チェンウォン世界編シーン63
「「なにーーーーーーーーーっ!?」」
俺達の更なるパワーアップに必要なのは…なんと魔神自体をパワーアップさせる事だった。
わなわなと震える雷武。
『この俺様自身のパワーアップだと?』
『そうさ、この世界を救う為には彼が真の勇者となる必要がある…それには彼自身はもちろん…そして魔神である…『魔神…雷武』……君もまた……力を得る必要があるのだよ。』
「なん……だと。」
『フフン…クロノ……コイツは俺様の力をより強力なとこまで到達……パワーアップさせる事ができるらしいぜ?』
「まじか…雷武……お前………。」
すると仙人『恋海』は俺達の元へとすぅーっと近づいてくる。
『ふむふむ……魔神雷武…今のコイツは力のみでまるでお粗末な魔神だねえ。』
『なんだとてめえ…。』
雷武に対してそう告げた『恋海』
そんな言葉をはかれて雷武が苛立つのは目に見えて分かった。
この仙人…何かの策のようなものでもあるのだろうか?
分かりやすい行動をとる仙人『恋海』に俺はそう思ってしまう。
『私はね…仙人の中でもとある力を司る唯一無二の存在なの…だからあの仙神達の生みの親ともいえるの…。』
『ぐぬう……おい!聖獣ヘキサ!?貴様こんな奴に……』
するとヘキサは応える。
『魔神雷武……そう…貴方はあの…魔族の王『ゼルドリス』と戦った…現在…世界に存在しうる者……この世界の希望の一人…貴方もまた勇者の力の一つでもあるんだよ…。』
そう言ったヘキサはいつものヘキサとは違った雰囲気を持っていた。
『ヘキサ……お前。』
『なーーーんて、これは僕がおじいちゃんにいつか雷武ちゃんに伝えておけって言われてた言葉なんだよ!』
「なるほどな……」
俺はその言葉に納得せざるを得なかった。
すると雷武はぷるぷると身体を震わせている。
『う……おおおおおおーーーーーーーーっ!?』
『雷武!?』
咆哮を上げる雷武の力が溢れ出す。
その力はこの大地をガタガタと震わせるには十分だった。
そしてその力は雷武の身体にスーッと集約されていく。
『魔王ゼルドリス…奴の息の根を止めるのはこの俺様だ…その為なら俺は…邪にでもなってやる。』
すると仙人『恋海』は口を開く。
『ふぅん……アンタ素敵じゃない…なら私の力で……最強をその身体に刻みなさい!!!??』
仙人『恋海』は『一振りの剣』を構え振りかざす!!
「何っ!?雷武ーーーーーーーーっ!?」
『なっ!?ガハッ!!???』
仙人『恋海』は雷武を一刀両断。
その瞬間……雷武は光となり……その存在を消していったんだ。
◇
◇
◇
雷武視点。
『ここは…?』
俺様の目に映ったのは幼き俺。
小竜だった俺様はどこかの国に存在していた。
俺の記憶が曖昧な世界、だけど、妙に懐かしく居心地が良い世界だった。
孤独?
そう……雷武は自分以外知らぬ者しかいない国に生まれそしてたった一人で戦ってきた。
すると…ありとあらゆる者が自分を恐れ刃を向けてくる。
いつしかそれは戦う事が俺の生きる意味になり…やがて俺を恐れ敬う者どもも現れた。
そして俺様は一国を支配していた。
本心かは知らんが俺を家族と呼ぶ者達も現れ……そこは俺の居場所となっていた。
なぜ?ここが居心地が良かったのか。
それは同族…竜族の集まりであったからだ。
俺はいつしか竜族の国を築いていたのだ。
◇
そんなある時。
我が国に一人の女がやってきた。
女の名は…『勇者ラブラ』
奴は変わった女で俺様を恐れなかった…いつしか俺は奴に心を許していた。
するとラブラは言った。
『魔王…ゼルドリス……奴は魔族でありながらも他の種族を支配しようとしているの…このままでは世界は奴の手により蹂躙されてしまう…だから貴方にも手を貸してほしい。』
と。
その時の俺はこの国の主でもある。
国の者達…そして家族を守りたかった。
俺はその手を握ろうとした。
ところがその時。
『しまった!!私を追って……くっ!?』
俺様の目の前でドス黒い闇は勇者ラブラをどこかに消し去ってしまった。
『な!?貴様!!誰だ!!!!!?????』
俺様がそう叫んだ瞬間。
一瞬で闇に包まれてしまった俺様。
その瞬間…俺様の意識は飛んでいた。
『俺は魔王ゼルドリス…これで勇者の希望…『竜族』の全ては終わりだ。』
そう聞こえた。
その後俺様は色々あって勇者と再会…魔王ゼルドリスをラブラは封じたが…復活…したんだよな?
俺様は。
俺は。
◇
◇
◇
『あの時…俺様に本当の強さがあれば!!』
「雷武!?」
ん?
なんだ…夢でも見てたか…忌々しいクロノが見える…。
コイツもあの時苦しみもがいて強くなりやがった…いつしか出会った頃の弱っちいガキじゃなくなったな。
コイツとなら…もしかしたら俺は更に強くなれそうだな。
俺様はもう二度と…誰にも負けん!!
そして…いつか……一族…俺様の家族を奪い去った魔王ゼルドリスを倒す!!!!!
『うおおおおおおおーーーーーーーーっ!?』
◇
◇
◇
俺様の全身から力が溢れ出している。
『フフ………アンタ……イケてるね。』
『恋海』は雷武の後ろ姿に、そう告げた。
◇
◇
◇
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