チェンウォン世界編シーン69
饕餮のその存在は圧倒的な力に斬り刻まれ……やがて……無へと変わっていったのだ。
『うぎゃあああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?』
饕餮は断末魔の叫びと共に消え去ったんだ。
「「うおおおおおおおおおおーーーーーーっ!?」」
ここにいる皆々が一斉に歓喜の声を上げる。
そう…怪物『饕餮』は消え去ったんだ。
◇
◇
◇
この時……全世界に饕餮の存在が消え去った事が知れ渡った。
世界はこの事件に終わりがきた事で安心感を得た。
人々の心に幸福が戻っていく。
そしてその空はいつしか……真っ黒な雲が消え去りそして青空が広がっていたんだ。
◇
「お兄ちゃんっ!?カッコよかった!」
走りよって抱きついてきたのはサキノだった。
「あはは……サキノ…さんきゅ。」
「あーーーーっ!?わんわんサキノちゃん!またずるい!お兄さんは僕の彼氏なのにー!?」
「なになにっ!?ヘキサちゃんダメだよお!」
二人はバチバチとその目に炎をたぎらせる。
サキノは犬…ヘキサは猿…そうか…この二人って犬猿の仲ってやつか。
俺がそんな事を考えてると、そこへ声をかけて来たのはジオウとテンテン…。
「勇者クロノ……この地に住む者代表として君に心からの感謝の言葉を述べよう…本当に……ありがとう。」
「ジオウ…いや…俺だけの力じゃ何も出来てねえよ……お前に、テンテン…そして仲間たち……ロンレイ、ヤシュア、朝明達も、そして鉄星だって…俺達の戦いを見て聞いてくれた皆も…一人でもかけてたら、勝てなかった…」
俺は皆に笑顔を向ける。
「皆!?本当にありがとな!!!!?」
俺は全てに礼を言いたい…そんな気持ちでいっぱいだった。
すると。
「ふぇぇぇんクロノーーーっ!?カッコよすぎ!!」
叫ぶサキノ。
「ぼ、僕だってやっぱり惚れ直しちゃうーーっ!?」
そしてヘキサもそうだった。
するとそこへ立っていたのはテンテンだった。
「ううっ……ううっ……グス…………」
「テンテン……」
俺はテンテンの元へ。
涙を流しているテンテン。
「テンテン…俺がもっと早く駆けつけていたなら……」
「グス……グスっ……うわあああーーーーん」
「おっと!」
俺に抱きつき泣きじゃくるテンテン。
俺はテンテンを抱きしめ…泣き止むのを待ったんだ。
◇
「ごめん……ね。」
「あ……ああ……もう大丈夫か?」
「うん…ありがとうございます…朝明さんは、私の事…初めて認めてくれた…パパ…みたいな人だったんです。」
「テンテン……。」
するとテンテンは涙を拭き笑顔を見せる。
「私の次の目標が出来ました!」
「ん!?」
「これからクロノさんを目標にしたいと思います!」
にこりと笑うテンテン。
「ああ!テンテンが元気になるなら。」
「それと…私がもしもクロノさんに勝てたら……その…私の旦那様になってくださいませ!」
顔を赤らめモジモジしながらそう話すテンテン。
「は!?」
「はあっ!?」
「はあああーーーーーーーーーーーーっ!?」
サキノ、そしてヘキサも尚更こちらに反応する。
そしてここにいる皆が驚きの表情だ。
「テンテン…クロノ君も困ってるじゃないか…その辺にするんだ。」
「お兄様!?いいですか!?これからはクロノ様を将来の弟として扱ってくださいね!?」
「えっ!?……あ、ああ……分かったよ…ふぅ。」
「という事でクロノ君!!これからもよろしく!?」
「な!なんでそうなる!?」
俺達がそんな話をしているとザっと誰かの足音が聞こえた。
それはリーファとハオユーだった。
「クロノ君……この大地と悪神討伐……今回は本当にありがとうございました。」
「ロンレイ様もきっと……空のどこかで安心されてると思います。」
「ああ…二人とも…ロンレイ……きっとヤシュアも……安心してくれるかな。」
俺は空を見ながら、そう呟いていた。
するとリーファが口を開く。
「ええ……きっと、おじいちゃんもヤシュア様と一緒にクロノ君に希望をみて安心してると思いますよ。」
「そうだな……だけどまさかあの饕餮まで倒してくれるなんてやはり…クロノ君はいずれ勇者と呼ばれる日もきそうだね!?」
ハオユーもそう言ってくれる。
すると。
俺達の目の前にサラサラと風が吹き…そこからスーッと現れたのはトーンウイングだった。
「トーン……ウイング!?」
すると女性の姿のトーンウイングはニコリと微笑む。
饕餮を倒し解放されたヤシュアの魔神トーンウイング。
それは風と共に皆に見せたのは。
ヤシュア!?と……ロンレイ…そして朝明の姿。
「ヤシュア。」
「「ロンレイ様!?」」
「朝明さん!?」
少しの時間…皆が思い思いの言葉を告げる。
三人の幻は笑顔を見せてくれた。
するとヤシュアがトーンウイングを通じて言葉を告げる。
『皆の者…ワシらはもうここまでじゃ…だが…チェンウォンの悪神を皆の力で倒してもらった…本当にありがとう……皆の力があれば…この世界を救う事もできるであろう…ワシらはそう信じておる…この世界を……頼む…そして……クロノ。』
「ん!?」
ヤシュアは俺に名指しで告げる。
「勇者クロノ……お前は世界の希望だ…お前に…この世界を……頼む。」
そういうと…スーッと消えていく三人の姿。
俺は。
俺達はこの世界をきっと。
守るから。
◇
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お読み下さりありがとうございました。