チェンウォン世界編シーン68
俺の頭上から振り下ろされる鉄星の魔神具。
その時!!
ドゴーーーーーーーーーンっという轟音。
そしてそれは。
踵を返し攻撃する鉄星の一撃。
その矛先は。
饕餮の身体にミシッとのしかかるエレファモスの痛恨の一撃だった。
『ぐ!?な……なにっ!?貴様ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?』
饕餮の怒りの叫び。
「フン……ヤシュアを貴様が馬鹿にする事は許さん……貴様の未来はもう…どこにもない…」
すると…不気味に笑いだす饕餮。
『クク……ククク………。』
「何がおかしい!?」
『貴様が力をつけた事は分かった…だが……上には上がいるもんだ。』
そう言った饕餮はニヤリと笑う。
「なにっ!?貴様ァァァっ!?」
エレファモスの周囲に突然の暴風が巻き起こる。
逃げ出せないエレファモスに襲いかかるトーンウイング。
「「鉄星様ーーーーーーーーーーっ!?」」
『フン……終わりだ……貴様のライバル、ヤシュアとかいう男の魔神でズタズタになるまで切り刻み……そして……食ってやる………。』
その時。
ドガガガーーーーーーーーーーーーーーッ!!っと鉄星とエレファモスを吹き呼ばしたのは…。
深紅の髪を靡かせ…そこから恐るべきドラゴンへとその姿を変えた魔神。
「「魔神………雷武!!!???」」
『さあ……やっと俺様の力が………戻ったぜ。』
◇
◇
◇
俺と雷武はヤシュアの魔神を支配した恐るべき化け物…饕餮に立ち塞がる。
なんとそいつは魔神をも従えるとんでもない化け物へとレベルアップしている。
すると…俺と雷武の視線の先でゆらりと立ち上がってくる饕餮。
「小僧…………うぐっ!?」
「鉄星様!?腕が!?」
鉄星はこの時…饕餮に右腕を失っていた。
「ああ……リオ……すまない…ワシはまだ…力の使い方を学ばねばならんようだ。」
「ええ…私がお傍にいますので今は…。」
「ありがとう…だが小僧でも…果たして奴を倒せるだろうか。」
すると…リオはその視線をクロノに移す。
「クロノ様なら……きっと大丈夫です…これまでも数々の奇跡を起こしてきた彼なら…きっと。」
◇
『ぐぬう……貴様……何度も何度も俺様の邪魔ばかりしてくれるなあ。』
「饕餮……お前は放っておいたら、この大地の全てを喰らってしまうだろうな…」
『それは当然であろう……この世は弱肉強食だ…存在する全ての生物は我が食料である…よって全てが俺様の餌になる事は神からの命令だ。』
饕餮の闘気が溢れだし次第にトーンウイングもその闘気と同化していく。
「これは………」
ゴゴゴと奴の暴風域は拡大し周囲の全てを巻き込んでいく勢いだ。
『ククク……風神の暴風と我が暴食の合わせ技…全てを吸い込み俺様が食らっていく……このままこの地の全てを喰らい尽くしてくれるわ!!』
奴の自信ありげな言葉は冗談なんかではなく本気でそこまでの力を秘めているであろう。
しかも広範囲に及ぶであろう攻撃に、このままではヤバイ…そう感じたんだ。
するとトーンウイングの風の出力が更に増し身体の軽いものは立ってるのもやっとの状況に晒されていく。
「うっ…くそっ!?せめてこの風が何とかできれば。」
『ああ……さすがあのジジイの魔神だぜ……風神の呼び名は伊達じゃねえな。』
すると俺の脳裏に聞こえてきたのはヤシュアの声だった。
『クロノ……そして魔神……雷武。』
「『ヤシュア!?』」
『良いか二人とも聞いてくれ……これより一瞬ではあるがあの饕餮の魔神となってしまったトーンウイングをワシが操る…そこをおぬし達の全力の攻撃を行い…そして饕餮ごと…倒して欲しい。』
「ヤシュア。」
『なあに……最後の最後に、ワシは運命にさからってみようではないか。』
する全てヤシュアはトーンウイングを目指す 。
緑の光りを纏ったヤシュアの身体。
それはやがてトーンウイングに吸収されていく。
『ん?…貴様ら、何をしやがった!?』
『くっ!?何も起こらない……やはり霊体の姿ではどうにもならないのか………?』
「ヤシュア…それなら俺も一緒に…奇跡ってヤツ…起こしてやろうぜ!?」
『クロノ……今…ワシはお前に…未来が見えた。』
「はは…なんだよそれ!?」
『お前がこの世界に来てくれて良かったという事じゃ…さあ…いくぞ!?』
「ああ……。」
俺とヤシュアの意識が重なる。
『貴様らが何をしたのかは知らんが何をしても無駄だ……さあ…我がトーンウイングとこの俺様と力に屈して死んでゆくがよい。』
その時。
トーンウイングの暴風がピタリと止んだのだ。
『なにっ!?なんだこれは……ジジイから奪ったの魔神が操れない……だと!?』
俺はそれを確認すると口を開く 。
『さあ…これまで散々暴れてくれたな。』
俺は饕餮の前に立ち尽くしていた。
魔神具を構えスーッと振り上げていく。
『次は俺様の番だな。』
雷武はそう呟くと。
俺の刀の刀身へと変わっていく雷武。
それはこれまでにないパワーを秘めていた。
普通の刀身の長さ……だがそれにはかなりの闘気と魔力が込められていた。
炎と雷を纏う二属性融合の超強力な力を秘めた刀。
俺は構え……そして。
『ぐあああああああああああ!!貴様ら!!俺様は死なん!!ここの全てを食らってくれる!!???』
「ふぅぅぅ…俺はてめぇが喰った皆の魂を解放する…ヤシュア…俺が…終わらせるよ…」
『武神流……『風流竜』』
うっすらとヤシュアが見え…微笑んだ気がした。
俺は饕餮に目を向ける。
そして瞬時に俺は地を蹴り饕餮への攻撃を開始する。
超回転による俺の斬撃が饕餮の身体にヒットする。
バチバチという電撃が饕餮の身体を捕らえ停止させ…そして爆炎の刃が饕餮の身体を斬り刻んでいく。
『うぎゃあああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?!?!?』
◇
◇
◇
お読み下さりありがとうございました。