チェンウォン世界編シーン52
リオ視点。
「リオ…………。」
「リ……オ………。」
鉄星様の声が聞こえる。
私は…重い瞼を開いていく。
気がつくと私の身体は地面に倒れていた。
身体を起こそうと思うが、視界がまだブレる。
私は油断しているうちにあの饕餮に捕まっていた。
そして…その巨大な力の前に鉄星様はカルマちゃん達を逃がして…私はあの怪物に食べられたのかと思っていたの。
その時。
私の意識の中に今度は強く鉄星様の声が聞こえてきた気がした。
「鉄……星様……………。」
「リオ………………………。」
私の傍に鉄星様の何かを感じる。
私の心は温かくほっとする。
これはきっと鉄星様が傍にいてくれるんだ。
あの怪物に捕まっていた時はもの凄く悪寒も止まらなくて寒かった。
でもこの力は違う。
鉄星様の私への愛情を感じる。
私達の意識はお互いの繋がりをもとめ意識する。
『これは………鉄星様…………。』
『リオ………ワシらには何かがあるというのか。』
『そうなのかも…知れませんね…私も鉄星様に出会ってから鉄星様に何か不思議な繋がりを感じていました。』
『リオ……ワシもなのだ……何故かリオに感じていた…よく分からなかったのだが…実はお前には傍にいて欲しかったのだ。』
『鉄星様……。』
私達の意識は繋がっていた。
今までこんな事はなかった。
すると…鉄星様は告げる。
『リオ……ワシはこの饕餮を倒す為に持った力を使用する。』
『鉄星様の……力!?……確かに鉄星様は魔神の力無しでもお強いですが…あの饕餮の力は次元が違う神の力……危険です。』
『いや……リオ……お前にだけははっきり伝えておこう……ワシはあの武闘会でも使ったのだが…マジェストになる為に修行をしていたワシはいつしかマジェストの力に似た魔神を支配し操るという力を得たのだ。』
『鉄星様……それは凄いです…。』
『ああ……それは魔神によるのだが……あの饕餮に通用するかどうかは分からない。』
『確かにそうですね…あの敵饕餮は並の魔神とは違います……それは危険すぎます。』
すると。
私の頭にポンっと触れてきた気がしたの。
それは鉄星様の温かい手が私の頭を撫でていた。
『鉄星…………様!?』
『リオ……不思議だ……ワシのこれまでの人生でこんなにこの人を守りたい…などと思った事はなかった……ワシは初めて……ここまで大切に…ワシがリオ……お前をこの生命に変えてでも守ってやる。』
『鉄星…………様……。』
私の中でも彼と出会ってから不思議な事に彼の存在が大きくなっていた。
『鉄星様……実は私も……初めは何かの力で教団の支配なのかと抵抗しようと足掻いたのですが……貴方はどこか違ったのです…街の人々にも、あそこまで慕われて…カルマちゃん達も、私同様…初めは何かの力を利用され操られたのかと思っていましたが……何か違った様子で…いつしか私も鉄星様の魅力に惹かれてしまっていました。』
『リオ…………。』
『何か鉄星様には。』
『ワシはこの地……そしてお前を…守る。』
『鉄星様……私は鉄星様…を…………。』
私が言葉を続けようとすると。
いつの間にか私達の目の前には何かが光り輝き浮いている。
「ん……!?やはり……魔象牙杖……。」
鉄星様の言葉に私も我にかえる。
すると私は鉄星様に抱きかかえられていた。
「鉄星様!?」
『なんの……つもりだ!?』
私の声に重ねるように饕餮が鉄星様に問いかける。
いつしか私達の目の前に立ちはだかるように姿を見せていた饕餮。
その姿は恐るべき怪物だった。
「リオ…………いつの間にか我々をこの魔象牙杖が守ってくれていたのかも知れぬ。」
「鉄星様……そんな事が!?」
すると鉄星様が頷き答える。
「ああ…前に聞いたお前の父の話……お前の父がこの魔象牙杖を通し我々を守ってくれていたのかもしれん。」
「パパ……」
鉄星様の言う通り…確かに今こうして私が守られているのは鉄星様とパパがいてくれたからこそかもしれない……。
「リオ……ワシは魔象牙杖に認められるだろうか……。」
鉄星様の少し寂し気な表情。
私はその表情に身体に力が戻ってきた気がしたの。
地に足をつけて立つ私。
「リオ!?」
「鉄星様……私もいます……私も鉄星様に力を。」
私は鉄星様の手を握る。
「リオ。」
すると魔象牙杖を片手に握る鉄星様。
「スクエル……私達に力を貸して。」
フラフラとしていたスクエルには力が戻り私達の身体をつたいするすると魔象牙杖の元へと向かう。
「リオ。」
「鉄星様……きっと私達二人ならこの危機を乗り越えられます!!」
「ああ!!リオ……必ず………ワシはお前を守る。」
私達の心が重なった気がした。
私達の身体から力が溢れ出してくる。
「「魔象牙杖!!その力を!!!」」
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