チェンウォン世界編シーン65
『さあ……貴様らも…揃って俺様の胃袋に……。』
饕餮の巨大な口は空間に広がっていき…そこにいた全てを喰らおうとしていた。
もうダメなのか!?
誰もが絶望を感じたその時。
俺達は皆の前に現れる。
「「クロノ!!???」」
「皆!!離れてろ。」
この時点で既に皆がボロボロであり…まさに地獄の現状……その時。
俺と雷武は饕餮の真上の空間に現れ…滞空していた。
『なんだーーーーーーーーーーーーーっ!?』
俺達を見上げる饕餮。
『「魔神雷武…限界突破……………」』
俺の魔神具に吸い寄せられていく雷武。
そして、いつしか柄の先…刀身へと姿を変えた雷武。
ゴウっと滾る炎にバチバチという雷を纏った俺の魔神具。
「あれは……あの青年と魔神であるドラゴン……まさに歴史に名を刻む…あの勇者様の様だ。」
見ていた一人の誰かが…そう呟いた。
「それは…なんの話ですか?」
そう尋ねたのはカルマだった。
「あ……ああ……大昔の昔話さ…この地の事なのかは分からないが…竜族がまだこの世界に君臨した程の大昔…人々が魔王に絶望しかけたその時…伝説の勇者様と恐るべきドラゴンが降臨し…世界を救う希望になったとされているんだ…まあこの俺も曾祖父さんに聞かされた話だけどな。」
「なるほど…そんな昔話が……クロノ。」
◇
『貴様ら……グロロロ……その身を喰い我が力を更に増してやろうとするか。』
「そうは……いくかよ!?」
俺は刀を握り返す。
『来て見やがれ……ガキが。』
「ああ……まずは朝明さんの分だ。」
『がああああああああーーー〜っ!?』
饕餮は闇を解放し、黒い空間が俺達を包み込む。
『クックック……これであの二人は食ってやったんだ……貴様らも………!?!?!?』
ダッ!!と宙でパッと姿を消す俺の動き。
「なにっ!?」
「クロノ!?」
『なんだ!?貴様ら!?どういう………』
パッと姿を見せたのは饕餮の頭上。
俺は刀を振り下ろしていく。
『馬鹿め!?そんな物質攻撃など…なにっ!?』
ドガガガガガーーーーーーーーーッ!!?っと振り下ろした刃が饕餮の身体にヒットする。
『くっ!?貴様……だが……その程度の攻撃が…この俺様に………ん!?』
その時。
俺の身体に雷武の姿が重なる。
『「うおおおおおーーーーーーーーっ!?」』
刀を握る腕に更なる力が宿ってくる。
そして…饕餮の下顎に俺達の刃は振り上げられる。
ズババババーーーーーーーーーーーっという凄まじい轟音を立て饕餮の身体にヒットする。
『ガハッ!!??ぐあああーーーーーっ!?』
吹き飛ぶ饕餮。
「「なにーーーっ!?」」
「クロノっ!?」
皆の驚きの声に続きカルマの声が聞こえた。
そして、ドガーーーーーッと吹き飛んだ先の建物を巨体で吹き飛ばす饕餮。
ガララと崩れた建物……そして辺りはその光景を見て沈黙していた。
すると。
『がああああああああーーー〜っ!?』
瓦礫を吹き飛ばし立ち上がってくる饕餮。
俺は奴を見据える。
「あれがあのクロノ君……」
「以前よりも増して…凄くなりましたねお兄様。」
「ああ…しかし、以前と変わったのはクロノ君だけではないみたいだ。」
ジオウとテンテンが見据えた先に立っていたのは…魔神雷武。
そう…饕餮を吹き飛ばした奴は限界突破により人型に……。
見ていたのはハオユーとリーファ。
「クロノ君にも魔神雷武にもあれから何かあったみたいね?」
「ハオユー……そうみたいね……でもクロノ君も力をつけたみたいだけど…あれが…魔神雷武……。」
リーファが気づく。
そうなのだ。
そこに立ち尽くしているのは…長い深紅の髪を靡かせ…切れ長の鋭い目であの饕餮を見ていた男。
「魔神雷武!!???……あの大会の時とは全く別物となった様にも見えるのは……やはり何かあったのか。」
すると……。
突然辺りを包み込む闇。
急激なこの状況にこの場にいた誰しもが身体に震えを感じる。
その一瞬をつき…天から巨大な腕が現れる。
「あれは!?」
「また饕餮!?」
『ククク……もう簡単には………やられんーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?』
圧倒的な闇の力に何かを始めようとする饕餮。
その時。
奴の目の前にはあの魔神雷武と俺が立ち塞がる。
『さあ……いくぜ………クロノ。』
「ああ……雷武……コイツは…………。」
『「ヤシュア(ジジイ)の、攻撃」だーーーーーーーーーーーー!!??』
俺達の炎と雷は瞬時に巨大な力と化す。
それは雷のスピードと炎の力を込めた一撃。
ズババババーーーーーーーーーーーーっと放たれた攻撃は隠された饕餮の身体を強制的に引き出し……そして。
『ぐぎゃーーーーーーーーーーーーーー!?』
炎と雷に饕餮の身体は超攻撃を……受けたんだ。
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