チェンウォン世界編シーン43
リオ視点。
私は鉄星様の元にいた。
「うぐっ!?」
「鉄星様!!???」
私は鉄星様の受けた傷が深い事を案ずる。
見るとお腹に刺さったであろう傷口から出血していた。
イシメール君の処置…そして今スクエルの力で痛みの和らげるカード能力で癒している所だった。
「大事には至らなくて本当に良かったです。」
「ああ…すまないな…リオ。」
「いえ…鉄星様…まずはお身体が最優先です。」
「だが……リオ……お前達マジェスト達に出会ってワシは長年の夢であったマジェストに近づく事のようやく一歩踏み出せた気がしている…感謝する。」
私は鉄星様の素直な気持ちの伝わるその言葉に温かい気持ちを覚える。
「いえ…鉄星様のずっとヤシュア様をライバルと思い、力をつける為に長年修行し続け…今やっとこうして一歩前進できた事は本当に喜ばしい事だと私も思います。」
「ありがとうリオ……しかしリオ…これまでワシも確かにヤシュアはじめマジェスト達とは出会ってはきた…だが…ここまで力をもらえているのは初めての事なのだ…これならワシが魔神に出会いマジェストとなる日も近いのかも知れぬ。」
鉄星様は痛む傷を抑えつつも少年の様に目を輝かせ…そう話す。
そんな彼に私の瞳も吸い込まれそうになる。
「鉄星様の長年の夢……叶う事…私も応援していきます。」
「夢か……そうだな……これまで何びとにも語った事のなかったワシの過去…そして夢…リオ…お前はこのワシの心を開かせそしてワシの痛みを知ってくれた…初めはワシの復讐にとその力を欲していたが…今は違う…ワシは世の為にこの力を使いたい…あの…ヤシュアのように。」
「鉄星様……ならばやはり鉄星様の正義の信仰をこれから世に広めていけば……。」
すると鉄星様は首を横に振る。
「いや…ワシのこれまでの生き方がある…ワシは世からは認められなくても良い…ただワシはリオ…お前はじめ…せめて気の合う仲間たち…この手に掴み取れるだけの人々を救えれば。」
そう話した鉄星様。
それは過去にどこかで聞いた事のあるセリフ。
そう…これは私の父である『レギオン』の言葉。
いつしか私はかつての父の姿を感じるようになっていたの。
「世の中の人にはワシは怪しき宗教団体の教祖……それでいい…だから…リオ…ワシのこの言葉はお前の中にだけしまっておいてくれ。」
そんな事をいう彼に私は問いかける。
「私なんかでいいのですか!?」
すると鉄星様は私の髪に触れてくる。
頭を撫でてくれるその仕草と優しい笑みに私は父の愛情を思い出していた。
そして彼は私を抱きしめてくれる。
「鉄星……様。」
「リオ……ワシと出会ってくれて…ありがとう。」
その言葉に微笑み返す私。
「鉄星様……私は鉄星様の忠実なる崇拝者…貴方様がいてこその私の人生なのです。」
「リオ…ずっとこれからも我が力となってくれるか!?」
「はい…御心のままに。」
私はそう告げていた。
すると。
するするっと私の頭の上から降りてくるスクエル。
スクエルは鉄星様の身体にうつり、肩まで乗っていく。
「スクエル!?鉄星様は体調が悪いのよ!?」
「おお……スクエル?どうしたのだ!?」
すると次の瞬間。
不思議な光景を私達はこの目にする。
スクエルがキキッと一鳴きした瞬間。
目の前にあった神の祭壇が光り輝き出す。
「何!?どうしたっていうの!?」
「リオ……あれは!?」
「鉄星様……えっ!?」
次の瞬間……。
祭壇の上に何かが光り輝いていたの。
その物をよく目にすると。
「おお……あれは……魔神具……なのか。」
「鉄星様……そしてあれは…。」
私の目に映った魔神具は。
実に懐かしさを感じる。
「あれは……私のパパが愛用していた魔神具……魔象牙杖です。」
「リオ……なぜそれがここに!?」
私にも分からないこの状況。
パパが死んで共に消えたはずの魔象牙杖が何故かここに存在している。
本来マジェストと共にある魔神具。
マジェストも消えれば魔神も共に消える。
それがパパ亡き後こうしてここに復活するなんて…やはり、古代三大魔神とは何かが違うのかも知れない。
私はそう考えていた。
「リオ…見えるぞ…今ワシの手に触れようとしているエレファモス…そして魔象牙杖…これは。」
「鉄星様…きっとエレファモスに鉄星様は選ばれたのですよ。」
「リオ……ワシは遂に……マジェストになれるようだの。」
「ええ。」
私達はエレファモスにより不思議な幸せを感じていたの。
そして……鉄星様の手に魔神牙杖が触れようとしたその時。
ドーーーーーーーーーーーーーーーンっという衝撃が建物を激しく揺らしたの!!
「リオ!!!???」
「鉄星様!!!???」
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お読み下さりありがとうございました。