チェンウォン世界編シーン55
その頃……まだ目覚めぬクロノ。
そしてヤシュアが口を開く。
「ロンレイ様……………。」
そこには身体が切断され、もう動かなくなってしまった上半身だけのロンレイ様がよこたわる。
マジェスト協会チェンウォン支部長…ロンレイ。
彼の先祖はかの悪神達を封じてきた一族。
そして、ずっとこの地を守ってきたのだ。
その子孫であるロンレイ様は今…悪神達の長年の深すぎる恨みつらみを晴らす為、今犠牲になってしまったのだ。
すると。
「うううぅぅ……ヤ…シュ…ア……か……?」
「はい……ロンレイ様。」
「先代からの命…我が…先代………ヤシュア……お主の先代……そしてあの……『鉄星』の先代の誓い……ワシが醜態を晒して…悪神を放ってしまい……本当に……申し訳…ない。」
「ロンレイ様!!何を言うのです!!貴方はこの地…いえ!!世界を守る為に幼きよりその為だけに戦ってきたではありませんか!?」
皆が見守る中…ヤシュア様は目に涙を浮かべそう叫ぶ。
するとロンレイは。
「はあ……はあ………ハオユー……いる……か?」
「はい!!ここに!!」
ハオユーは涙を流しながらロンレイ様の手を握る。
「ハオユー……ワシの最後の弟子よ…ワシはお前にワシの後を任せたい。」
「えっ!?それはどういう事ですか!?」
「ワシは…こんな身体に…なってしまった…孫のリーファと共に…力を合わせて……。」
徐々にロンレイ様の力が弱まってくる。
「おじいちゃん!?」
リーファもその様子にロンレイ様の手を握る。
「はは……リーファ…最後に…お前の花嫁姿でも見たかったが……それは…お前達二人をみれば。」
「おじいちゃん……今まで……ありがとう。」
リーファが涙ながらにそう答えると…ロンレイは笑顔を浮かべる。
そして……スーッとロンレイ様は意識を手放していった。
「「ロンレイ様ーーーーーーーーーー!?」」
◇
◇
◇
こうして、ロンレイ様は遠くへ旅立ったのだった。
◇
その時。
ズサっという足音。
二人の男と……一人の女性の姿があったんだ。
◇
◇
◇
「ヤシュア様!!??」
その声は。
「「カルマ!?エンポリオ!?イシメール!?」」
三人の仲間達の姿があったのだ。
◇
◇
◇
カルマ視点。
私達はヤシュア様達の元に合流した。
だけど…見た所…あのロンレイ様は……亡くなったらしい。
皆の視線が鎮痛なこの状況を物語る。
すると。
「カルマお姉ちゃん!?」
「キャッ!?」
その中で大声で私に抱きついてきたのはサキノちゃんだった。
「サキノちゃん!?」
「カルマお姉ちゃん!?おかえりなさい!!」
あの大会で敵として登場した私達。
その事実が私達三人に暗い影を落としていた。
そこで私達の元にきてくれたサキノちゃん。
「サキノちゃん……ただいま。」
◇
◇
◇
「それで……あの悪神の最後の一柱が復活してしまった…そういう事なのじゃな!?」
「はい…リオちゃんが囚われ…鉄星様は救おうとして……でもあの化け物の力は規格外で…私達に希望を伝え……私達は合流する為にここへやっと来れたのです。」
皆が私の言葉を聞いてくれていた。
◇
「ふむ……なるほどの……しかしあの鉄星が未だにマジェストにこだわっていたとはな。」
そこへ口を開いたのはジオウ様だった。
「なるほど……そこまで聞くと鉄星という男…邪悪な教団を束ねる男かと思っていたが…その理由はヤシュア氏との確執の問題であったと……。」
「はい……若かれし彼はどれだけの修行を重ねてもマジェストにはなれなかったようです…そこでロンレイ様の元を訪れたのですが…そこに天才マジェストと呼ばれたヤシュア様がいた……そこからロンレイ様とヤシュア様への恨み妬みを抱いたとお聞きしました。」
私の言葉にヤシュア様は考える表情へと変わる。
「鉄星を含めたワシら……三人の祖先はその昔……悪神達を封じたという……そしてその力を本来ワシらは持つハズだった…ところがあの鉄星には、とある理由でその力が渡らなかった…それは……鉄星の生まれに関わっていたと聞いた。幼くして鉄星の元に魔神は現れたと聞く…幼き鉄星の元に忍び寄った魔神は恐ろしい力を持った魔神だったらしい…その力は幼い身体に耐えきれなく危険な状況に鉄星の母親は街を這い回り鉄星を救いたいと懇願したという…どんな医者でも手を挙げるしかなかった時に現れたのが若きロンレイ様だった……封印の力が秀でていたロンレイ様は幼き鉄星の魔神を封じ…それ以来、奴に魔神を従える事は出来なかったのだ。」
私達は驚愕の事実を知る。
「そんな事があったのですね。」
「ああ…ワシはその話を聞かされておってな…鉄星の分まで強くなろうとしたのだが、鉄星の目には鬱陶しく映ったのだろうな。」
私達は鉄星様の話を聞き真実をしった。
「ならば…鉄星様を含め、この地を守る為に共闘しようではないか!?なあ!?皆の者!?」
ジオウ様の言葉に皆が気持ちを新たにする。
すると。
いつしか空に暗雲が立ち込めていた。
「な!?なんだあれは!?」
「お兄様!?嫌な邪気を感じます!!」
ジオウにテンテンも気がつく。
そして叫んだのはリーファとハオユー。
「皆さん!!気をつけて!!」
「あの雲は………『饕餮』です!!!!!」
「「なにっ!!???」」
そう、私達はあの饕餮のテリトリーに包まれていたのです。
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