チェンウォン世界編シーン71
「ククク……あーっはっはっは!!」
「「誰だ??」」
俺達の目の前に姿を現した一人の男。
フードを深く被るその姿に言葉に言えないプレッシャー。
すると……突然……その男はそこに立ち尽くしていた。
その風貌は現代の俺達と同じ様な服装…頭にはターバンが巻かれ顔の一部が隠されているが…不思議な雰囲気の男。
「いやあ……見事…見事……よくここまで皆が成長したもんだねえ」
そう言いながら拍手をしながら入ってくる男。
するとカルマが驚き口を開く。
「貴方は……パパの会社の部下だった……『颯』さん!?」
「おお!!よく僕の事…覚えててくれたね?そうなんだよ、僕は颯…君の父親には随分とお世話になっていたよ…そして君の家にも何度かお邪魔したね?」
男の正体は俺達と同じ現代人なのだろう…そしてカルマの父親の職場の部下だという。
その名は風真颯。
「はい……でもこの世界になぜ颯さんはこられたんですか!?」
「あー……僕はね…じゃあ少しだけ教えてあげよう。」
カルマの言葉に突然その雰囲気を変える颯。
「僕はこうして存在しているけど……君の父も…そして母親も…この世界にいる…。」
「えっ!?パパもママも……この世界に!?本当に!?」
カルマは食いつき問いかける。
「ああ……いるぜ……………………。」
颯の声に焦り出すカルマ。
「どこに!?どこに行けば両親に会えるんですか!?」
「カルマ……落ち着けって!!」
ただならない焦りをみせるカルマにそう声をかけて落ち着かせようとする俺。
「クロノは黙ってて!!」
俺を睨むように強い言葉を浴びせてくるカルマ。
こんな彼女を見たのは初めてだった。
「カルマ……」
「クロノ…ごめん………。」
「ああ…大丈夫だ。」
すると颯と呼ばれた男は踵を返す。
「カルマ…と今は呼ばれてるんだね。」
「えっ!?」
「カルマさん…僕に着いてくれば君の両親にあわせてあげるよ。」
「颯さん…それは本当……なの?」
「ああ……僕はこれからこの球体の地の真裏…ブラズールと呼ばれる地にある…とある場所へ行く…カルマさん…どうだい…一緒に来るかい?」
「えっと……私は。」
すると颯は戸惑うカルマを他所に…その手に何かを取り出す。
それは何かの魔神具だった。
その手に魔神具を装着する颯。
それは…右手にはめた片手用のグローブだった。
「これは僕の魔神具…名前は『韋駄天』」
すると…突然風が巻き起こり突風が周囲に拡散する。
ジオウ城の王の間内部に暴風が一瞬で発生する。
「うわっ!?」
「きゃっ!?」
俺達の視界が一瞬で奪われる。
「くっ!?それは!?」
「ええ…クロノ……彼は……以前私達が会ったことのある魔神ね…そして颯さん…あの時の『韋駄天』の魔神を使って私達に接触したのは…貴方だったんですね…?」
カルマの言葉に答える颯。
「ああ……その通りだよ……そして……」
パチンっと指を鳴らす颯。
するとカルマの目の前だけに無風の道が現れる。
「さあ……僕に着いてくれば君の思いは叶うけど……?」
「颯さん………」
すると……カルマの足は一歩…前に踏み出す。
「カルマさんっ!?行っちゃダメだ!?きっとそれは罠だ!!???」
エンポリオの怒号が発せられる。
ピクリと震えるカルマ。
「カルマお姉ちゃん!?そうだよ!?行っちゃやだよ!?」
サキノもめいっぱいの言葉でカルマの足を止める。
「エンポリオ…君…………サキノ……ちゃん………。」
すると…カルマと俺達の間に現れる魔神…『韋駄天』。
「だーめだよ…君達……一歩踏み出したカルマさんは……もう僕の魔神の支配下だよ………。」
すると、ゴーーーーーーーーーッと轟音を立てた竜巻に包まれた颯とカルマ。
その激しい力に入り込む事も出来ずにいた俺達。
「カルマさんっ!!??」
「カルマお姉ちゃん!?」
エンポリオもサキノもカルマの名を呼ぶもカルマは振り返らなかった。
「カルマーーーーーーーーー!?今解放してやる!?」
「クロノ………ダメ……。」
「えっ!?」
「クロノ……エンポリオ君……サキノちゃん……そして皆………私は大丈夫だから……心配しないで。」
そう……俺達に告げたカルマ。
哀しげな表情を見せてた彼女は俺達に一瞬…笑顔を見せたカルマ。
でもきっと……その笑顔は……。
そして彼女は暴風の中に消えていったんだ。
「「カルマーーーーーーーーーーー!!」」
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