チェンウォン世界編シーン56
私達の頭上の暗雲から何か恐ろしい力を感じる。
するとバチバチという轟音の中。
暗雲に紛れた巨大な顔が見えだしてくる。
「あれは……」
「四悪神最後の一人……饕餮……全てを喰らい尽くす………化け物だ。」
◇
◇
醜悪なその表情と暗闇から這い出てくるその悪魔はこの地を破壊…喰らい尽くす悪神『饕餮』。
すると奴はその巨大な口の端からモヤモヤと黒煙を吐き出しはじめる。
『くははははははっ…我が名は『饕餮』…この地の全てを我が食糧として食らってやろう………。』
「ここまできてしまったのね……なら……リオちゃんと鉄星様は……。」
「カルマさん……きっと二人は大丈夫!!信じましょう!」
イシメール君のその声に私も唇を噛む。
「くっ!?でも…これは……このままでは。」
私の肌にもビリビリと感じる饕餮の溢れ出す力。
するとエンポリオ君が口を開く。
「カルマさん……ここはあの力を使うしかありませんね?」
「ああ…私達のパワーアップした力ね。」
「はい。」
するとそこへサキノちゃん達が声をかけてくる。
「カルマお姉ちゃん…無理しないでね……クロノお兄ちゃんみたいに寝たままになっちゃやだよ。」
「サキノちゃん。」
私達が合流したけどクロノは寝たままになっていた。
クロノはもう一人の敵……『檮杌』その敵を倒したがクロノは力を使い果たしそして未だ目覚めない…そう聞いた。
こんな時にクロノがいないなんて。
私はそう考えていると。
あの怪物が口を開く。
『ククク……さあ……食うか。』
饕餮の大地に響く、その声に私達は身構える。
次の瞬間。
ゴゴゴと轟音を立て奴の全身がこの世界に降臨する。
すると饕餮は巨大な口からモヤを吐き出していく。
「うわーーーーーーーーーーーーーーっ!?なんだ!!」
モヤに絡まれた誰かがそう叫ぶ。
すると。
ぐしゃっ!!???
「ぐあああああああああああーーーーっ!?」
モヤに包まれたその者は一瞬でぐしゃっと圧死してしまう。
そして聞こえてきたのは肉化してしまったその者を喰らう饕餮の咀嚼音。
バリバリボリボリっという音は饕餮の恐ろしさを物語る。
ニヤリと口から血を滴らせる饕餮。
次の瞬間。
ぐしゃーーーーーーーっ!?
ぐしゃっ!!
そんな音と共に次々と饕餮の食糧になっていく街の人々。
『がああああああーーーーーーーーーっ!?』
◇
「くっ!?化け物め!?」
真っ先に飛び出したのは朝明さんだった。
彼が自慢の『大槍』を手にふるい饕餮に斬りかかっていく。
そして朝明さんに続き二人の男達が飛び出し三人の一斉攻撃だ。
「朝明さんに続け!?」
「この地の戦士の誇りと共に!!???」
「我らの力を見せてくれる。」
三人は各々魔神具を構える。
そして一気に飛び出す三体の魔神。
「俺の魔神『カメムシ』の「ガスアタック」を食らえ!!!」
「我が魔神『セミ』がお前に一撃を!!?」
「二人にも負けぬ魔神『王蜂』よ!!悪神に鉄槌を!!!???」
「これは!!??」
「朝明さん!!???凄い!!!」
朝明さんに続く二人の魔神がいち早く饕餮の身体を捕らえる!!
「「もらったーーーーーーーー!!???」」
その時。
時が止まった気がした。
二人の魔神の攻撃が饕餮の身体に入っていく。
その瞬間。
ズシャーーーーーーーーーーーーーーッ!!っと激しい切り裂き音が響き渡る。
すると。
「ぐぶっ。」
「がはっ。」
二人が口から激しく血を吹き出す。
次の瞬間。
二人を巨大な黒い口が咥える。
苦しみと恐怖の表情を浮かべ……二人は絶命してしまったんだ。
「うおおおーーーーーーーーーーっ!?化け物ーーーーーーーーーーーーー!!???」
激高した朝明さんが叫ぶ。
朝明さんの魔神が羽根を広げる。
その魔神は巨大なスズメバチの姿。
バッと空中に飛び立つスズメバチ魔神。
「俺の魔神は『スズメバチ』型……名は『王蜂』このチェンウォンの仙神の頂点とも言われる魔神の攻撃で復活した事を悔やむがいい……。」
シュンシュンっと饕餮の身体の周りを飛び回るスズメバチ魔神。
その巨大な様に大概の生物は恐れるであろう。
そして朝明さんは手に握る魔神具『王蜂槍』
を振りかざす。
「ゆくぞ饕餮……我が魔神の超攻撃をその身体に刻むがいい………。」
ずざっと地を蹴り飛び出す朝明さん。
空中で朝明さんの『王蜂』は饕餮の身体を捕らえる。
『スズメバチ……猛毒の一撃…………』
『オニゴロシ。』
ドガガガーーーーーーーーーーっと饕餮の身体目掛け朝明さんの一撃が決まる。
「やった!!!」
「凄い!!朝明さん!?」
ずがーーーーーーーーーーんっと饕餮の巨大な身体は吹き飛びそれは岩々を粉々にしながら飛んでいく。
そして巨大な山に激突していったんだ。
皆が一斉に笑みを浮かべる。
そしてやりきった朝明さんもほっと一息つく。
その時。
辺りの時が止まった気がした。
皆の喜びの表情が驚きの表情へと変わる。
朝明さんの元に走りよる者。
テンテンもその一人だった。
だがテンテンの表情もたちまち絶望の表情へと変わる。
「朝……明さーーーーーーーーーーーーん!?」
テンテンの叫ぶ声が聞こえたか…聞こえなかったのか。
朝明さんの身体は……饕餮の巨大な口に。
その半身を食われ。
そして彼は立ったまま。
口からドクっと大量の血を吐き出し……絶命してしまったのだ。
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