チェンウォン世界編シーン41
その時……檮杌と朝明の魔神具はバチバチと重なる。
二つの魔神具はその力を顕にしバチバチとぶつかり合う。
「魔神具……だと!?」
『フン……我の場合の魔神具というのは…これは我が身体の一部…そういった方が正確だがな。』
そう言った檮杌が如意棒を握る。
すると如意棒がその形状を変えていく。
「それは……………」
『俺様と戦ってくれるのだな…楽しくなってきやがった…さあ……いくぞ。』
その瞬間。
「くっ!?」
ガキンッと瞬時に朝明は自分の魔神具である槍で檮杌の伸びてきた刀身を食い止める。
刃が重なりジリジリとお互いの力と力のぶつかり合い。
押しも押されぬ攻防。
だが。
「うぐぐ………くっ!?化け物め。」
ガキーーーーーーーんっと音を立て檮杌の刃を弾く。
「くっ!?力の押し合いはきついか!?」
『ククク…そんな余裕があるのか!?』
檮杌のその声。
次から瞬間。
ズブブ!!!!!
「がああああっ!?」
朝明は突然背中に激痛が走り口から声が漏れてしまう。
追ってくるのは激痛とそして胃から湧き上がってくる何か。
「ぐっ!?がはっ!?」
口から吐血し身体中の力が抜けていく朝明。
『ククク……弱い…弱いのお。』
一歩…また一歩……ゆっくりと朝明に近づいて いく檮杌。
朝明はこの化け物の毒牙にかかり…動けずにいる。
彼は血を吐き薄れゆく意識の中……。
◇
◇
◇
所変わり……武闘大会会場。
「さあ、僕の準備はできてるけど一緒に行く人達は決まったかい!?」
そう声をかけたのはヘキサ。
一見見た目はチャーミングだが、これでも世界の聖獣の血を引くれっきとした孫なんだ。
「おう!!俺達はいつでも準備はできてるぜ!?」
「うんうん!いいねえ!……って、はいそこ!!くっつきすぎ!!」
そういいながら俺とサキノに指をさしてくるヘキサ。
「な!?テンテン!?お前も僕にくっつきすぎではないのか!?」
「お兄ちゃん!そんな事ないよー!?気にしすぎ!」
そう言い合っているジオウとテンテン。
そして。
「ふぅ…ヘキサさんの言う通りにしませんとまたあの時のようにはぐれてしまう者も現れるかもしれませんよ!?」
「なんだ!?何かあったのか!?」
リーファにそう問いかけるハオユー。
「説明は後で。まずはあの敵、檮杌の後を追わなければ…でもヘキサ様!!正確な場所は分かりましたか!?」
「うん!!もちろん!!って……えっ!?誰かが今戦っているみたい!?」
「「なんだって!!???」」
俺達は一斉に驚きの声を上げる。
「おい!?ヘキサ!?その戦ってるやつってどんなやつだ!?」
「お兄さん……うん…その人はあの人だよ……大会前にここであった人。」
するとテンテンが何かに気がつく。
「もしかして……」
「うん……気がついたね…そう……テンテンのよく知ってる…朝明さんって人みたいだね。」
「今戦っているって事か!?」
「そうみたいだね……いい戦いはしてるみたいだけど。」
すると誰かが声を上げる。
「朝明さんって言ったら前大会の優勝者だろ!?なんとかなるんじゃないのか!?」
「でも敵はあの化け物…いくら朝明さんだからとはいえ……」
そういい深刻な表情を浮かべるテンテン。
朝明さんと前大会において全力で戦ったテンテンだからこそ彼女からすれば心中穏やかではないだろう。
「テンテン……。」
ジオウも彼女のその表情にどう声をかけていいのか戸惑う。
俺はそっとテンテンの頭の上に手をおく。
「クロノ……さん………。」
「テンテン……お前もジオウも……今まで大切だった人達を失ってきた…」
テンテンの身体は小刻みに震えている。
「でも……だからこそ!これからは笑顔でいてくれよ。」
「クロノさん!?」
テンテンの潤んだ瞳から涙が零れる。
「大丈夫だ…テンテン……お前の表情は…俺が笑顔にしてやるからさ。」
俺は笑顔を見せる。
「クロノさん!!!」
しがみつくテンテンの頭を撫でる俺。
数名の背中に刺さる視線は感じたが。
◇
「さあ!!では皆…転地サークル内に入って!!」
俺達はヘキサの能力内に入りその時を待つ。
ヘキサは俺と視線を合わせてくる。
俺は頷く。
そしてヘキサは笑顔を見せると。
『転地!!』
ヘキサの能力を使用した俺達。
そう奴がいるであろう、この地に直ぐにでも来る為に。
そして。
どーーーーーーーんっと言う音が聞こえた瞬間。
一瞬視界を失う。
次の瞬間、宙にあらわれた俺達。
この地は明らかに知らない地。
するとそこには。
檮杌…そして戦っていたのはやはり、あの男。
「朝明さん!??」
「おおっ……テンテンなの………か!?」
この恐慌からこの地を守る為に俺達はここに辿り着いたんだ。
◇
◇
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