね。」
「そうですね。」
「ならカルマお姉ちゃんを助けてあげなきゃ!!」
心配げに言い放つサキノ。
「なあ……エルフィーナ……俺もやっぱりカルマを助けたい……あの時…俺の手を拒んだかもしれないけど…やっぱりアイツを両親に笑顔で合わせるのは俺達しかいないと思う…」
するとサキノが抱きついてくる。
「クロノ!!」
「サキノ!?」
「カルマお姉ちゃんを助けにいくよ!?」
「お、おう!!」
「よし!!僕もいく!!惚れた女性を助けるのが僕だ!!」
「僕ももちろん!!」
「皆!!仲間っていいな!私ももちろんいくよ!?」
「あなた達…………………………」
俺達を驚きの表情で見ているエルフィーナ。
「相手は魔王軍……そして…魔王なのですよ?怖くないのでしょうか?」
俺達は笑顔で顔を見合わせる。
皆の目には迷いはない。
そして俺は答える。
「やってみなけりゃわかんねーな!」
◇
◇
◇
俺達は必ずカルマを。
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