チェンウォン世界編シーン37
俺は、サキノを守る為。
目の前の怪物窮奇を倒す為。
その力を解放する。
『竜人転移。。。』
次の瞬間…全身に強烈な痛みと気を失いそうになるほどの脳内を誰かに奪われそうな恐怖感が俺を襲う。
「んぐっ!?がああっ!?」
「クロノさん!?」
「クロノ!?」
誰かが俺の名前を呼ぶ。
俺は気が狂いそうになりながらも必死に耐える。
すると窮奇は俺の異変に気づき口を開く。
『おいおい…なんだあ!?戦う前に死にそうじゃねえか。』
「う……ぐ。」
『ククク……ほら見てみろよ……皆苦労してるねえ。』
見ると水の虎の猛攻に厳しい戦いを強いられる面々。
しかも降りしきる雨の至る所から湧いて出るように増えていく水の虎。
「うわあああっ!?」
「これは!?強敵な水の虎…水から作られたその身体……倒しても倒しても復活してくる!?」
『ククク……どうだどうだ!?お前ら人間とは一味違う本物の邪神の力。貴様らが何人束になろうとも敵いわせんわーーーー!?』
とんでもない窮奇の攻撃に皆々が焦り出す。
そして。
「ぐあああああああああああーーーっ!?」
自らの身体も何と液体化してしまう窮奇。
「なにっ!?」
「奴が自ら液体化できてしまうのか!?」
『ククク…当たり前だろうが…奴…同士である渾沌はお前らに油断をして消されてしまったがこの俺様はそうはいかん…人間などに油断しなめて怠慢になど俺様はならん……我が力をかける…がしかし…我々がなぜここに集まってきてるか分かるか!?』
そう問われると俺達にもその疑問が改めて湧いてくる。
『ふん、いいか、我々は長い時、封じられてきた…この神であった我々がだ…そしてはるか昔…我々を封じた者がいたのだ…。』
◇
我々は元々何かの負の感情から生まれ落ち、そして長い時をかけこの地の神の一柱となった。
我々四柱はこのチェンウォンの地にて生まれ落ち。
そしてこの地の人々を恐怖で支配したのだ。
人々の苦しみは我らにとって史上の興奮と快楽をもたらす。
やがて人々の中には我々に屈し我々を邪神様と崇める者達も現れる。
しかし大概はその苦しみにやがて我らを許されざる者として対抗する力も。
◇
そんな時…この地には仙人という者達が存在した。
そいつらは人間をみかねていつしか人間共に力を貸しはじめる。
そして一人の男が現れる。
男は一体の仙人と手を組んだ。
そう…いわゆる、マジェストと呼ばれる者だ。
やがて、そいつは我々にその刃を振るいその力で我々に戦いを挑んで来るようになった。
我々四柱は虚をつかれた。
まさか我々に戦いを挑んでくる人間など現れる訳がないと踏んでいた我々。
そんな時。
我々のリーダーでもあった饕餮様が突然現れたそいつに封じられてしまった。
その衝撃に我々は焦り出してしまった。
そのまま渾沌も檮杌もそしてこの俺様、窮奇もいつしかそいつの力によって、地中深く封じられてしまったのだ。
それから数百年という時がたった。
だが我々はあの時の恨みを忘れた事はない。
◇
『うううぅぅう…あれは悔しくて悔しくて…今でも憎悪にかられてしまう。』
窮奇のその声。
「だから!?だからって皆を傷つけるの!?」
それはサキノの言葉だった。
『ん!?なんだあ!?』
「自分達の思うようにならないからって、だからって人を傷つけていいってならないの!?」
『ははあ!?お前…犬のくせに…何言ってるんだ!?……ん!?』
そこには犬の獣人と化したサキノ。
そして俺は。
全身の身体は震えが止まっていた。
俺は立ち上がりサキノの前に出る。
目の前にはあの恐るべき窮奇という化け物。
「クロノ!?」
「ああ……恐い思いさせたなサキノ。」
「お兄ちゃん………。」
俺はサキノに叫ぶ。
「サキノーーー!もう離さねーーーーー!?」
「お兄ちゃん!?ううん!クロノーーー!?」
俺達は抱きしめあう。
そして俺達は……その時。
ドウーーーーーーーーーーーーッと力が溢れだしてくる。
そしてそこには……サキノを抱きしめ立つ。
竜人と化した俺の姿。
その時……窮奇は身震いを感じる。
『な…なんだ…………貴様らも……化け物……じゃねえかーーーーーーーーーーっ!?』
窮奇のその言葉。
会場内が静まり返る。
そして俺は言葉にする。
「関係ないな……こいつ…サキノだって俺にとっては素敵な一人の女性だ……そして俺もどうやらドラゴンの血を引いてるらしい…。」
『おらみろ!?ドラゴンだと!?そんなお前など俺様より化け物だろ!?』
「俺は……。」
俺の背中からはドラゴンの翼が生えている。
そして激しい力が溢れだしている。
すると。
俺を見つめるサキノ。
「クロノ…今のクロノも大好きなサキノのクロノだよ。」
ニコリと笑顔をくれたサキノ。
俺は微笑みサキノを抱きしめる。
そして。
俺は手に握る柄には巨大な真っ赤に燃え上がる刀身が。
『雷武……いくぜ。』
『おう!!』
俺は窮奇目掛け飛び上がる。
バサリと宙に舞い上がる俺の身体。
『きっさまーーーーーーーーーーーー!?』
「うるせえよ。」
構え振り上げる刀。
刀身はうねりを上げる爆炎の炎と化す。
『はああああああーーーーーーーーーっ!?』
「な!?こんな!?」
『武神流………『退炎竜』』
『ギャーーーーーーーーーーーーーーッ!?』
窮奇の身体は俺の刀…そう…雷武によって斬り裂かれそして消えていったんだ。
◇
◇
◇
お読み下さりありがとうございました。