チェンウォン世界編シーン50
ロンレイ様の口から大量の血液が溢れ出る。
皆の見ている前でこんな事が起こるなんて……。
「がはっ!!」
「ロンレイ様ーーーーーーーーーーーっ!?」
「いやあああーーーーーーーーーーーっ!?」
その他に響き渡るリーファさんとハオユーさんの叫び声。
すると……渾沌は口を開く。
『あーーーあ……死んじまった…か……ぷっ!!』
渾沌は咥えていたロンレイ様の動かなくなった遺体を吐き出す。
ロンレイ様はただ……地に転がる。
「ロン……レイ………様。」
ハオユーさんが立ち尽くす中……リーファさんは膝から崩れ落ちる。
「ロンレイ様……………」
その目からは涙が溢れる。
『さあ……怒りに任せて殺してやったが……スッキリしたぜえ……俺様達を長い事封じてやがったあのロン…一族はこれでもう……根絶やしだ。』
すると。
皆が動けない中……一人の男がここへ辿り着く。
「渾沌……もはや許せぬこの状況……ワシは。」
その時この場所をシューーーーーッと突風が吹き抜ける。
「ん……この風は…………………!?」
「「ヤシュア!?」」
風の鳳凰は空からすーーーーーっと降り立つ。
「これは………魔神同化……やはり……この男の力は……並じゃなかったか。」
ハオユーはヤシュアを見てそう言い放っていたんだ。
『皆の者……遅れてすまなかった。』
そこへ声を上げたのはサキノだった。
「おじいちゃん!?」
「おお……サキノ…お前は無事だったようじゃの。」
「うん……でもお兄ちゃんが檮杌って敵を倒して寝たきりになっちゃって……しかも今度はロンレイ様が。」
サキノは悲劇の連続に弱気な言葉を吐いてしまう。
「大丈夫じゃ……ワシらの力を今こそ結集し……まずはこいつを片付け…ロンレイ様を弔うぞ。」
「おじいちゃん……でもその身体は……。」
今現在、ヤシュアの身体は魔神である『風鳳凰』の身体を借りて存在していたのだ。
『ああ……サキノ…終わったらこの秘密は話そう。』
「うん。」
ヤシュアはそういうとサキノに微笑み語った。
すると。
ヤシュアは再びその身体に風を纏う。
ゴゴゴと巻き起こる風。
するとリーファが口を開く。
「ヤシュア様!?」
リーファの言葉を遮るように渾沌が口を開く。
『なんだ……貴様……あれで死んでなかったのか?』
「「!!!???」」
皆は驚きの表情へと変わる。
「さっきは貴様に奇襲をくらい……ロンレイ様まで囚われてしまった…そしてロンレイ様を貴様は……だが…ワシにも過信と油断があった……。
風はこの時ヤシュアの身体を包む竜巻に変わっていた。
「渾沌よ……ワシも大概…悪党と戦ってきたが…ここまで怒りに震える事は…初めてじゃ。」
「ヤシュア……さん……その身体は…まさか。」
「ハオユー……人にはやらねばならん時もあるって事じゃ…気にするな。」
すると渾沌は大声を上げる。
『ぐああああーーーーーーーーっ!?コノヤロウ!!!!!???俺様を本気でやろうっていうのか!?そうはさせん!!!??』
竜巻は爆発的な爆風に変わる。
そして……そのエネルギーはやがて手のひらサイズの超圧縮された風の球体へと形を変えていた。
「それは…………」
「伝説の武術のエネルギー弾………『風鞠』」
「なんと!?あれは。」
「お兄ちゃん知ってるの!?」
ジオウもヤシュアの技を知っているのかも知れない。
「ああ…かつて…勇者様と共に……この地を救ったと言われるこの地の英雄『風璃』がコイツら悪神を封じた時にトドメをさしたと言われる技だ…まさかヤシュア様も……。」
この地に生きる四人はヤシュアの放とうとしている技を知っていたようだ。
「フフ……我が先祖に伝わるワシのとっておきの技じゃ……」
『ガアアアアアーーーーッ!?やらせるかーーーーーーーーーーーーーーーーー!!???』
最大級のエネルギーを纏った渾沌はヤシュア様に襲いかかる!!???
「「ヤシュアーーーーーーーーーーー!?」」
◇
渾沌はボコボコっとヤシュア様の攻撃に耐える為の岩々をその巨大な身体に纏っていく。
「フン……前々とは俺は違う……このままこのジジイを俺様の岩でミンチにしてくれる!?」
すると渾沌の目の前に突然その姿を見せたヤシュア。
ヤシュアは身構える。
そして。
「終わりじゃ……『風世界』。」
次の瞬間……。
ヤシュア様の超圧縮エネルギー弾は渾沌のからをとらえる。
『ん!?なんだ…これは!?俺様の身体に当たったが……何もおこんねえじゃねえか。』
そして…時を経ると。
『ぐぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!???』
渾沌の身体はヤシュアの超圧縮エネルギーにて身体中の全てを風に切り刻まれ。
断末魔の叫びを上げ、消えていったのだ。
◇
◇
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