チェンウォン世界編シーン39
俺達の目の前から飛び去った檮杌。
これはやばい。
このままではこのチェンウォン…もしかしたら世界にまであの化け物の恐慌が及ぶかも知れない。
そう思った俺達は奴の後を追撃する方向を考える。
「くっ!?やつもあの恐るべき悪鬼の中の一体か!?だがケタ違いすぎてるな。」
「こうなったらまた皆でやつを狙うしかないか!?」
すると一人の男が震え声にする。
「ま、まてよ…これは、強制ってわけではないんだろう!?」
「なにっ!?」
「だって見たかよ!?あんな化け物が一体二体と……次から次へと出てきて……今飛んでいった奴なんて。」
そうなんだ。
確かに今飛び去った檮杌という化け物はそれほど恐るべき力を秘めていたんだ。
すると別の男が口を開く。
「檮杌……かつての四大魔神でも好戦家で他の化け物達とは一線を画す奴だとか。」
すると。
「まてよ!?」
そう言い放ったのは俺達と一戦を交えた者。
『マース』の声だった。
「皆もよ……こんな化け物相手じゃ確かにこええかも知れねえ…でもさ…戦えるのは俺達マジェストだけなんだぜ!?」
「そんなお前も姫さんに負けたじゃねえか?お前はアホなのか!?」
「ぐっ!?次は勝つって言っただろうが!?」
「マース!?よく言ったわ…それでこそ私のライバルだわ!?」
「テンテン……ああ!!当たり前だろ!?」
すると。
「皆の者!?よく聞くがいい!?我はジオウ国国王……ジオウである!!???」
ジオウの声がこの会場内にこだまする。
急激に収まる会場内の声。
皆がジオウの言葉を待つ。
「此度の件…この僕も一部始終この目で見る事になった…元凶である過去の恐るべき悪鬼達…二体は倒れたとはいえ更なる悪鬼が出現し…そしておそらく…この地…チェンウォンのどこかへ飛び去ってしまった…奴の素性の全ては分からぬが戦闘狂と聞く奴はその辿り着いた先で暴れ回るであろうと僕も思っている。」
「王子!?でもそんな化け物だったなら誰もが食われるだけじゃないのか!?」
「そうだ!!俺だってそんな化け物と戦う為にこの大会にきたんじゃないぞ!?」
「そうだぜ!?俺だってここへは生まれつきマジェストの力を持ってて俺の周りでは一番強いと思っていた…だから参加しただけだ!!」
するとジオウはそんな彼に話す。
「そうか……。」
ジオウはカンナの元まで歩いていくとマイクを譲り受ける。
「ありがとう。」
するとジオウは一息吐き出しすぅーっと吸っていく。
『僕はまず強制はしない、命懸けになるであろうこの戦いに強制などは出来ないからだ…だけどね…ここで僕の友人の話をしよう……この友人は…僕達の暮らすこの世界の人間では無いんだ…
。…』
その言葉に聞き入る皆々。
『その彼は色々あっただろうがこの世界にやってきた。そして戦いという概念がない世界で生きてきた彼は魔神の力を手に入れた…そんな魔物の存在すらない世界からきた彼はこの世界で魔物との戦闘を訳も分からずする事に…そして。』
『彼はこの世界に来ても大切な人、友人達、そしてこの世界の国々の為にその身を呈して戦ってきてくれたんだ…そして人々の為にまたその力を振るってくれようとしている。』
するとジオウは強く言い放つ。
『そんな人が…この世界の…この地の人間ではないそんな彼が戦ってくれようとしてるのに…住人である我々が戦わずしてどうする!?』
ジオウ…彼のその言葉に、俺は…いつしか震えていた。
「お兄ちゃん……そうね……本当にそう……彼は本当に……素敵よ。」
テンテンはそう一言。
ジオウの元へ行くとマイクを奪う。
『皆さん!?私はジオウの妹……テンテンです!!そして私も無理強いはしません…ですがこの地…そしてあなた達の大切な人がいるならその方を守る為に…今こそ…私達と共に!!!…………戦いましょう。』
「「うおおおおおおおーーーーーーっ!?」」
ジオウ、そしてテンテン……この二人……やはり人の上に立つ者としての才が秀でているのだろう。
ここに残った人々にだって色々な人生があるだろう。
元より戦う力を持ち合わせない者…恐怖で敵対できない者…色々な人がいてそれは仕方ないんだ。
ただ、俺は…。
他の人より少しだけ秀でた力を得た…元々一人のどこにでもいる普通の男だ。
俺だって初めはどう戦っていいのか分からなかった、だけど、出会った仲間達、関わる人達… そんな皆の笑顔が俺は大好きだ。
だからそんな皆の笑顔が守りたい。
だから俺は。
「ジオウ!?テンテン!?皆!!いこうぜ!!??奴の邪気は………北の地だ!!!!?!?」
その頃。
チェンウォン北の大地では。
◇
バチバチ!!ガゴーーーーーンっという激しい爆音を立て建物が突然崩れ去る!!!!!
激しい力が大地を切り裂き地割れし破壊されていく街並み。
人々は恐るべき力により街並み、人々。
沢山の者の断末魔の叫び声がこの北の街を支配していた。
『ククク………クク。』
◇
◇
◇
お読み下さりありがとうございました。