チェンウォン世界編シーン72
「ぐすっ……カルマお姉ちゃん。」
ひとしきり泣きじゃくったサキノ。
俺に抱きつき泣いていた彼女だった。
カルマは…もうサキノにとっては大切な姉になっていたのだろう。
ヤシュアに去られ…そして今度はカルマだ。
俺達にとってこれはあまりにも大きな衝撃だった。
「うああああああああーーーーーっ!?カルマさんっ!?」
そしてサキノに続き大声を上げたのはエンポリオだった。
「くそっ!!僕もいたのにカルマさん………。」
すると俺達のヘッドホンに通信が入ってくる。
『ガガガ…ザザ……ガガ……イシメール!?聞こえますか!?』
「えっ!?アキニー様!?」
そう、こんな状況の俺達に声をかけてきたのはアキニーだった。
「あ……これで……良いのですね!?ありがとうございます!」
アキニーは意味が分からない言葉を話すがこれは向こうで誰かと話してるのだろう。
「あ!!クロノ君ね!?」
「ん!?おお!シェリルだったか。」
「その声のはりがあるなら大丈夫ね、じゃあアキニー様!どうぞ。」
「ありがとう、シェリルさん…では。」
アキニーがそう言うと空間にモニターが現れる。
そこには羊の角を頭に乗せ…褐色の肌に美しい美貌を備えたその女性は…そう…アフリエイト王国の女王アキニーだった。
「皆さん…クロノ君がそこにいる事で…ここケニージアにいても私達も皆様の戦いを見る事が出来ました。」
そう、俺のライブ配信は見る機能さえあればどこでも見れる。
きっとケニージアにはシェリルがいた事でそれを可能にしたのだろう。
「その為に……。」
悲しげな表情を浮かべるアキニー。
そして意を決したかのように唇をかみしめ口を開く女王アキニー。
「皆様…チェンウォンの地においてこれまでの戦い……本当にお疲れ様でした…その中で大切な人々……仲間達…朝明様……ロンレイ様…そして……ヤシュア様……彼らはその生命をかけこの地…そして世界の為に戦ってくださいました…私達も離れてはいましたがご冥福をお祈りしておりました…ですが…失ってしまった生命は返りません……そしてヤシュア様の生前に私に告げられたのは…我々マジェストを今後導くのはお前だと…そう託されておりました……私もヤシュア様を失った悲しみは深く…立ち上がれるか不安でしたが……皆様がいてくださり……そして希望をいただき…前に踏み出す事がやっと出来ました……そして…今回また世界に起こりつつある事実が判明しました。」
俺達はその言葉に身構える。
「ブラズール……そう、世界の裏側に存在すると言われる国……かつては世界を支配したという大国…だがそこはあの『魔族』が暮らすと言われる国…遙か昔…かつて魔王が支配した国……我々人間族…そして精霊族を攻めようとした魔王率いる魔王軍は勇者様により滅びの道を辿ったのです…。」
そしてアキニーは考えながら…言葉を続ける。
「あれからアフリエイトの国々も世界の魔導協会の支配から逃れ…そしてケニージアの復興も進み…ケニージアにマジェスト協会を新たに設け…エルザック様を中心に動き出していたのですが……まずは世界中のマジェスト達の動向を調べようと動き出したのですが……そこでブラズールに動きが見えたのです。」
「アキニー氏…その動きとは!?」
「貴方は!?」
「僕はここチェンウォンの一国……ジオウ国の王でもあるジオウ……国に関わる事でもありますので我々としてもケニージア王国と手を取り協力して行きませんか?」
ジオウはそうアキニーに告げる。
するとアキニーも話を重ねる。
「おお……それは有難いお話……是が非でもお願いしたい話です……そう!そしてヨーロディアからと何と…アメリスアードの協力も得られるという話にまでも話は進んでいるのです。」
「「なんと!?」」
そう、この言葉にも驚かされた。
ヨーロディアではマリアとアンナの努力…そしてユーロという大人物のこれまでの功績がこの様な結果を産んだのだろう。
そしてアメリスアードは。
「皆様……私はアメリスアードのシェリルと言います。」
そう告げたシェリル。
「私の父であるケイン……彼は科学者としてアメリスアードに貢献してきました……そしてそんな父の友人もいるのですが、現在のアメリスアードの大統領が父ケインの大親友だったのです…そして我が国アメリスアードも今回のこの危機に協力を得られる事になったんです!!」
「「おお!!それは…凄い!!」」
そして俺は口を開く。
「これで、俺達はブラズールに行くにもなんとかなりそうだな!?」
皆の希望を見た瞬間だったんだ。
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