チェンウォン世界編シーン62
俺達は、このチェンウォンの聖地と言われる深い谷にきていた。
そして…そのまま深い谷底へと降りていく。
すると、辺りは深い霧に包まれていた。
ヘキサと共にスーッと降りていくと、谷底は深く中々、底まで辿りつかなかったのだ。
「結構降りてきたのに……まだまだ下が見えないな?」
「本当に…お兄さん気をつけて降りてね?」
「おう!!」
俺達は更に降下していく。
辺りには何も見えず真っ白な空間に包まれたかのようだった。
どれだけ降下したのだろうか…この世界が仮に地球の様な球体だったなら、裏側にまで到達するのでは?という程に長い時間がたった気がする。
すると次第に地面が視界に入ってくる。
「あれは!?」
「うん!お兄さん!もしかしたらあそこが到着地点かも?」
俺達は落下速度を緩めていくと…すーーーっとその大地へと降りたっていく。
俺とヘキサ…そして雷武は無事、この地に着地したんだ。
辺りを見回すも大地だけは見えるが後の景色は濃すぎる濃霧で真っ白な空間。
『お兄さん…ここが…仙人が棲むと言われる『仙人界』と呼ばれる世界だよ?まあ…僕も来たのは初めてだけどね?』
「そうか……随分静かな場所だな……」
俺達がそんな話をしていると。
『なんだ…これは珍妙な客人だらけだな。』
「「なにっ!?」」
その声に後ろを振り向くと…そこには誰の姿もなかった。
ところが。
『ん!?どこを見てる!?』
見回してもその姿はどこにもみえなかった。
「ん!?どこだよ!?」
『ここだってばーーーーーーー!!』
その声は聞こえているが全く目には映っていなかったんだ。
「ヘキサ!?お前は見えるか!?」
「ちょっ!?早くて見えてない!!移動スピードが早すぎるのよ!?えっ!?君ってまさか!?仙人!?」
『ほらほらーーーーーーー!?悔しかったらあたしを捕まえてみなさいよーーーーー!!』
俺達の目にも止まらず素早すぎるこの仙人とやら。
何をふざけてるのか、こんな事して遊んでる場合じゃないってのに。
俺がそんな事を考えていた。
すると。
『貴様ら何をしてる。』
そう言いながら前に出てきた雷武。
するとスタスタと俺達の目の前に出ていくと。
パシッと雷武はその手で宙を握る。
そして聞こえてきたその声。
『きゃっ!?はうううううううーーーーーっ!?』
その瞬間。
ぽわんと音を立てたそいつは煙と共に姿を見せ、その場にしりをついたまま痛そうにしている。
『いってててーーー。』
『あれっ!?君は!?やっぱり……。』
そう声を上げたのはヘキサだった。
するとそいつは腰を撫でながら起き上がった緑髪の女子の姿だった。
緑髪に長めの耳、そして背中には羽根を広げながら痛そうな顔で俺達を見ていたんだ。
そして俺はそいつに問いかける。
「お前は!?」
◇
◇
◇
『あたしはこの仙人界の長である仙人の『恋海』!こんな所までよく来たな人間!?』
そう偉そうに告げたのは仙人である『恋海』という女の子型の仙人らしい。
「ああ…俺はこの……ヘキサっていう……ん!?」
すると急に俺の腕にしがみついてきたヘキサ。
「いやあああ~~~!久しぶりだねえ!『恋海』元気してたかなあ!?」
『ん~~~あ!どこかで見た事あると思ったらアンタは聖獣ヘキサか~~!?』
「ん!?なんだこの二人は!?」
『ん~~~知らん。』
「「はぁぁぁ。」」
俺と雷武は『恋海』とヘキサの行動に溜息をついたのだった。
『ん!?ていうかヘキサ!アンタ、その手は何さ!?』
『えっ!?ああ、ほら、以前会った時に次会う時までどちらが先に彼氏つくるか勝負したじゃない!?だからね?もおー言わなくてもわかるでしょー?』
照れながら赤い顔をして身体をくねらせているヘキサ。
なんなんだ一体。
すると…『恋海』は俺の顔をジロジロ眺めてくる。
それもウザイほどにだ。
そして溜息を吐いた『恋海』は口を開く。
『はあ……なんていうか…ヘキサ…今のところは勝ちはアンタに譲るわ…でもあたしだって負けないわ。』
何の話をしてるのか。
俺も雷武も二人の会話に呆れていた。
するとヘキサが口を開く。
『ふふ…いいわ…では今回僕が勝ったという事でお願いを一つ叶えてもらおうかな!?』
「ヘキサ!?」
俺が声を上げると俺の言葉を制止するヘキサ。
すると『恋海』がため息を吐きだす。
『ふぅ……まあいいわ……でもね?アンタの彼氏のパワーアップはあたしではもう無理みたいよ!?』
『そっかあ……まあクロノは特殊だしね……でもね…今回の敵は……あの……』
『饕餮……でしょ!?』
「ああ…アンタも流石に仙人なだけあってもう、情報は入ってるって事なのね?」
『もちろん……でも敵はあの饕餮…奴らを放置はできない…それも分かる…でもそれなら何が今必要なのか!?わかるかな?』
含み笑いを浮かべ俺達に問うてくる『恋海』
「その答えは…….」
俺達は答えを待つ。
すると雷武に向け指を指す『恋海』
『そう、魔神のパワーアップよ!!!』
「「なんだってーーーーーーーーー!?」」
俺達三人は声を揃え驚いたのだった。
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