チェンウォン世界編シーン26
俺たちは敵チームを倒した。
こうして一回戦の全試合は終わる。
そして勝ち残ったのは四チーム。
俺達のチーム。カルマ達のチーム。
そして対戦相手となる二チームだ。
「お兄ちゃん!!」
「お兄さん!?」
「おう!二人ともありがとな!?」
「「いいよ!お疲れ様!」」
二人は俺の元でニコニコと笑顔を向けてくれる。
「お兄ちゃん本当に強くて…凄いよ。」
「本当に!お兄さんに僕またドキドキしちゃったよ。」
俺にそんな言葉を言ってくれる二人。
すると…聞き覚えのない誰かの声がする。
「ククク……」
俺達がそちらを振り返る。
「誰だ。」
「おやおや…君がクロノ君だね。」
そう声をかけてきたのは怪しげな一人の老人。
だが、その衣装に違和感を覚える俺。
いかにも宗教家とでもいえるような出で立ちの男。
「あんたは…。」
「貴方は…もしや……」
そんな言葉を発し会話に入ってきたのはなんとリーファだった。
「リーファ?このおっさんの事、知ってるのか!?」
「はい。」
リーファは頷きこたえ…話を続ける。
「この老人は…数ヶ月前に、この地にとある宗教家として現れた男…その名は『鉄星』チェンウォンにも徐々に信者を増やしつつある宗教家です。」
「なんだと。」
「ククク……ワシの認知度もここまでだったとはの…いかにもお嬢さんの言う通り…ワシは宗教家『鉄星』…教団『悪翔』の教祖である。」
見た目一見どこにでも居そうなその老人。
だが並々ならぬオーラを感じる。
「なにっ!?って事は…カルマ、リオ達に何かをして仲間に引き入れた犯人はあんたなのか?」
「ククク……いや……犯人という言い方はいかにも無粋というものであろうよ?」
「何を!?」
「クロノさん待って!!」
「くっ!?」
俺の行動に割って入ってくるリーファ。
明らかにおかしいこの男、そしてカルマやリオだって。
俺はモヤモヤしながらもぐっと堪える。
気がつくといつの間にか俺達の前に姿を見せていたカルマとリオの姿。
二人は鉄星への攻撃を止める為だろうか…鉄星を守るように身構えていたんだ。
すると鉄星は片手を上げると二人も武器を納める。
「よしよし…お前達二人はこんなにもワシの為にその忠義をつくそうとしてくれる…良いぞ…後で沢山褒美をやらんとな。」
「ありがとうございます。鉄星様。」
「鉄星様に危害を加える者は誰であろうと私は許しません。」
カルマとリオは演技とは思えない迫力で俺を見ている。
どうして…こうなってしまったのかは分からない。
「よし!!ではクロノチームよ…ワシらと当たるのは決勝の時じゃ…その前に負けるでないぞ。おお!そうじゃ…今ならお主達もワシらの教団に入り我が神を信仰するのならば仲間に迎えてもよいぞ?気が向いたらくるがよい、あーっはっはっは!」
大笑いしつつ…立ち去る鉄星、寄り添うようについて行く二人。
俺達はその後ろ姿をこの時はまだ…見ている事しか出来なかったんだ。
◇
◇
◇
「確かに最近…このチェンウォンに突如現れた『邪教団、悪翔』の話は聞いていた…だが君達の仲間達までがその傘下になっていたとは。」
こう言い出したのはジオウだった。
「そいつは正しくはないぜ!?カルマだってリオだって、イシメールもエンポリオだっているんだぜ!?絶対何かあったはずだ。」
俺はそういうも四人の事を知らないジオウとテンテンには話は直ぐには納得して貰えないだろう。
だけどどうしたら四人を救出できるのか。
こんな時、なんとかなりますよ!そう明るく声をかけてくれるだろうリオ。
クロノ!一緒に乗り越えよう!そう言ってくれる気がするカルマ。
大丈夫!僕のロボットは最強ですよ!
僕の医学で治療しましょう!
エンポリオもそしてイシメールもここにいてくれたら力を貸してくれたかも知れないな。
俺は四人の大切さもここに来てまた痛感する。
すると。
ぎゅーっとしがみついてきたのはサキノだった。
「お兄ちゃん…サキノじゃだめ?」
「サキノ……。」
「私…ずーっとお兄ちゃんにあまえてきてさ、でもサキノまだ小さいからって思われて…サキノ…お兄ちゃんにふさわしい女の子になるから!!」
「サキノ……」
「だから…サキノをもっと見てよ…お兄ちゃん…ううん……クロノ…私がクロノを支えるから。」
サキノは目を潤ませ俺を見つめる…その目には涙が。
俺の心に温かな何かが沸き起こってくる。
そうだ。
俺には今大切なサキノがいるんだ。
俺はサキノの肩を抱く。そしてき引き寄せ抱きしめる。
サキノは俺にこたえ…そっと腰にその手をまわしてくる。
「勝とうぜサキノ。」
「うん!!」
満面の笑みでこたえるサキノはとても愛しかった。
さあ、俺は一人じゃない。
今いるメンバーで勝ち…そして仲間達を救ってやる。
俺達はそう決意を新たに次の戦いへと進むんだ。
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