ヨーロディア世界編シーン88
ヨーロディアからユーロ様が消えてから。
ユーロ…そして魔神タイガが世界から消えた。
その力は、どこへいったのだろうか。
それは…きっと、この地ヨーロディアを守ったかのように。
◇
◇
◇
あの戦いから…数週間後………。
「あ!アンナ…お疲れ様!どうでしたか?」
「マリアさん!お疲れ様です!先日訪ねたイタリーノの『病』は徐々に治まりつつあります!」
「本当に?良かった!」
「はい!本当に凄いですね!正に奇跡の様な……。」
「ええ…もしかしたら、あの時…本当にユーロ様が……」
「ええ…あの力で病を止めたのかも知れませんね…本当に…最後まで偉大な方でしたね。」
アンナの目にも涙が浮かんでいるような…。
「あれ!アンナ!何だか騒がしい声…聞こえてこない?」
私は涙を堪えつつ…とある足音に気がつき、そう告げた。
◇
ここは、マジェスト協会ヨーロディア支部。
あの一件の後…ユーロ様不在のここを私は仕切っていた。
やるべき事は、まだ残っているの。
そう…病がどこまで広がり…蔓延したのか…それと、この病が治まらないかの研究をする為…。
すると…ユーロ様の力なのか…どの患者も不思議な事に病の進行が止まったというのだ。
このヨーロディアにも医療機関は揃ってはいる。
だが、あまりにも急激に蔓延した為に、対処がどうしても遅れてしまう。
そこへ隣国アフリエイトのケニージアより薬の速急な開発援助により、病の改善へと繋がる薬を手に入れる事が出来たのである。
それにより、ヨーロディアに蔓延した病は回復を早めたのであった。
そして…残った病調査に慌ただしく働く私達。
「ふぅ…まだまだ忙しいけど頑張らなくちゃね。」
私が一息ついていると。
…そこに聞こえてきたのは幼い二人の子供の声。
「うわぁーーい!レオンお兄ちゃん!?こっちー!」
「おい!ソフィア!まてよ!?」
「あらあら!二人共!走らないで!」
「うふふ…でも…ここも賑やかになりましたね?」
アンナのその声に私も思わず微笑んでしまう。
「そうね…そう言えば…」
私が、そう言葉にしかけたその時。
「すみません!今帰りました!」
「ふぅ…荷物持ってきすぎたーーー!」
私達の仲間である二人が、事務所の扉を開け姿を現す。
「エンポリオ君!カルマさん!おかえり!」
「あ!パパ!ママ!!おかえりーー!!」
私の声に続いたのは、ソフィアちゃんの二人を呼ぶ声だった。
ソフィアちゃんは、二人の元へ駆け寄る。
すると…エンポリオ君の元へレオン君が駆け寄りジーッと、その顔を見ている。
「あはは!レオン君!これ…だろ?」
そう言ってエンポリオ君は、何かを渡す。
それは玩具の様な何か。
「エンポリオ君?それは?」
「これはヨーヨーって玩具を魔神具に似かよわせたレオン君用の魔神具…いつかそれでレオン君は夢を叶える為の物です!」
エンポリオ君がそう話すと、キラキラと目を輝かせるレオン君。
「あ、ありがとう!パ…パ。」
顔を真っ赤にし…そう声にしたレオン君は、本当に可愛く見えた。
すると、カルマさんに甘えながらそれを見ていたソフィアちゃんが口を開く。
「あー!ずるいーー!ソフィアにもーー!」
わちゃわちゃした、その光景はとても温かく感じる。
「ねぇ…二人共可愛いし…それにエンポリオ君とカルマさんって本当に仲のいい夫婦みたいね!」
アンナの言葉に真っ赤になる二人。
でも…これが幸せなのかもって、この時私はそう感じたの。
「あ!?そう言えばサキノちゃんは??」
カルマさんのその声に私は。
「様子…見に行って見ましょうか。」
そして…サキノちゃんの眠る寝室へ様子を見に伺う。
すると、ドアを開けようとした私達の耳に聞こえてきたその声。
私は、ドアをガチャりと開ける。
そこに立っていたのは。
◇
「よう!マリアさん!?」
「あ!クロノ様っ!?それはもういらないでしょ?」
「なんでだよ!?何かの時に使えるだろーが!?」
「あ…はは……ここでは痴話喧嘩…なの?」
私は思わず、そう呟いてしまう。
「クロノ君?やっぱり行くのね?」
「ああ!ずっとここが落ち着くまで本当は手伝ってやりたいけどさ?」
「そうね…私達マシェスト協会からすれば貴方達がいてくれると本当に助かるのだけれど。」
「ほら…見てくれよ……マリアさん。」
私は、クロノ君の声に…眠ったままのサキノちゃんの顔を見る。
「可愛いだろ?ひょっこり起きるんじゃね?って今か今かって見ててしまうんだ。」
そういうクロノ君の眼は何か…覚悟を決めた眼をしていたの。
「俺と…リオは…サキノを連れて…もう行くよ!」
「えっ!?もう?行くの?」
「ああ!俺は…早くこいつの笑顔が見たい…それが理由だよ。」
「クロノ君。」
「私も…もちろんお供するんです!クロノ様は私がいないと戦闘以外はまるでダメなので!」
「お前!?リオ!?」
「なんですかーー??」
するとその時。
私達の後ろから入ってきたのは、カルマさんとエンポリオ君だった。
「クロノ!さ!サキノちゃんを目覚めさせる為に!もちろん私達もいくわ!」
「そうです!ここからは僕も着いていきますね!」
「カルマ!エンポリオまで??大丈夫なのか?」
「もちろん!サキノちゃんは可愛い妹だよ!当たり前じゃない!私も親を探すのは後回し!今はサキノちゃん最優先よ!それに各地まわって足取りも掴めるかも知れないし!」
「ああ!そうだな?カルマの両親も絶対見つけような!?」
「うん!」
すると…エンポリオ君も口を開く。
「クロノ君…そして、マリアさんも聞いて欲しい…僕も幼い時両親を失った…カルマさんの話も聞いたけど…カルマさんには僕みたいに後悔して欲しくないし僕も彼女の両親を探す旅に協力する事にしたんだ。」
「おお!分かったぜ!エンポリオ助かる!よろしくな!」
「はい!クロノ君!よろしく!それに移動には僕のマシンも必要でしょ?」
「まあ確かに…皆魔神に乗って行けるけど俺の雷武は気まぐれだからな!俺だけ徒歩は…きつい…。」
「ぷ!ぷぷぷ…そうねぇ!クロノ君と雷武君って仲がいいのか悪いのか分からないものね!」
クロノ君の心からの声に私は思わず笑ってしまっていたの。
「うわぁ!ひでぇなマリアさん!?」
「あはは!ごめんごめん!」
皆で笑い合うひととき。
「あ!そう言えばあの子達…二人の事なんですけど…。」
エンポリオ君はやはり…あの二人の事が気になっているみたいだ。
すると…話を聞いていたカルマちゃんが二人を呼んだの…そして語りかける。
「ねぇ!?レオン君!?ソフィアちゃん!?」
「ママぁなぁにぃ??」
「なんだよ?」
二人はアンナに連れられ入ってきていたの。
「さ!二人共!これからパパとママも大事な用事を済ませに行くの!ご挨拶して。」
アンナに事の話を聞かされたのだろう…二人は口を開く。
「エ…エンポリオ…パパ…パパが戻ってきた時には僕も強くなっているからさ…だから…気をつけて…行ってらっしゃい。」
そう言ったレオンの目には…うっすら涙が見えた。
「ああ…行ってくるよ…必ず戻るから。」
エンポリオ君はレオン君の頭を撫でる。
すると…ソフィアちゃんもエンポリオ君にしがみつく。
頭を撫でるエンポリオ君。
そしてニコりと微笑むと今度はカルマちゃんの足にしがみつくソフィアちゃん。
「ソフィアちゃん…いい子にして待っててね…」
「カルマ、ママ!」
涙を堪えながら笑みを浮かべると、しゃがみ込んだカルマちゃんに抱きつき泣いたソフィアちゃん。
そして二人は、しばしの別れの前に絆を確かめあったの。
◇
「じゃあ…すみません!マリアさん!二人をよろしくお願いします!」
「絶対…戻ります!それまでよろしくお願いします!」
カルマちゃん、そしてエンポリオ君は私に二人を託してくる。
私は…口を開く。
「エンポリオ君…カルマさん…そうね…分かったわ!二人の事は私とアンナに任せておいて!そして四人とも…私からもお願いします!必ず…サキノちゃんを。」
「皆さん!私達に任せてください!そして必ずサキノちゃんを!!」
そう…あんなに仲の良かったアンナも本当は一緒に行きたかった事だろう。
でも彼女は彼らにそれを託したのだ。
皆に声をかけた時のアンナの目からは涙が溢れていたから。
◇
こうして皆がエンポリオ君の作った飛空挺に乗り込む。
そして…ゆっくりと空へと飛び上がっていく飛空挺。
私は空を見上げると願う。
『ユーロ様…聞こえてますか?彼らならきっとこの世界を。』
『『救ってくれる』』
えっ??
ユーロと声が重なった気がした私はそっと。
微笑んだ。
◇
◇
◇
ゴーーーーーッというジェットエンジン音。
これは更にエンポリオが修理、そして快適に作り上げられていた『魔神ケンタウロス改』。
これで俺達は次なる大地…獣人の住む国『アフリエイト』を目指す。
「「出発ーーーーーーーっ!!??」」
◇
◇
◇
第3章Fin
ここまでお読みくださりありがとうございました!
次は登場人物紹介をはさみまして!200話より第四章に入ります!