チェンウォン世界編シーン31
俺達の勝利宣言がなされた時。
倒れた敵の一人に、なにかの異変を俺は感じた。
「なんだこの邪気は!?」
「うん…お兄ちゃん……これ…なにか…怖い。」
サキノが再び俺の傍に来て手を握ってくる。
すると…アナウンサーの声。
「では救護班の方!!倒れた選手をお願いします。」
そして救護班の二名は俺達の対戦相手に近づいていく。
担架を備え、そして男に触れようとしたその時。
どおおおおーーーーーーーーーっと男の身体から黙々と立ち上がる黒煙。
そして。
『フフ…フハハハハっ!!!!!』
不気味な声が会場内に鳴り響く。
『俺様は、この世界を混乱の世界へと変える者……さあ…力なきもの達よ……平伏せるがいい。』
その声に会場内がザワつく。
「くっ!?渾沌ーーーーーーーー!!???」
一人の男が叫ぶ。
一同の視線はその男に向けられる。
「ハオユー!!??」
「なにっ!?」
するとそこにはボロボロの状態ではあはあと肩で息をしながら叫ぶハオユーが立ち尽くしていたんだ。
リーファはハオユーを見るも口を開く。
「ハオユー……その傷はもしかして………」
「まだだ……ロンレイ様はまだ無事ではある。だが…この怪物渾沌は…ずっと溜め込んでいたんだろう…洞窟内でその力を溢れさせて……ロンレイ様は僕とヤシュアを庇って傷をおわれた…ロンレイ様は今…ヤシュアの治療を受けている、だけどこの怪物を仕留める為に僕はここまでこいつを追ってきたんだ…ここで仕留める。」
「なら……私も。」
ハオユーとリーファは怪物渾沌の前に立ち尽くしている。
ハオユーはその手にヌンチャクを構える。
そしてリーファは扇子を。
「ハーーーーーーーっ…『仙神』……『カルスマンティス』」
「魔神…改め…仙神……蝶羽」
ハオユーの魔神は巨大なカマキリをモチーフに…そしてリーファの魔神は美しい蝶の魔神だ。
二人の魔神は羽根を広げると。
渾沌に突撃していく。
驚きの表情を浮かべる渾沌。
巨大化した犬をモチーフにしているその四足歩行の魔獣。
その恐ろしさは誰もが恐れおののくであろう。
『ククク…我……腹減った……そろそろ人が食いたい。』
「なにっ!?」
「そうはさせないわ!!」
巨大な犬はヨダレを垂らしながら会場内を見回している。
「おい!!渾沌……僕はさっきは油断してたんだ…ここからが僕の本気だ。」
ハオユーはそう言い放つとヌンチャクを回し始める。
ヒュンヒュンとなる風切り音。
それはスピードを増すことにより更にその威力が増していく。
「はああああーーーーーーーーーーーっ!?」
だっと地を蹴り飛び出すハオユー。
同時にカルスマンティスはその鎌をふるい渾沌の間合いに飛び込んでいく。
激しい鎌の攻撃……その巨体の動きが以外にも早かったんだ。
「なにっ!?その巨体でそこまで早いのか!?」
すると上空から声が聞こえてくる。
「なら!!これならどう!?」
そう叫び渾沌を上空から狙うリーファの魔神である蝶羽
そしてとりいだしたのは彼女の扇子である。
「上空からならきっと逃げられないわ!?」
地上からはハオユーのカルスマンティスが!?
そして上空からはリーファの蝶羽が渾沌を狙う。
そんな二人の目まぐるしい攻撃は渾沌は徐々に鬱陶しくなったのかもしれない。
「なんだ!?これはこの渾沌をバカにしてる攻撃なのか!?」
そういうと渾沌は不敵に笑う。
「フン……まあいい…………。」
すると渾沌は力を貯め始める。
ゴゴゴと聞こえてくる地面からの地鳴り。
会場内の人々は動けずにいた事を悔しい気持ちを口にし始める。
「くそっ!?動けなかったけど、ここから逃げなければ巻き込まれてしまう!!???」
「ええ!!そうね、今のうちに逃げなきゃ。」
そして、我先にと逃げ出し始める会場内の人々。
すると。
渾沌はその巨大な口を開き言葉にする。
「ふう…どこに行くつもりだ!?」
ギロリとその目は逃げ出そうとしている人々へと向けられている。
「どこって逃げ……」
男が、そう返答した時。
そしてクチャっと聞こえた男。
一緒に逃げようと考え立ち上がっていた女性に目を向けるその男。
するとそこには、上半身を食われたまま立っていた女性の下半身だけが取り残されていた。
「ひいいいいーーーーーーーーーーっ!?」
そして渾沌は口から血を滴らせ言葉にする。
「久しい人間の肉……うまいな……さて。」
ゴゴゴと地鳴りとグラグラと地が震え出す。
「くっ!?なんだ!?」
すると渾沌の口から…声が漏れた。
『暴崙暴崙』
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